僕は自分の未熟さを

後悔してもしきれなかった。

嗚咽するほど泣いた。

そこでやっと気がついた。

 

 

 

 

なぜたったそれだけのことも

許してやれなかったのかと。

 

 

 

 

その時『死』という言葉の

本当の意味を理解した。

 

 

 

 

 

 

僕は12年間ものあいだ、

父のことをひどく軽蔑していた。

 

 

 

 

僕が小学4年の頃、

母方の祖父母の家で

新年会を行なった際

 

 

 

 

父は酒に酔った勢いで

親戚全員の前で大粗相をした。

 

 

 

 

そして次の日の朝、

家に帰る車の中で、

父と母は夫婦喧嘩をした。

 

 

 

 

父は二日酔いの状態で

母に対してひどい言葉をはき、

そして母を号泣させた。

 

 

 

 

その後1ヶ月ほど、

父と母は険悪な雰囲気になった。

 

 

 

 

だが、父と母の関係は

時間が経つにつれて戻り、

たくさん家族で外食に行ったし、

たくさん旅行にも行った。

 

 

 

 

でも当時小学4年だった僕にとって

あの日の朝の父のことは

最強最悪の敵のように感じ、

今に至るまでも忘れられなかった。

 

 

 

父は毎朝ちゃんと仕事に

休まずに行ってくれていた。

40度の風邪を引こうとも

絶対に休まなかった。

 

 

 

 

でも酒好きなところだけは

何年経っても変わらず、

長年に渡る酒が原因で、

緊急搬送されたこともあった。

 

 

 

 

そんな父が

酒を飲んでいる姿を見ると

あの日の嫌な光景が頭の中で蘇り、

 

 

 

 

そのことが許せなかった僕は

これまでずっと父を軽蔑していた。

笑顔で話しかけてくれる父に対して

本当に冷たい言動をとり続けた。

 

 

 

 

たった1つのことだけで、

本当にたったそれだけのことで。

 

 

 

 

父の酒癖は僕の冷たい言動のせい

だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2019年10月4日に

母からの電話で僕は告げられた。