<<二十歳の原点:高野悦子:新潮文庫>>
こんなに読むのに時間がかかった本はない 私の読書の気力低下もあるけど、今の社会や自分の世界の見え方に凄く似ている気がして中々読み進めなかった
買って一年くらいしてやっと読み終わった 他人の日記を隠れ読んでいるような変な気持ちになる
学生運動があり、恋があり、人生があり、将来・未来がやってくる それはどれも実体として存在せずに空に浮かんでいる雲のようで、入口はありそうだけど、出口がはっきり見えない感じ 中身も詰まっているかよくわからない 私自身が感じる不安とかモヤモヤ、不満と重なり、恥ずかしい気持ちと共感みたいなものを持たせてくれた
一人の女性が大学に行き、世の中からフェードアウトする 何かこう虚しさと潔さが見えてくる 表紙には赤いバラがある 花言葉としては「あなたが好きです」「愛しています」と調べたら出てくる もしこの作品「二十歳の原点」に合う花言葉を考えるとするなら、生まれて、命を燃やして、苛々して、色々考えて居なくなる ”燃焼”なんじゃないかと感じた
「情熱」や「告白」も赤いバラの花言葉として存在しているけど、命を個として燃やしたんだなとこの本を読んで思う
買った書店には、今2冊ほど並んでいるが、私が気になって買おうと思った時は無かったこともあった 確かにこの本を読んでいる人が世界にいるんだなと感じて、何故か温かい気持ちになり、読もうと思っていた時期とは違う時期に読んだので、本というのは「読むべき時期」があり、その時期に読めば本としてのうまみが出てくる気がした
青年期やモラトリアムの時期に来る虚無みたいなものは、中々振り払えない それに突っ伏すか、打破するか
自我が暴れ出して、周りを振り回すか 自分を律して、孤独感をより一層深めるか 人の感情や世界の流れは迷路みたいに複雑で
答えなんて、でてこないことが理解できた
嗜好品を取らずに、しらふで生きることがどれほど恐ろしいのか そんなどうしようもなく不安がっている私には素晴らしい本である
