おめでとう
今年の映画賞レースの幕開けを飾る「第46回報知映画賞」の各賞が30日、発表された。主演男優賞は「マスカレード・ナイト」(鈴木雅之監督)でホテルマンになりきり潜入捜査する刑事を演じた木村拓哉(49)が初受賞した。91年のデビューから30周年を迎えた節目イヤーでの快挙を「たくさんの役者さんがいる中で、すごくうれしい」と喜んだ。表彰式は今月中旬に都内で行われる。
逆境でも挑戦をやめないのが木村流。劇中で印象的なアルゼンチンタンゴは、初回のレッスンで「ダメだ、これは」と弱音を吐いた。アイドル時代にダンスは磨いたのでは? そう尋ねると、勢いよく言葉が返ってきた。
「ぜっんぜん。今まで端っこをかじってきたような踊りは、全く生かされなかった。一人で回ってステップすることはしてきたけど、タンゴは違う。いかに相手を美しく見せられるか」。そう言うと、指を鳴らしてビートを刻んだ。「僕らは、音楽にのせて踊っていた。でもタンゴの音楽は単なる背景で。いとおしく、苦しく、悲しく。音を背景にして、人生の一瞬を紡ぐ。“目からうろこ”じゃなくて“目から身”が落ちたような感覚でしたね」
“視聴率男”として語り継がれる作品を数多く残してきたが、本作も「最高」だった。「日本映画では珍しく、これでもかというくらいにお祭りみたいで。あと改めて現場が好きだなって」
演技の「原点」は初舞台「盲導犬」(89年)。演出の故・蜷川幸雄さんの厳しい指導に「髪が白くなるどころか、ハゲましたからね。もう好きとか嫌いじゃなかったですね」。30年以上、最前線を走り続けてきた根幹にあるのは現場を大事にする蜷川イズム。「プロの職人さんが『おまえのスキルはどんなもんなんだ』と迎え入れてくれて。それに応えれば『最高の光をつくってやる』『それを逃さないで撮ってやる』と。はたから見れば夜遅くまで大変だとか思うでしょうけど、やりたくてやっている。覚悟を決めている。最終的にはお互いを認め合いながら楽しんでいるだけなんですよね」