やめてください冬場の試合~スポーツ記者目線から@サカマガ1月18日号№1326p.56 | Field of Dreams

やめてください冬場の試合~スポーツ記者目線から@サカマガ1月18日号№1326p.56

昨年12月4日のJリーグ最終節が開催されたNDスタジアムでの山形vs鹿島戦と、宮城スタジアムでの仙台vs川崎戦。悪天候により東北新幹線が運転見合わせ、アウェイ参戦に向かった鹿島サポーターと川崎サポーターが影響を受けました。私の知り合いのご家族も山形新幹線で7時間かかり、天童のNDスタジアムに到着したのは試合終了後だったとのことです。

 同日欧州にも大寒波襲来、8日パリで積雪11㎝と23年ぶりの大雪に見舞われ、エッフェル塔が閉鎖したとのこと。

スポーツジャーナリスト木村かや子氏は東京生まれの湘南育ちで、現在はフランスのアルル在住。94年から欧州サッカーの取材を精力的にされています。

以下サッカーマガジン1月18日号(№1326)に掲載された氏の全文を記載します。(太字の部分は私が気になったところです)

『05年、雪野原のサンテチエンヌでリーグ1デビューを果たした中田浩二(当時マルセイユ)は、雪ですべってキックを空振り。中止を主張したGKバルデスは、靴を忘れたと嘘をつき、雪上プレーを拒絶した。08年初冬、松井大輔がサンテチエンヌでベンチ続きとなっていたとき、「ずっとベンチとは…」とやるせない心境を聞こうとすると、「ベンチは…寒いビックリマーク」と彼は答えた。確かに選手にとって、冬のベンチには、夏場のベンチを超える辛さがある』

『 雪の季節がやってきた。日本ではかなり前からヨーロッパのような秋春制シーズンが検討されていると聞くし、凍てつくロシアまで、強豪がチャンピオンズリーグなどに良い状態で臨めるよう、秋春制への移行を決めた。しかし、フランスで真っ白なピッチを見続けていると、反対に真冬には試合をやらないでくれ、と言いたくなる。スタジアムに出向く者の身になってほしいというものだ。

 ドイツのように熱いスープを振舞う心遣いがあればまだよいが、フランス・クラブでプレスに支給されるのは、水、ソフトドリンク、ワイン。確かに酒をあおれば一時的には熱くはなるだろう。甘い防寒武装で来てしまった、ある日本人記者が、寒さをしのぐためワインを記者席に持ち込み、寒くなったら飲み、また寒くなったら飲みで、ボトルを1本空けたという逸話もある。

 しかし、あいにく私は下戸だ。マルセイユ、ボルドーなど、熱いコーヒーを出すクラブには常に敬意を払っているが、寒い中、コーヒーをガブ飲みすると、トイレが近くなるという難点もある。さらに雪が降ると、電車やトラムが止まったり、凍った雪の上で転んだりと、スタジアムへの道が茨の道に。雪で滑って尾てい骨を打つこと1回、凍った階段で捻挫すること1回と、最近のケガはすべて観戦がらみである。その危険は一般ファンにとっても選手にとっても同じだ。

 個人的には、灼熱の太陽の下、ビール片手に観戦したほうがよっぽど楽しいと思うが、バカンス命のフランスでは、開幕直後の8月は概して観客動員率もテレビの視聴率も悪いらしい。反対に、氷点下の冬には出かける意欲も萎え、家でぬくぬくとテレビ観戦したい気分になろうというものだ。比較的温暖で、ファンが熱狂的なマルセイユでは、真夏も真冬も観客数は5万人強とほとんど差はないのだが、放映局が有料テレビであるため、大多数が比較的貧乏なマルセイユ・ファンのケースには、その熱心さに加え、①有料テレビに金を払いたくない、②夏の休暇に出かける金がない、など別の理由もからんでいるのではと推測する。

 フランスで対応策として挙がったのは、1月を休みにするという案だ。しかし、今年のように12月が寒い場合もあれば、2月が寒いこともある。あれこれ思案すると、いっそのことみんなでそろって春秋制にするほうが、よっぽど理にかなっているというところに帰着するのだが、サマー・バカンス命のヨーロッパで、選手やクラブ・スタッフが夏の休暇なしにぶっ続けで働くのは、決して起こり得ないことであろう。

 そう考えると、ヨーロッパに比べれば、そう寒くもない日本の春秋制は、勤勉さの表れでもある気がする。ワールドカップやEUROが夏の祭典なだけに、シーズンを一時中断して国際大会をやるというのは厄介だが、「長いシーズンのあとトップ選手が疲労し、ベストの状態で臨めない」云々というお決まりの苦情は出なくなるはず。とはいえ、冬にしかバカンスできないとなると、フランスでは「子供の夏休みに家族が一緒に休暇をとれない」と労働組合が反対しそうだし、真夏には頻繁に40度を超すスペインでは、暑すぎて選手の命が危ないという声が出るかもしれない。すべての問題をクリアする名案はなく、こうして冬のサッカーは続くのだ。

 昨年、ソショーの床暖房装置つきピッチを紹介したが、今年はナンシーが人工芝ピッチを実現し、訪問チームに嫌がられている。ちなみに寒さが厳しいナンシーでは、プレス席も室内と、寒さ対策は万全だが、ソショーでは、ピッチはOKでもプレス席は極寒で、PCのコードが凍って曲がらなくなるので、ポキンと折らないよう細心の注意が必要だ。パリも今年は大雪で、雪野原のピッチを雪かき部隊が必死に整備している。雪でボールが見えないため、オレンジ色のボールを使った北部の試合もあった。

 あの手この手を使って苦闘しつつ冬を乗り切る彼らはほとんどマゾだが、先日、スパルタク・モスクワの試合を見たら、くそ寒いのに上半身裸で応援しているサポーター集団がいた。ロシアのファンは、西欧の雪騒ぎを笑っているかもしれない。』


18年ロシアW杯開催に備えてロシアが秋春制に移行し、22年カタールW杯は1月開催にする提案がなされるなど、最近欧州サッカーで、開催日程についての話題が論議を呼んでいます。

かたや日本。日本サッカー協会前会長の犬飼氏が強引に推し進めた秋春制移行は、Jリーグの基本理念と相容れないものでした。Jリーグサポーターの反対署名運動が起こり、09年2月26日、『冬開催に反対するJリーグサポーター有志の会』が55,511筆の反対署名をJFA田嶋専務理事に手渡しました。秋春制移行は犬飼氏の失脚によって一旦幕を降ろしましたが、決着というより先送りの感は否めません。

『冬開催に反対するJリーグサポーター有志の会』

http://yukiguni-club.rash.jp/

93年Jリーグが開幕した時、その理念と100年構想に感銘を受けJリーグサポーターになった私にとっては、最近の「自分が応援するクラブがよければいいじゃないか」という風潮(私は【セクト化】と呼びます)も気になります。

かつて新潟大震災の時や川崎フロンターレの我那覇選手のドーピング問題の時はJリーグサポーターに連帯感がありました。共存共栄なくしてJリーグは発展しないのは自明です。もし秋春制(冬開催)に移行すれば観客動員数は激減、入場料収入に大きく依存する地方クラブは存続の危機に立たされるでしょう。

最後に私が冬開催反対署名運動の参加するきっかけとなった、札幌コンサドーレサポーター『蹴馬鹿』さんのブログから03年天皇杯観戦記を紹介します。

『あの時オレは「生きて帰ろう」と思った。~03・天皇杯』

http://keribaka51.exblog.jp/7619286/


今日1月17日は阪神淡路大震災の日です。16年前、震災でご家族・友人を亡くされた方・住む家を失われた方に哀悼の意を表します。