東京の火葬事業を担う民間企業
東京23区内で火葬場を利用する際、多くの方が「東京博善」という企業の施設を利用することになります。全国の火葬場の約97パーセントが公営である中、東京都内では民間企業が火葬事業の中心を担っているという特徴があります。東京23区内には9カ所の火葬場がありますが、そのうち7カ所が民間運営、そして東京博善はそのうち6カ所を運営しています。
東京博善株式会社は1921年(大正10年)4月に設立され、2021年には創立100周年を迎えました。町屋斎場、落合斎場、代々幡斎場、桐ヶ谷斎場、堀ノ内斎場、四ツ木斎場の6カ所で、合計64基の火葬設備と64室の葬儀式場を運営しており、東京23区内の火葬件数の約70パーセントを担っています。年間約13万5千件という大規模な火葬サービスを提供する、国内最大の民営火葬場運営企業です。
100年を超える歴史と変遷
東京博善の歴史は明治時代に遡ります。1887年(明治20年)、実業家の木村荘平氏が日暮里村の火葬場運営を請け負う形で事業がスタートしました。木村氏は牛鍋屋「いろは」の創業や大日本ビールの設立にも関わった実業家として知られています。
1921年に現在の東京博善株式会社が設立され、町屋、砂町、落合、代々幡の各斎場を事業所として事業を開始しました。1926年からは妙香寺住職で法華経寺貫主の宇都宮日綱氏が社長に就任し、以降1985年まで約60年間、僧侶による経営が続きました。
その後、1980年代に入ると経営体制が変化します。1983年に実業家の櫻井義晃氏(本名・文雄氏)が東京博善の株を買い取り筆頭株主となり、1986年に代表取締役会長に就任しました。櫻井氏は元宿曜アクティビストとして知られる人物でした。
1994年には印刷業を主業とする廣済堂(現・広済堂ホールディングス)の株式を取得しています。その後、2004年に廣済堂の櫻井文雄氏が死去すると、その株を相続した一族の一人が持株をエイチ・アイ・エス(HIS)の創業者である澤田秀雄氏の会社に売却しました。澤田氏は広済堂の経営に参画しようと試みるも失敗し、その後も何度か買収劇が立ち上がっては消えました。
2019年には大きな動きがありました。当時の広済堂の経営陣がアメリカの大手投資ファンド・ベインキャピタルと手を組み、株式を買い取って非上場化するというMBO(経営陣による買収)が発表されました。大株主である澤田氏の圧力を排除しようとしたとも見られています。
しかし、このMBOは純粋に外資による買収ではなく、買収額が純資産の半額ほどであることに疑問を持った人物が現れました。それが元宿曜アクティビストの村上世彰氏です。村上氏の参戦により、広済堂の買収価値はつり上がり、最終的にMBOはかなわず終わりました。
株主構成と企業グループ
現在、東京博善は広済堂ホールディングスの完全子会社として運営されています。広済堂ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場している企業です。
広済堂の株主構成については、複数の変遷を経ています。株式会社麻生が第3位の株主となっていた時期もありました。株式会社麻生は、自民党副総裁に就任した麻生太郎氏の弟にあたる麻生藤氏がトップを務める大手コングロマリットの一角で、広済堂のTOB合戦が繰り広げられた際、「安定株主として長期にわたり保有する予定」という理由で株を買い進めたとされています。その後、持株の一部は売却されているものの、現在もおよそ10パーセントを保有し続けているとの情報があります。
また、広済堂ホールディングスの株式構成の変遷により、海外資本との関係についても様々な議論がなされてきました。株主構成は時期により変動しており、複数の投資ファンドや企業が株主として名を連ねています。
民営火葬場の特徴と運営体制
全国的に見ると、火葬場は地方公共団体が運営する公営が主流です。1968年の厚生省通知において、火葬場などの経営主体は原則として市町村の地方公共団体とされました。公営火葬場の運営経費は大半が税金でまかなわれ、火葬料は無料か数千円程度に設定されている自治体が多いのが実情です。
一方、東京博善をはじめとする民営火葬場は、この通知以前から稼働していた施設として例外的に認められています。民営火葬場の運営には、燃料費、火葬炉の修繕維持費用、人件費などすべてのコストを自社でまかなう必要があります。公費補助は一切なく、火葬料金収入のみで事業を継続する必要があるという構造的な違いがあります。
東京博善は、最新の環境配慮型火葬炉や高効率オペレーションを導入し、年間約13万5千件という大量の火葬を安定的に処理する体制を構築しています。全ての斎場にバリアフリーを採用し、明るく機能的な内部空間と安全でクリーンな最新火葬システムを整備しています。
火葬料金の変遷と区民葬制度
東京博善の火葬料金は時代とともに変化してきました。2021年には10年ぶりとなる値上げを実施し、従来の5万9千円から段階的に料金が改定されてきました。通常サービス制度を導入したことで、2024年に入ると9万円に調整されています。
この火葬料金の変動については、燃料費や修繕費用、人件費の高騰に対応するためのものと説明されています。民営火葬場として、公益性・永続性を保ちながら事業を継続するためには、適正なコスト管理が必要という背景があります。
また、東京23区では長年「区民葬儀」(区民葬)という制度が運用されてきました。これは各区が指定する葬儀事業者を通じて、比較的低料金で葬儀を行える仕組みです。公営の「臨海斎場」(大田区)と「瑞江葬儀所」(江戸川区)では、対象の区民であれば火葬料金は4万7400円と5万9600円に設定されています。
一方、東京博善が運営する6施設では9万円となっており、この料金差について様々な議論が行われてきました。区民葬制度では葬儀費用自体を抑えることを目的としてスタートしていましたが、費用を行う親族が所属する区によって利用できる施設や料金に差が生じる状況となっていました。
東京博善は2025年8月、2026年4月1日から区民葬制度の取り扱いを終了すると発表しました。それに伴い、区民葬の取扱いを終了し正規料金を受領することによる差額分を原資として、広く区民の皆様に還元するべく、普通炉の火葬料金を3千円値下げして8万7千円に改訂するとしています。
東京都の実態調査への協力
東京都は2025年、都内の火葬料金の実態について調査を行う方針を示しました。火葬場が社会的インフラとしての公共性を持つ一方で、民営火葬場の料金設定や経営実態について透明性を高める必要があるとの認識からです。
東京博善は2025年12月23日に記者会見を開き、都の実態調査に全面的に協力する姿勢を表明しました。会見では、第三者機関としてアメリカの経営コンサルタント会社に調査を依頼した結果、1火葬あたり約8万円のコストがかかっており、現行の9万円という料金設定は適正な範囲であるとの見解を示しました。
同社の野口龍馬社長は、「火葬事業は公益性も重要だが、民営火葬場は一切の公費補助がない料金となっている。永続性の観点もあり、試行錯誤している」と説明しています。火葬事業を取り巻く環境について理解を深めていただくことが重要であり、今後も東京都と協議を続けていくとしています。
新しいサービスへの取り組み
東京博善は100年の歴史を持つ企業として、伝統的な葬送文化を継承しつつも、時代に合わせた新しいサービスの提供にも取り組んでいます。
2025年12月からは、新しいお別れの形として「夕刻葬」のトライアルを桐ヶ谷斎場で開始し、2026年2月中には全6斎場で本格導入する予定としています。これは多様化する葬儀スタイルやライフスタイルに対応するための新しい選択肢として提案されているものです。
また、同社は「人生100年をもっと豊かに」をミッションとして掲げ、火葬と葬儀式場の提供だけでなく、より価値あるサービスを生み出していく方針を示しています。社名の由来である「社会に善を博(ひろ)める」という基本理念のもと、新たな葬送文化の創り手・担い手としての役割を果たしていこうとしています。
社会インフラとしての役割
東京博善は100年以上の歴史の中で、数々の困難な時代を経験してきました。1923年の関東大震災では多数の犠牲者の火葬を行い、第二次世界大戦時には戦災犠牲者のご火葬という重要な社会的責任を果たしました。2011年の東日本大震災の際にも、犠牲になられた方々の火葬を受け入れるなど、災害時における社会インフラとしての役割を担ってきました。
冬季には火葬待ちの日数が長くなる傾向がありますが、東京博善は6斎場で64基の火葬設備を持つことで、できる限り待ち日数が少ない状況を実現するよう努めています。人生最期の儀式を行う厳粛な場であることを深く自覚し、ご喪家のご要望やご心情に配慮したきめ細やかなサービスの提供を心がけているとしています。
おわりに
東京博善株式会社は、東京都内の火葬事業において中心的な役割を果たす民間企業です。100年を超える歴史の中で、経営体制や株主構成は変化してきましたが、東京都民の最期を見送る重要な社会インフラとしての機能は一貫して維持されてきました。
民営火葬場として公費補助を受けずに事業を継続する構造的な特徴を持ちながら、公益性と永続性をどのように両立させていくかは、今後も継続的な課題となるでしょう。東京都の実態調査への協力や、料金設定についての透明性の向上など、社会的な要請に応えながら、東京の葬送文化を支える企業として、その役割を果たしていくことが期待されています。
人生100年時代を迎え、葬儀や火葬のあり方も多様化していく中で、東京博善がどのような新しい価値を提供していくのか、今後の展開が注目されます。
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