どうも、ハローダです。
今回取り上げるのは、JR東日本の各駅に現在進行形で導入されている発車メロディ「JRE-IKSTシリーズ」です。
2024年の横浜駅での初導入時に「謎の新発車メロディ」として話題になった発車メロディの総称で、今年4月末にてNetflixで配信された映画「新幹線大爆破」にて「JRE-IKST」と銘打たれたのが始まりです。
今回は革新的な発車メロディ「JRE-IKSTシリーズ」の大まかな概要について解剖していきます。発車メロディ変更の歴史は語ると非常に長くなるので別記事で紹介します。
目次
1.そもそも「発車メロディ」とは
2.JRE-IKSTシリーズの特徴
3.曲ごとの使用路線と変更駅一覧
4.発車メロディ変更の流れ
5.似たような前例「0503事件」
6.評価とメリット、デメリット
1.そもそも「発車メロディ」とは
発車メロディ紹介からこのブログにたどり着く人が非常に多いと思われるので説明は不要かもしれませんが、当記事に付帯させる形で説明します。
発車メロディは、鉄道の駅で旅客である我々に電車の発車を告げるサイン音として日本はおろか、海外でも使われる事が多い10秒前後の短い音楽です。
「駅メロ」として深く日常の中での移動を彩る発車メロディは大人気の音楽ジャンルの一つとして世界中の人に刷り込まれています。
似たような物として「発車ベル」が挙げられますが、それは「プルルルルルルルルルル…」と同じ音色の組み合わせが断続的に続く合図音、正式には「電子電鈴」と呼ばれます。
1912年に上野駅で採用されたのを期に、発車を合図する音として全国で使われました。
逆に考えてみてください。
あなたは発車間際の電車が止まっているホームに慌てて走って辿り着きました。
電車が発車する際に「○番線の○○行きはまもなく発車します」な類いのアナウンスと発車サイン音が一切流れず、発車時刻を迎えた瞬間に無音でドアが閉まり、はい発車!あなたは置き去りにされました。
冷静に考えてください。ドアに挟まれる危険性が格段に高い状況のはずです。
そういう事故を防ぐ為に、日本の鉄道開業当初から列車の発車前には駅員が鐘や笛、時には太鼓等を用いて客に知らせていました。
さて、そんな便利な移動手段である鉄道。当然の用に利用者数は増えてホームにいる多数の客に発車を周知させるのが困難になった所で前述の通り、1912年の1月8日に上野駅で日本で初の発車ベルを設置して、その後は利便性の高さから全国に普及していきました。
しかし、そういった発車ベルやブザーといった音は耳に対する刺激が非常に強く、嫌でも「急き立てられる」乗降促進どころか駆け込み乗車を煽る音としても根付いてしまっていました。
そこで連続性しかないうるさい発車ベルに代わって導入されたのが「発車メロディ」という音楽で、起源は諸説あるものの
1951年旧国鉄時代・豊肥本線の豊後竹田駅で「荒城の月」が流れるレコードを使用し、列車の発車時に使ったものが発車メロディの元祖と言われます。
皆さんも音楽の時間で習ったであろう「荒城の月」を作曲した滝廉太郎は大分県竹田市の出身で、これが発車メロディとしても、ご当地発車メロディの嚆矢とされました。
1970年代には京阪や一部の大手私鉄で発車メロディが使われていました。
時は流れ国鉄民営化(爆発)後の1989年3月、転生したJR各社は顧客サービスの一環として新宿駅と渋谷駅でYAMAHA開発の発車メロディが導入されました。
JR東日本黎明期、1日の乗降客数が150万人を超える両駅で導入されたYAMAHA製の発車メロディは「ミュートピアノと鈴」「ハープとせせらぎ」等のチルアウトソングで、今主流のカジュアル系発車メロディとは違う「安らぎ」を主軸としていました。
騒音とされ不評だった発車ベルに対して、発車メロディは「駅メロ、心に安らぎ(読売新聞)」と好評で、当初の発車メロディは騒音対策・癒し系と「通知音」としての側面が強く、多様な音楽性は排されて作られたものが多いと渡辺氏は仰っていました。
そして1990年代後半~2000年代初頭に頭角を現しはじめたのが「ご当地発車メロディ」で、蒲田駅で「蒲田行進曲」、高田馬場駅で「鉄腕アトム」等の曲が使われるようになると、駅を抱える各自治体や地元企業は地域のPRができる格好の機会を逃がさないようにご当地メロディが増加。
同時期のJR東日本では東洋メディアリンクスや永楽電気、サウンドフォーラム等の発車メロディを使用して発車メロディは益々多様にカジュアル化していきました。
そこから20年以上余りが経過した令和の時代になって彗星の如く現れたのが、JR東日本による自社管理曲・JRE-IKSTシリーズです。
2.JRE-IKSTシリーズの特徴
先述の通り、JRE-IKSTシリーズの発車メロディは2024年10月から新しく導入された発車メロディです。
その大きな特徴として、今までは駅毎に違った発車メロディが路線毎に異なる発車メロディとなり、採用されている駅が連続する限りは同じ曲が流れ続けるのが大きな特徴です。
また、車両にIKSTシリーズの発車メロディさえ搭載出来れば同一路線の全駅で同じ曲が流れ続けます。(実例:南武線)
今で言うJRE-IKSTシリーズの曲が導入されたばかりの2024年はまだ路線毎の曲があまり固まっておらず、ファン達の間では「首都圏メロディ」「首都圏○○番」と付けられています。
横浜駅の東海道線副本線5・8番線に今の横浜線用メロディ(JRE-IKST-013)が導入されていた…という例も少なくありません。
そんな横浜駅も2025年の5月21日に再び変更が行われ、東海道線の副本線5・8番線にJRE-IKST-021(東海道線用発車メロディ)の音色違いが採用されました。
もう一つの大きな特徴としては、JR東日本の管理曲という点です。これは項目6で詳しく書きます。
JR東日本管理曲PDF↓
3.曲毎の使用路線と変更駅一覧(1/15時点)
自分が書いたIphoneのメモからコピペして記入しているので、少々見ずらい点がございますが垂れ流しでOKです。
曲ごとの使用路線と使用駅
JRE-IKSTシリーズの使用路線と使用駅一覧
引用:首都圏駅メロwiki
変更履歴
【凡例】
※は日中変更
△はご当地曲を除いた変更
○は一部ホームを除いた変更
●は新曲初登場
◎は新音色初登場
◇は発車ベル(電子電鈴)からの変更
【2024年】
10月 ●◎横浜(10/9)、●◎新宿(10/24)、●◎東京(10/31) 3駅変更
11月 新川崎(11/12)、保土ヶ谷(11/19)、東逗子、△武蔵小杉(11/22)、東戸塚(11/26)、戸塚(11/28) 6駅変更
12月 鎌倉(12/13)、●◎逗子(12/17) 2駅変更
【2025年】
1月 久里浜(1/8)、北鎌倉(1/10)、吉祥寺(1/11)、○●◎府中本町(1/21)、◎北府中(1/22)、新小平(1/23)、新秋津(1/24)、●◎東所沢、西日暮里(1/28) 9駅変更
2月 △※西荻窪(2/10)、※△●◎池袋、※◇新大久保、※代々木、※原宿(2/12)
※秋葉原、※渋谷、※△神田、※目黒、※有楽町、※五反田、※浜松町、※○大崎、※田町(2/13)
※馬喰町、※新日本橋、※南千住(2/14)
中野、新橋(2/15)、△●◎大宮(2/18)
△◇●◎上野、柏、さいたま新都心(2/19)
※◎津田沼、※西船橋、※東船橋、※船橋(2/21)
△浦和、※御徒町、※三河島(2/26)
※松戸、※取手(2/27) 32駅変更
3月 ※大磯、※鴨宮、※早川(3/3)、※根府川、※真鶴(3/4)、※湯河原、※熱海(3/5) 7駅変更
4月 土呂(4/11)、西荻窪(4/12)、※北与野、※与野本町、※南与野、※中浦和(4/15)、◎大崎1・2番線、※◎武蔵浦和、※△北戸田、※△戸田、※△戸田公園(4/16)、◎大崎3・4番線(4/18)、△高円寺3・4番線(4/22) 10駅変更
5月 ※御茶ノ水、※八丁堀、※越中島(5/12)東十条、※大井町、※大森、※信濃町、※東中野(5/13)、※武蔵浦和、※西浦和、※東浦和、※南浦和(武蔵野線)、※東川口(5/15)、※越谷レイクタウン、※吉川、※吉川美南、三郷、新松戸(5/16)、※来宮、※伊豆多賀、※網代(5/19)、※田浦、※◎横須賀、※衣笠(5/20)、王子、※△川崎、※新子安、※鶴見、※東神奈川、◎横浜(再変更)(5/21)、※石川町、※桜木町、※山手、※根岸、※新三郷(5/22)、※新杉田、※洋光台、※港南台、※本郷台(5/23)、※△与野、※△◎北浦和、※南浦和、※蕨、※西川口、※川口(5/26)、赤羽7・8番線(5/27)、※荻窪(中央緩行線)(5/30) 46駅変更
6月 ※潮見、※新木場、※葛西臨海公園、※◎新浦安、※市川塩浜、※二俣新町(6/2)
板橋、※小岩、※新小岩、※亀戸、※平井、※錦糸町、※浅草橋、※○田端(3・4番線)、※○日暮里(山手線内回り・京浜東北線北行)(6/3)、※川越3~6番線、※南古谷、※指扇、※西大宮、※日進(6/4)
※検見川浜、※稲毛海岸、※南船橋、※新習志野、※幕張豊砂、※◎千葉みなと(6/5)、
上中里(6/7)、※飯田橋、※◇千駄ヶ谷、※大久保、※四ツ谷(6/10)、野木、※品川(6/11)、間々田、※西千葉、※新検見川、※幕張本郷、※本八幡、※下総中山(6/13)、※新八柱、※東松戸、※市川大野、※船橋法典、※武蔵境、※東小金井(1・3番線)、※△◎武蔵小金井(3・4番線)、※国立(6/16)、※荻窪(残りのホーム)、※●◎立川、※日野、※西八王子、※磯子、※品川6番線(6/17)
※上野原、※高尾、※◎相模湖、※藤野(6/18)
※梁川、※鳥沢、※猿橋、※四方津(6/19)、※甲斐大和、※初狩、※笹子、※◎大月(6/23)、※勝沼ぶどう郷、※◎塩山、※東山梨、※山梨市(6/24)
※日野春、※長坂、※●◎小淵沢、◎茅ヶ崎(特急ホーム)、◎藤沢(特急ホーム)(6/25)、※穴山、※新府、※韮崎、※塩崎(6/26)
※竜王、※甲府、※春日居町、※酒折(6/27)
80駅変更
7月 ※稲毛、※◎幕張、※市川、※両国(7/4)、※宮原、※桶川、※北本、※岡部、※本庄、(7/14)、※神保原、※新町、※◇倉賀野、※●◎高崎 (7/15)、※沼田、※渋川、※新前橋、※井野、※高崎問屋町(7/16)、※横川、※安中(7/17)、※佐野、※伊勢崎、※駒形、※●前橋大島(7/22)、※●中之条(7/23)、富田(7/25)25駅変更
8月 ※東大宮、※白岡、※新白岡、※東鷲宮、※栗橋、※◎古河(8/20)、※小山、※◎小金井、※自治医大、※石橋、※●◎宇都宮(8/21) ●上毛高原、●安中榛名、本庄早稲田(8/25)、熊谷(新幹線)(8/26)、15駅変更
9月 南武線車載(9/2~順次変更)、佐久平(9/4)、上田(9/5/新幹線)、雀宮(9/12)、※藤代、※ひたち野うしく(9/16)、久喜、※高浜、※◎羽鳥、※内原(9/17)、※勝田、※佐和、※東海(9/18)、※赤塚、※●◎水戸(9/19)、●新白河(9/20/新幹線)、南中郷、勿来、大津港(9/24)、泉、内郷、越後湯沢、浦佐、植田(9/25)、●いわき、長岡、燕三条(9/26)25駅変更
10月 ※●浜野、※鎌取、※●本千葉、※●◎銚子、※●佐原、※鹿島神宮(10/20)、※●小山(水戸線)、※土気、※大網、※茂原、※八積、※●◎上総一ノ宮、※◎本納、※◎八街、※◇◎榎戸、※●成東、※東金、(10/22)16駅変更
11月 ●◎松本(11/17)●◎成田、成田空港第一ビル、空港第2ビル、●◎大原、勝浦(11/18)、◇長野原草津口(11/29)7駅変更
12月 安房鴨川、四街道、誉田、姉ヶ崎、◇長浦、袖ヶ浦、千倉(12/15)、※東我孫子、※湖北、※新木、※布佐、※木下、※小林、※安食(12/24)14駅変更
総計 296駅
4.発車メロディ変更の流れ
上記の動画を見ればすぐ分かると思います。
発車メロディ変更のプロセスは
営業列車での旧発車メロディ最後の取り扱い、鳴動
↓
「○番線、発車ベルの試験放送を行います」の案内が流れ、旧発車メロディ最後の鳴動
↓
作業員が駅の放送装置機器内にある発車メロディのROMカードを差し替え、これをもって発車メロディの変更が完了(JRE-IKSTシリーズに置き換え)
↓
新発車メロディの試験放送、新発車メロディ鳴動
↓
営業列車での新発車メロディの取り扱い、鳴動
日中、言い換えるならば駅の営業時間中に変更される場合は上記の手順を踏んで発車メロディが変更されます。
試験放送も流さずにいきなり新しい発車メロディを流すと困惑するでしょう。
一部の駅では車掌や駅員が「明日から駅の発車メロディを変えます(変わりました)」と告知した事例(例:中野)がありますが、最近は変更が当たり前になってる風潮もあってか告知は控えめになっているようです。寂しい。
5.似たような前例「0503事件」
↑こちらの動画も併せて見ると良いです。引用元:マツケン先生
オカリナ奏者として有名な宗次郎。彼の曲を発車メロディ用に編曲した「清流」「雲を友として」が20年ほど前に著作権切れで新曲に置き換えられた「0503事件(2005年の2~3月に宗次郎メロディが置き換えられたことから命名された)」というものも起きましたが、宗次郎メロディの使用駅が計50駅と東京周辺に集中していたので大規模な変更にはなりませんでした。
それに対して今回のJRE-IKSTシリーズは関東の駅のみならず、JR東日本管内の駅であれば全て変更するという鉄道史に残る大規模な事業となっています。
まるで侵略的外来種のようです。
変更時としての大きな特徴は
①電子ベル(電鈴)も置き換える(発車メロディ化)
②ご当地メロディは変更されにくい
③臨時列車しか扱わない、もしくは物理的に使えないホームの発車メロディも置き換える
④同一路線で2面3線以上ある駅でも、島式ホーム1つにつき放送装置が1つの場合は音色違いが入らない場合がある
⑤土休日は変更されにくい
①の電子ベルに関しては少々ややこしいですが「ROMベル」と「電子電鈴(でんれい)」の二つに大別され、ROMベルはPC等で作った音源ファイルを駅の再生機器から鳴らしています。平たく言えば発車メロディの一つとして分類されるので置き換えの対象になります。
それに対し電子電鈴はスピーカーにベルの波形を作る内蔵のICチップにより電圧を加えて作動するもので、装置そのものが発車ベル専用器と言えます。
電子電鈴の(装置がある)駅を変更するには別途で発車メロディ再生機器の更新やスイッチの配線を変えなければならず、コストが高くつきます。
話は電子ベルと電子電鈴の違いから逸れますが、電子ベルを使っていた(いる)駅には大なり小なりの事情があります。
例えば発車ベル→IKST化の第一号である新大久保駅は「コリアンタウン」と言われる通り、駅周辺がアジア圏を中心とした多国籍の資本企業・店、利用客の国籍も幅広いです。
海外圏の利用客が慣れない発車メロディで困惑しないように(とは言っても鉄道で行く場合は発車メロディの鳴る駅を経由しているの)電子ベルを使ったものだと推察できます。
近年になると外国人観光客は一方的に増加し、外国人も日本の「発車メロディ」が好きな客は増えています。実際にお土産屋や鉄道グッズ店で売っている「発車メロディキーホルダー」も外国人に人気で、頻回に再販がかかっています。
そういった事情から、「外国人や上京客に対する配慮はいらなくなった」事で発車メロディ(IKST)化に至ったと考察できます。
ただし上記は私個人の推論でしか無く、「将来のワンマン運転化に伴うメロディ統一、車載用新発車メロディの作曲」が変更の大義となります。恐らく。
②のご当地メロディ変更は変更される曲とそうでない曲の線引きが曖昧ですが、ご当地発車メロディも以下の6種類に大別できます。
童謡・唱歌(品川駅:鉄道唱歌、駒込駅:さくらさくら等)
民謡・祭り(高円寺駅:阿波踊り等、東北に多い)
市町村歌・イメージソング(大宮駅:希望のまち、深谷駅:おねぎのマーチ等)
歌手・バンド・グループ(茅ヶ崎駅:希望の轍、淵野辺駅:銀河鉄道999等)
スポーツ関連・応援曲(関内駅:熱き星たちよ、水道橋駅:闘魂こめて等)
その他・クラシック系
ご当地メロディは鉄道駅がある各自治体・団体がJR東日本に人件費や著作権料、曲変更に伴う放送装置の更新等の経費を支払っています。
故に地域のアピール・CMとなって乗客は「あっ!この駅で降りたい!」「これ○○(アーティストの名前)の曲だ!」と感銘を受ける訳です。
自治体・企業側からしても発車メロディを介した宣伝効果は無視出来ないもので、自分の地域を売り込める格好の機会を逃さず縁のある曲を叩き台にして駅メロという形にするのです。
著作権料、放送装置変更料等の負担が自治体にのしかかる以上、そう簡単に変更するのは出来ないのでご当地メロディはJRE-IKSTシリーズに置き換わりにくい訳です。(ただし自社管理のご当地曲や変更に許可を出している自治体は除く)
これはあくまでも個人的な推論なので、例外はあります。
JRE-IKSTシリーズに変更されたご当地メロディ
・線路は続くよどこまでも(桜木町駅)
・鉄道唱歌(品川駅)
・カリフォルニアシャワー(宇都宮駅)※現在は再変更されてカリフォルニアシャワーが流れるように
なお、ヴィヴァルディ「四季」の「春」「秋」(発車メロディ)は劇団四季劇場のある大井町駅だけでは無く、何故かクラシックより高尾山薬王院に縁の深い高尾駅でも採用されていたので、ご当地メロディに分類されません。故に変更されました。
⑤の発車メロディ変更は平日に変更される事例が非常に多かったので補記しただけで、土休日にも変更された事例はあります。(変更駅一覧の日付参照)
6.JRE-IKSTシリーズのメリット、デメリット
JRE-IKSTシリーズに関する個人的評価は別の機会にするとして、
発車メロディが変わる以上、何かしらのメリットとデメリット、良い事と悪い事は生まれます。
今回はあくまでも「解剖」なので、ネット上で散見される「発車メロディを路線毎に統一したら分かりずらい!」「発車メロディを予告無しに変えるな!」等の抽象的・私情的な意見は書きません。
本記事の最後となる本節は「乗客視点でのメリットとデメリット」「企業視点でのメリットとデメリット」を解説します。企業視点に関しては抽象度が低く、拙い部分が見受けられると思うので、良ければコメントで補足して下さると幸いです。
1.乗客視点でのメリット
後述する企業視点でのメリットにも言える事ですが、IKSTシリーズの曲は上下線・方面別の発車メロディとして設計されているので「○○方面はこの曲、この音色か!」とシームレスに分かる、乗客の導線確保も視野に入れた曲となっています。
そりゃ発車メロディも駅を構成する要素の一つですから、乗客に分かってもらえない、目的の電車に乗れない時点でただの音楽でしかありません。
2.乗客視点でのデメリット
まるでボロ雑巾のように多方面から批判をもらっているIKSTシリーズ、どう評価するかは個人の自由ですが乗客視点ではメリットよりデメリットの方が圧倒的に強まってしまうので、順を追って説明します。
①音色が分からない・聞こえにくい
②発車メロディ向けに作られた曲では無い
①の音色分かりずらい問題、発車メロディが「駅で流れる音楽」で成り立つ以上は避けて通れません。
駅は公共の場です。それが新宿駅のような都会の、大きなターミナル駅は列車の走行音やブレーキ、警笛、駅係員の放送やアナウンス、乗客の話し声や周辺からの雑音等、常にうるさい場所になるのは必然です。
喧騒に満ちた駅のホームで客に電車の発車を知らせる役割を担う発車メロディの音量は、他のどの雑音よりうるさいほどに響きやすい音色で無いと聞こえない、乗客の耳に届きません。
②発車メロディ向けに作られた曲では無い
①から話を続けますが、JRE-IKSTシリーズの曲を聴いた他の方々も仰る通り、明らかに発車メロディ用に作られた曲じゃ無いと言う人も一定数います。
まあ、JRE-IKSTシリーズの評価を一言で言ってしまえば
「音が安っぽい、作曲ソフトでそのまま作ったかのような音色」
と、曲によって評価が割れやすいです。
先述の曲の響きやすさもJRE-IKSTシリーズの曲には欠けている場合がそれなりにあります。
周囲が田園地帯で静かな田舎の駅であればそこまで音量・響きやすさは重視されませんが、都会の駅、特に山手線や京浜東北線等が通る駅では大音量かつ音が重層的で無いと聞こえにくいです。
参考に山手線の発車メロディ「JRE-IKST-010(山手線用)」
はどこか音が軽く、チープな感じの音色として乗客の耳を悩ませます。
曲別の評価をやり出すと長文になってしまうので別記事にしますが、山手線用の曲であるJRE-IKST-010-01(山手線内回り)は単調なピアノの音、010-02(山手線用外回り)は甲高い電子音がちょっと不快、その上音が単純すぎるので他の雑音に負けてしまいます。
その分、過去に山手線の主な発車メロディとして名を馳せていた「せせらぎ」は裏に鐘のようか音色が入るので発車メロディとしての機能性は高かったです。(現在でも日暮里や目白、巣鴨等で聞ける)
比較用参考:せせらぎ
発車メロディの役割は乗客に「もうすぐ電車が発車するヨ!」と知らせる為の曲です。
その為、一定以上のテンポの速さと曲の終わりのタイミングが聞いてわかりやすい曲に設計されているものが大半を占めます。
発車メロディは車掌または運転士がスイッチを扱って鳴らす以上、フルで鳴っても早く切られても納得のいくメロディラインになっています。
よく発車メロディがすぐ切られやすいタイミングとして、遅延している時は回復運転をして遅れを取り戻さなければならない。必然的に停車時間が短くなってしまいます。
すると発車メロディだって途中で、下手すれば1音鳴っただけで切り上げる場合がほとんどです。
それを見越した区切りの良さも発車メロディの作曲には求められています。
しかし、「JRE-IKSTシリーズ」には「どこで終わるの?」と想像が付きにくいものがいくつかあります。
京浜東北線用の曲である「JRE-IKST-007」はまさにその一つで、曲の終わりを想像しずらい曲調になっています。
東京メトロの発車メロディ「ぐるぐる」にも似たこの発車メロディは序盤の音色がいつまでも続きそうな、不快な意味で印象が残ってしまう曲です。
他にも「曲の終着点」が見えずらい曲は
東海道線/宇都宮線用のJRE-IKST-021シリーズや、
信越本線用のJRE-IKST-026です。東京じゃ聴けないから別に終わりが見えなくたっていいだろぐへへwな人もいるかもしれませんが、
私が高崎駅で聴いた時は「オフチョベットしたテフをマブガッドしてリットにする」ぐらい意味不明に聞こえました。
このようにJRE-IKSTシリーズの曲は発車メロディとしても、短い曲としても安っぽい音色で不快感を催す音色が含まれる曲が一定数存在するので評価が悪い方向に傾きがちです。
これらの曲を聞いて、私はあるゲームのBGMを想起しました。
明らかな不快音の例↓
引用:アンシャントロマン ボス戦BGM
まあ、こちらは鉄道の曲であるJRE-IKSTシリーズと違ってゲーム(クソゲー)のBGMなので比較するのも失礼ですが、アンロマの曲はBGMじゃないです。
ただの長い、聴覚を攻撃する雑音です。
3.企業視点でのメリット
これは…もう説明できますね。「JR東日本オリジナルの発車メロディを作って、著作権料を払わなくて済むようにした」と。
非常に当たり前の話ですが、自分の代わりに何かを作って貰おうとするとコスト、金がかかります。
発車メロディについても(永楽電気等の放送装置メーカーを介して)プロの作曲家に楽曲制作を依頼する形で従来の発車メロディは作られてきました。
JR東日本だけでも何百、下手すれば千にも到達しうる曲がある分だけ著作権料がかかります。
これは一つの事例ですが、高崎線の深谷駅で使用されている発車メロディ「おねぎのマーチ」は著作権料が年間で31,500円かかっており、市が負担する形で使用を継続しています。
著作権料も曲によって異なると思うのですが、何百もの発車メロディの著作権料だけで何十億~何百億と支払っている可能性が非常に高いです。
JR東日本はあくまでも一つの鉄道会社。最近はワンマン運転による人件費の削減等のコストカットにも舵を切っています。
経費が削れる所はとことん削りたいところなので、「発車メロディの著作権料高いなぁ…そうだ!自分達で発車メロディを作ればクソ高い著作権料を払わなくて済むんだ!じゃあ作ろう!(JRE-IKSTシリーズを)」
このような経緯で発車メロディ制作チームを立ち上げて、作曲能力のある方々を集めて制作されたのが「JRE-IKSTシリーズ」の発車メロディでしょう。
そうじゃなければ「自社で作ったんだ!」と胸を張れる発車メロディリストも掲載できません。
私は音楽に関する理論に精通していない、いわゆる「聞き専」なので出来の賛否は別として、自社で金をかけて発車メロディを作った方が何百億円を年一で払うより著作権料が節約できるからでしょう。
自社で作ってしまえば、商品化(音の鳴るキーホルダー等)した際に売れれば利益になりますからね。利益になる事を逃さない。企業としては当たり前です。
4.企業視点でのデメリット
乗客に対する配慮の不足は目立つ一方で、JRE-IKSTに置き換えられた発車メロディのROM(音源データ)は廃棄されるので、
変更された駅では二度と過去の発車メロディを流す事が出来なくなります。
(ただし別に音源データが残っているのなら話は別)
それだけの話で、JR東日本側からした発車メロディ変更のデメリットは非常に薄いと思います。
さいごに
JRE-IKSTシリーズの事を語りたいがあまりにとても長々とした文章になってしまいました。
ですが、それだけ本発車メロディのシリーズを語りたかったのです。
横浜駅で初めて採用されてしまったJRE-IKSTシリーズ、昨年の今頃はまだ勢力圏が横須賀線や東京周辺の数駅で踏みとどまっていたので「ここで止めていれば評価が悪くなる事がなかったのに」と無数のタラレバはいくらでも言えてしまいます。
ですが、JRE-IKSTシリーズも一つの発車メロディ。
過去の曲と比べて劣って聞こえる曲も多いかと思いますが、
曲そのものに対する的を得ていない激しい批判はやめましょう。作曲者は非公開ですがあなたが見えない所にJRE-IKSTシリーズの作者はいます。
もしかしたら、今も新しい曲を作っているかもしれません。