日本には31万人の留学生が学んでおり、そのうち3分の1に相当する12万人が中国人留学生です。新型コロナウイルス感染が続く中、オンライン授業にきりかわったり、雇用情勢が厳しくなる中で、不安な気持ちで生活を送っています。

今回はコロナ禍の中、日本語教育機関で学ぶ中国人留学生の生活がどのようであったか、また、卒業後の就職計画の変化について取材し紹介します。

 

(みだし) オンライン授業で引きこもり生活に

 李 燕さん(23)は中国の西安出身で、上海の大学を卒業した後、昨年7月に来日した。現在、東京・上野の日本語教育機関で来年春の大学院入試に向けて勉強している。学校では進学コースに入っており、クラスメートは10数人で、ほとんどが中国人で、大学卒業者だ。

李さんは大学では日本語を専攻したが、3年生のとき選択科目の日本語ビジネスコースを受講したことをきっかけに、日本企業の経営手法やマーケティングに興味をもち、日本の大学院に留学して経営学を学びたいと考えるようになった。

 

 新型コロナウイルスが感染拡大する中で、2月からは対面授業とオンライン授業が平行して行われるようになり、4月に「緊急事態宣言」が発令されると、全面的にオンライン授業に移行した。

 

 李さんは埼玉県川口市のアパートに住み、自室でオンライン授業を受けた。「授業を受け、その後、本を読むなどして過ごし、食事の材料を買いに行く以外は引きこもり生活をしていました。人に会うことがなくなり、うつ状態になってしまいました。真夜中になっても眠れない日が何日も続き、ホームシックにもなりました」と話す。

 

「4月初め、母親からメールが来て、『辛かったら帰国してもいいよ』と言ってくれましたが、今、帰国しても後悔するだけと思い、日本に留まることにしました」と振り返る。

 

(みだし)厳しさ増す外国人の採用状況

10月現在、学校の授業は完全に対面授業に戻っており、週5日学校に通っている。教師に進路相談をしたり、スマホのウイーチャットで、中国人の友人や日本人の友だちと連絡を取り情報交換している。

 

コロナが進学や就職計画に及ぼした影響は大きい。来日前は日本の大学院に進学し、修士課程を修了した後は日本で仕事を探すつもりだったが、コロナの影響で志望校の入試方法が変更されたり、外国人研究生に要求される日本語の能力や英語の能力を証明する試験の試験日が延期されたりで不安になっている。

 

さらに日本の雇用情勢が非常に厳しくなっていることに不安を募らせる。「外国人を採用する企業が減り、採用人数が減っています。日本人の雇用は厳しいですが、外国人の就職はもっと厳しいです。外国人観光客が入国制限されているので、外国人の接客などの仕事ありません。有名大学を卒業した先輩ですら就職が見つからないと困っています」と話す。

 

(みだし) 中国はもともと大卒者急増による就職難

このような中で、中国での就職を視野に入れるようになった。中国は基本的にはコロナが収束しており、一部を除いて経済がコロナ前の状態に戻りつつあるからだ。先輩の中にはオンラインで中国企業と就職面接を受ける人もいるという。

李さんは「これまでの多くの中国人留学生が描いていたのは「日本で進学し日本で就職する」ということでした。まだ、はっきり決めてはいませんが、今は一つのルートにこだわるのではなく、例えば、日系企業が集まる広州あたりで仕事を探すなど、選択肢をいろいろ広げていきたいと考えています」と話す。

 

しかし、中国も就職は厳しくなっている。コロナの影響による企業の採用控えもあるが、それ以前に中国では大卒者が急増しており就職難が指摘されていた。2020年の新卒者数は前年比40万人増の874万人で過去最大となっている(中国教育部)。希望する企業に就職できないで一旦中国の大学院に進学して就職の準備をする新卒者も増えている。

留学の増加の背景には中国国内での厳しい就職状況があり、中国人の留学の主目的は就職競争力をつけるためであったのだ。

 

コロナ感染拡大が続く中、留学生の心は揺れ動いている。