土日、祝祭日を除いて毎日書いているブログですが、10日間の夏休みで昨日から再開しました。ゆっくりさせてもらいましたが、猛暑で出歩く気はせず、読みかけの本を読み進めたり、スキャンしている記事を読み直したり、甲子園に出場している地元の高校チームの試合を見たりしていました。この休みの間も配信されてくる様々なニュースがありましたが、こんなものがありました。

マニュアル、これを今日のブログの題材にします。

作業手順書、業務手順書などと言われるマニュアルですが、品揃え的に作ることが多々あります。品揃え的と呼ばれるのは、一度作ってお終いというお飾りと言う意味です。『マニュアルは作られているか』に対して『あります』という程度の位置づけで、業務、作業の変更など、本来マニュアルに反映すべき事柄が発生しても反映せず、実際の業務／作業とマニュアルに記載されている内容との齟齬が発生していることが少なからずあります。それでも日々の作業は問題なく処理されているので、誰も気にせず放置されているのが現状のようです。『いや、うちはしっかりやっている』というところも、タイムリな更新をしているかは疑問です。もちろん、作業変更などマニュアルに反映すべきことが生じた際の手順に『マニュアルに反映すること』と明記されていて、そこに✔が入らないと変更が最終承認されないというフローがあり、順守されていれば完璧です。

さて、マニュアルに反映されていないのに、どうして日々の作業は問題なく処理されているのでしょう？それは、日々の作業をするうえで、マニュアルを見ながらということはなく、現場サイドではそれが周知されていて、旧手続のまま作業が行われることはないからです。しかし、昔の内容のままのマニュアルと現在の作業内容が一致していない状態で、問題が発生したりするとマニュアル通りではなかったと指摘されることになります。

どうして、見られない／使われない／タイムリな更新がされないマニュアルができてしまうのか？それは、現場が使いたいと思う／使うと安心して仕事ができると言う内容と書き方になっていないからだと思います。つまり、現場の実態を踏まえていないというか、よく理解していない管理部門、間接部門のスタッフが作業実態を踏まえず、杓子定規な書き方／内容になっているのではないかと思います。実際、企業の業務改革改善のコンサルティングをする際には、どうしてこんな書き方にするのか、これで現場の人は実際に使う気になるのだろうかと思うものが少なからずありました。『マニュアルは？』というと、『メンテされていませんが、これです』と言って渡されることもありました。上述の品揃えという位置づけであることがよく分かります。実際の作業は現場が現場マニュアルを作ってやっていることが多々ありますが、1999 年9月、茨城県東海村のJCO で起きた、高濃度のウラン溶液をバケツを使って手作業で扱うという驚きべき作業で職員２人が被ばくして死亡した臨界事故を思い起こします。

この臨界事故は、マニュアルに従わなかったことが引き金になりました。マニュアルに従って作業していれば、高濃度のウラン溶液を手作業でバケツを使って容器に移すことはなく、『ウラン溶液を溶解槽に移している時に青い光が出た』とされる臨界事故は起きませんでした。原子炉の中で起きる臨界が普通の部屋で起きてしまったという前代未聞の事故でしたが、なぜマニュアルが存在するのかを理解しない現場が勝手に編み出した簡便法で作業をした結果でした。危険なものを扱う作業であるという教育も徹底されていなかったのでしょうが、現場の作業実態を知らない管理部門が危険な作業方法が採られていることを知らないということも問題になりました。また、マニュアルで示された以外の方法で作業すると重大な状態になる可能性があることが、そのマニュアルに明記されていなかったのでしょう。危険なものを扱うことを考えれば、そこまで踏み込んで書く必要があることを理解していなかったことも想像されます。つまり、品揃え的なマニュアルです。

マニュアルを書く人には、次のことを旨とし、以下の項目に習って血の通ったマニュアルを書いて欲しいものです。

①現場を観察する

②現場の作業実態を理解する

（必要に応じて、現場からヒアリングする）

③現場の人に伝わる書き方をする

④マニュアルから逸脱すると起こり得る可能性のあるリスクに言及する

これ以外にもありますが、少なくとも、現場を知らずに机上の空論で書いてはいけません。

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現場を知らない人たちが書く品揃え的マニュアルの問題