「ナイツ&マジック 1」感想 | self-complacency

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ライトノベルの感想を書いてました。

ナイツ&マジック 1
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極度の「メカオタク」だった一人の日本人が、異世界で『エルネスティ・エチェバルリア(エル)』として転生した。その生まれ変わった世界に存在する巨大な人型兵器「幻晶騎士」と出会ったエル。彼は狂喜乱舞しながら、その操縦者となるべく行動を開始する。この世界での幼馴染を巻き込みつつ、メカオタクとして思う存分本物のロボットを操る! 小説投稿サイト「小説家になろう」で大人気のロボットファンタジーがついに書籍化。

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プログラマーとして働く28歳の青年、倉田翼は重度のメカオタクだ。彼は大きな案件を一つ片付けた後、給料日を迎え、すっかり習慣となったプラモデルの大量購入をしに店へと向かう。買い物を終えた帰り道、ホクホク気分で自宅に向かう翼に突如、自動車が迫る。そのままぶつかってきた車に撥ねられ、翼は命を落としてしまう。
目覚めるとそこには見た事もない世界が広がっていた。翼は前世の記憶を保持したまま転生し、エルネスティ・エチェバリルアとして、新たな人生をスタートさせたのだった。

全高約10メートルの搭乗型ロボットにしてこの世界で最大の武力兵器である幻晶騎士(シルエットナイト)
その力で、フレメヴィーラ王国を初めとした国や街を、襲いくる魔獣から守り、平穏をもたらす存在として皆に崇められている。メカオタクの彼がこの存在を知って何を考えるか、想像に難くない。

3歳から言葉と知識を吸収し始め、魔法の扱いにも徐々に詳しくなってゆくエルネスティ。
6歳にもなると身体強化の魔法を使えるようになり、魔力と体力を同時に鍛えるという荒技をも見事にこなしてしまう。
その仕組みが似ていることもあり、前世で培ったプログラミング能力が、この世界での魔法術式の構築に多いに役立つこととなる。その結果、エルネスティは常人にはとても組み上げることの出来ない高度な術式を、魔法を扱えるようになる。
エルはライヒアラ騎操士学園に入学。以前から付き合いのあったキッド、アディら友人達と共に勉学に励みつつ、特訓を行う日々を送っていく。

魔法や幻晶騎士に関する専門用語が多くて慣れるまでは読むのが大変だった。あとは国や砦、街道等、位置関係が言葉だけだといまいち分からないから、そこら辺は地図とかあると助かるかなーって。これに関しては僕の理解力がアレなせいかもしれないけど……
強いて言うとしたらマイナスだと思うのはこの二点だけ。内容に関しては評判通り、めちゃくちゃ面白かった…!
転生からのいわゆる俺TUEEE的なやつなんだけど、主人公の努力と目覚ましい成長っぷりが見ていて楽しい。目的を達成するために最速の手段、最短距離を選択し突き進む。熱意があるからこそどんな勉強も訓練も辛くない、エルにとってはむしろ楽しい趣味に等しい。好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったものだよなあ。
「幻晶騎士が手に入らないのなら自ら作れば良いのでは?」という結論に辿り着くところがもうすごい。鍛治師学科の概論の授業を受けたいがために、その圧倒的な力を見せつけ騎操士学科の魔法に関する授業の免除を認めさせる。こう書くと問題児というか、無茶苦茶だなーほんと(笑)
初っ端からいきなり強い、みたいなのではなく、弛まぬ努力の先に手に入れた強さな点もエルは好印象。

ヤントゥネン近郊にあるクロケ森に野外演習のために訪れた生徒達。
突如として大量発生した小型魔獣の大群。さらには超大型魔獣・ベヘモスが襲来したことにより、ヤントゥネンに、ライヒアラの生徒達に危機が迫る。

ディートリヒが逃げ出さず、エルにそれを見られていなかったらどうなっていたことか。今回ばかりは彼の薄情で臆病な性格を多めに見てあげたい。
長年の、ともすれば前世からの「ロボットに乗りたい」という夢をひょんな形で叶えたエルネスティ。まさしく狂喜乱舞、狂気を感じるほどの笑みを浮かべながら、エルはグゥエールに乗りベヘモスの元へ走る。

グゥエールに乗ったエルがたった一人でベヘモスと互角に戦う。無限とも思えるその持久力に騎士団の面々は絶望しかけるが、エルは諦めない。一進一退の攻防は読んでいて手に汗握る展開でした。
無駄のないオリジナルなやり方で幻晶騎士を動かすことに成功したエル。二級品のグゥエールであの強さなら、さらに性能の良い幻晶騎士に乗ったらどうなってしまうのか、考えただけで末恐ろしい。

「幻晶騎士に乗る」という夢は叶ったものの、エルの最終目標は自分の幻晶騎士を手に入れること。本当に自ら作り出してしまうのか、はたまた他人から譲り受ける形になるのか、そこら辺も注目していきたい。
まあそれよりも、国王に危険人物になりうる逸材として目を付けられてしまったのが問題か。面倒事に巻き込まれなければいいけど。