夢の話。夜見る夢。
私には10年以上片想いしている人がいる。
前も話したことがあるとあるバンドのボーカルだ。
彼の声が好きで好きで好きで、たまらなく好きで
もやもやが胸の中にたまって息ができなくなりそうなときは彼の声だけが聴こえるように
鼓膜がおかしくなるんじゃないかってぐらい音量を大きくして彼の歌を聴く。
不思議とすぅっと大きな息ができて、胸のもやもやが飛んでいく。
ファンクラブはもちろん、ライブにも必ず行くし遠征だってする。
握手会があれば何枚だってCDを買って応募する。
言葉じゃ言い表せないぐらい、彼が好き。
初めてその歌声を聞いたときから私の耳は彼の虜。
もちろん声だけじゃなくて、顔も仕草も何もかも好き。
声を聴いて、この声で名前を呼んでもらえたら
名前を呼ばれながらその指で触れられたら、どんなに幸せだろうといつも思う。
時々、夢に出てくることがある。何度も夢で逢ったことがある。
夢の中でぐらい、私は私の望むように彼を操作すればいいのに夢の中でも私はただのファンでいる。
昨晩見た夢では、彼が私の部屋にいた。
私はドキドキで、うれしくて、恥ずかしくて、幸せで、たまらなかった。
彼が言う。
「なにしてほしい?」
大好きな声で、私の目をまっすぐ見て言う。
”抱きしめてほしい”
”その声で私の名前を呼んで”
”キスをして”
”私に触れて”
”抱いて”
いろいろな望みが一瞬で頭を駆け巡るけど、結局私が言うのはただひとつ。
「歌ってください」
彼は嬉しそうに笑って、私一人のために歌ってくれる。
いつの間にか大きなライブ会場に場面は移ってて、私以外のたくさんの人が彼の歌声に聞き惚れている。
”私のために歌ってくれているんだ”
心の中でひそかな優越感を覚えながら、彼の声に酔いしれた。
ここで、目が覚める。
起き抜けの頭で何が何だかよくわからない状態でふと時計を見る。
まだ早朝。二度寝を決め込んだ。
うつらうつらする頭で考えた。
夢の中でも、私はただのファン。
声を聴くたびに名前を呼んでほしいって、姿を見るたびに触れたいって思うのに。
自分の夢の中ですら私は彼の歌声に魅了されたただのファン。
ふざけて結婚して、とか
抱いて、とか
思ったり言ったりするけど、私の一番の望みは彼の歌声を聴くことなんだ。
でも、夢の中でぐらい現実で絶対に叶わない夢を叶えたっていいのにね。
なんだかおかしくなったそんな日曜日の朝。