1. 天皇の在り方と皇位継承
日本国憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と規定しています。一般的にこの規定は、神格的天皇が象徴天皇に変わったと解釈されがちですが、私は別の見解を持っています。
「天皇の在り方は、日本国憲法の前後で変化していない。それどころか日本建国以来、天皇の在り方は不変であり、いつの時代も、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であった。」
2. 変わらぬ天皇の象徴的地位
天皇は建国以来、時の権力者が日本を統治する正統性を付与する象徴的存在であり続けました。天皇は権威を持ちつつも権力は行使せず、その役割は時代ごとの政権の形(律令制、封建制、近代立憲制、民主制)にかかわらず一貫しています。現在も、民主的に選ばれた内閣総理大臣を任命することで正統性を与えています。
この象徴的地位は、平安時代の公家政権、鎌倉以降の武家政権、明治以降の立憲政治においても一貫して維持され、大日本帝国憲法下でも実質的に内閣が統治を担い、天皇は象徴的存在でした。日本国憲法もこの伝統的な位置づけを近代国家の法体系で明確に表現したに過ぎません。
3. 日本は天皇が象徴であるからこそ続いた
日本は建国以来、一貫して国号が変化することなく世界最古の国になりました。これは、天皇が権威だけを持ち権力を持たない日本国および日本国民統合の象徴であり続けたからです。天皇が存在する限り日本は存在し、日本が存在する限り日本国民統合の象徴たる天皇は存在し続けます。
日本だけが、権威を持つ天皇と権力を持つ統治者が分離された構造を保ち続けたのです。これは先人の叡智の結晶です。
4. 未来に向けた提言
このように、天皇の地位は日本の歴史において常に象徴であり続け、その在り方は政治形態の進化に影響されていません。したがって、以下の提言が可能です。
歴史教育の強化:天皇の地位がどのように日本の歴史において象徴的地位を保ち続けたかを教育し、国民がその価値を理解できるようにする。
憲法第1条の再解釈:憲法第1条の「日本国民の総意」を、単なる現代の国民の意思ではなく、日本の歴史的連続性を反映したものとして説明する解釈を広める。
皇位継承の安定的保障:時の権力者が継承に干渉してはなりません。天皇は権威だけを持ち、権力を保持しないことが日本を日本たらしめてきたからです。父系男子継承は、この伝統を守り、権威と権力を分離し続けるための叡智の結晶です。
この継承方法は、1800年にわたり機能してきた正統性の根拠であり、これを変更するには日本の存続をかけた重大な理由が必要です。単なる時代の流行や一時的な感情で変更すべきものではなく、日本国と日本国民統合の在り方そのものをどうするかという問題です。