今日は一件だけ傍聴してきました。
高橋徹裁判官の裁判は今回初めて傍聴しましたが、僕は好きなタイプです。
(鋭い眼光で真剣に証言を聞き、矛盾や上辺の証言に対しては厳しく問い質す)
平成25年(わ)第1459号
罪名: 私電磁的記録不正作出・同供用、不正アクセス禁止法違反
担当: 高橋裁判官
(単独)
時間: 10:00~11:30
■被告人
神奈川大学卒、26歳、家電量販店勤務(長時間残業のブラック企業)、親と同居、一人っ子、前科前歴なし。
色白、オタク系、紺色のスーツ、もやしっこ。
悪人ではないが、女子からはキモいとみられるタイプ。実際に今回犯した内容もかなりキモい。
■事件詳細
大学2年の終わりか3年の始めから、MIYAMO-NET(※)に不正アクセスし、8人の女子学生のパスワードを盗み、ログイン。不正アクセス行為は計100回以上。
※)
MIYAMO-NET(みやもねっと)とは、神奈川大学の横浜・湘南ひらつか・中山(附属中・高等学校)キャンパスにまたがる、神奈川大学総合情報ネットワークの総称
きっかけ
「大学1年のときに観た映画「ダイ・ハード4.0」に感化され、ハッキングしたくなった」
MIYAMO-NETはパスワードリマインダーを何度入力してもエラーにはならない脆弱なシステム。
そこで、
被告人が在籍していた英語研究部の部室にあった仮入部届から、学籍番号を入手。
他には、授業で後方の座席に座り、まわってくる出席表に書かれた学籍番号を暗記。
次に、mixiやツイッターの個人情報(→趣味、出身校、高校時代の部活、好きなアーティスト、好きな花など)からパスワードリマインダーを推測。
「ログイン出来た時には5万円相当の宝くじが当たった気分になった」
「ジグソーパズルを完成させたような達成感があった」
ここから被告人はエスカレートする。
女子学生の履修届けを勝手に変更したり、本人になりすまして他人とメールのやりとりまで行った。
さらに、ログインすると、
住所、電話番号、成績、出身高校、家族の氏名
などの個人情報が全て閲覧できてしまうわけだが、
8名の女子学生のうち1名の自宅まで行き、ドアの鍵穴を写真で撮影。
「ピッキングにも少し興味を持った。これも一種の解析」
証人は父親。
しっかりと弁護士と打ち合わせ(リハーサル)ができているようで淀みない口調。子供に対して厳しい父親ではなく甘やかしている印象を受ける。
被告人も流暢だが態度が他人行儀の心証を受ける。
女子学生がどれだけ気持ち悪い思いをしたか想像できていない、悪いことをしたという罪意識が甘い。女子学生たちは厳罰に処してほしいと、謝罪文を受け取ったのは8名のうち1名のみ。
検察官は1年6ヶ月を求刑。
裁判官は被告人の姿勢に対して厳しい口調。
「かりに会社に知られたら解雇になるよね」
「それは会社の信用を落とすことなるよね」
「それくらいのことをした認識はあるの」
「被害者の調書を読んだというが、あなたの手元に今あるのは問題。さっさと処分しなさい」
高橋裁判官が直接、被告人にビシバシ問いただすので、検察官から証人・被告人への質問は一切ありませんでした。
■判決
大学で不正アクセス 男に有罪判決/横浜地裁
高橋裁判官は、在学中に手に入れた女子学生の個人情報や学生の交流サイトなどを悪用して不正にログインを繰り返した犯行を「強い犯意に基づき執拗(しつよう)」と指摘。「学生に成り済ましてメールを送ったり、履修登録を変更したりもしており、実害や迷惑を与えた」と批判した。一方、大学に謝罪して反省の態度を示しているなどとして、刑の執行を猶予した。
判決によると、会社員は2012年1月から同2月にかけて、在学していた大学が管理する学内ネットワークのパスワードを変更し、女子学生8人が利用する同ネットワークに不正にログインするなどした。