それでも伝えたい"ありがとう"

癌の終末期では

痛み以外にも呼吸困難や

身の置き所のない全身倦怠感、

吐き気…

さまざまな症状が出てきます。

特にせん妄という症状は

脳の機能不全による

覚醒レベルに異常をきたし、

興奮、見当識障害、幻覚、妄想といった

みている家族もご本人も

不安や恐怖や大きなショックにつながり

痛み、呼吸困難とともに

鎮静の対象ともなる

辛い症状のひとつになります。

そんな、

もう予後数日で、

喉に大きな腫瘍ができて

呼吸困難感と喉のの不快感と

発声のしにくさとが強くなって

せん妄も出始めてきた女性のお話です。

その方には息子さんがいて。

毎日面会に来てくださる

お嫁さんがいらっしゃいます。

実の母のように

毎日お見舞いに来ては

好きなたべものをもってきては

冗談を言い合い

マッサージをし。

明るく寄り添って来られたお嫁さん。

いつもは

その方も

お嫁さんにとても感謝しておられ、

たくさん感謝の言葉を伝えて来られてきましたが

今日は

辻褄の合わない発言や

文章になると言葉が出てこない、

発声もしにくいので

筆談しようとしても字が書けない…

伝えたいことがつたえられないもどかしさと。

そのせん妄に対する不安感もあったのでしょうか

いつもなら絶対に言われない

あほ、

ぼけ

そんな

言葉をお嫁さんにも向けられていました

もちろん、お嫁さんには

せん妄の症状が

そう言わせているだけだということを説明し、

理解してもらってはいましたが。

辛かっただろうとおもいます。

癌という病気であるにも関わらず

朗らかだった義母。

病気そのものも受けいれ、

朗らかで、

賢く

優しいその方の

今の顔をこわばらせ

混乱した状態。

向けられる辛辣なことば。

それでも。

混乱した状態ではあるけれど、

伝えたい思いがありそうだと。

その方とともに過ごすことを選ばれたお嫁さん。

その方が、一生懸命伝えようとする言葉を紡ぎ、

言葉をかけ、

辛辣な言葉にも否定や怒りを向けず

穏やかに受け入れ…

むしろ笑いで受け止め…

そして。

お嫁さんが変えられる時、

「もう帰るから、明日また来るしな！」

その言葉をかけると

やっぱりまだ言いたいことが言えていない

というようにお嫁さんの腕をつかまれ、

ホワイトボードに

さっきまでなかなかでてこなかった文字を

書かれたんです。

なんや？

こんなデキた嫁にまだ文句言う？笑

と、笑いながらホワイトボードを

見つめていると…

あ

り

が

と

う

ようやく出てきた言葉

書けた文字に何度も何度もマルをつけながら。

その方とお嫁さん、2人

抱き合いながら

大号泣。

ああ、

こうやって泣きあえること。

こうやって生命や

その方の存在自体の尊さ

頑張って前向きに病気と向き合って

こられてからこそ。

せん妄のなか、

最期の

弱音も

毒も怒りも

ありのままの見届けられたからこそ。

あんなにしっかりと

ありがとう

を伝えることができたのかもしれない。

本当に奇跡のような瞬間に

生命の輝きや

人の優しさを

見させてもらえた気がしました。

今日はね。

そんなホスピスでの

最期を迎えられる日常のおはなしでした。

病気も

病気によって出てくる症状も

苦しさも

不安も恐怖も

全てを

そうあるものとして受け止め

受け止められていると感じることが

出来ると。

その人が1番大切にしている

想いを伝えることが

伝えあうことができるんだな。

そんな奇跡があるんだな。

ということを

あらためて。

感じさせてもらうことができました。

そう。

感動的でなくても

壮絶でなくても

静かにあっけなくても。

そして、苦しみ抜いたとしても。

そのありのままの人生を大切にできるような

最期を迎えることができるように。

看護を

積み重ねていきたいなと

思ったわたしです。

ありがとうございました

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