連休明けの新聞に、このブログでも時々取り上げる医療ミスに関する記事がありました。

医療ミスなのに隠ぺいしようとした病院側の対応に義憤を感じた病院スタッフからの投書がなかったら、この医療ミスは闇に葬られていたでしょう。今日は、久しぶりに医療ミスを取り上げます。

脳血管に血栓ができ、脳への血液供給が止まった結果、脳組織に損傷を生じさせ、後遺症を生じさせるのが脳梗塞。今は特効薬があり、発症4時間30分以内にアルテプラーゼ(tPA)という血栓溶解剤を投与することで後遺症にならずに済む場合が多くなりました。この血栓溶解剤は、閉塞した血栓を溶解させ、途絶した脳血流を再開させることができる機能を持っていて、脳梗塞を起こした患者が死亡したり、重篤な後遺症にならずに済む確率を高めます。一方、血栓を溶かす機能に優れた薬ということは、逆に言えば血液が固まらないようにする機能も持っていて、出血を引き起こす可能性があるということです。手術をしたばかりで脳梗塞を起こしてしまったこの患者は、まだ傷口が塞がっていない状態で血栓溶解剤を投与されてしまったことになります。

で、どうなるのでしょう？そうです、手術した痕を縫合したところから大量に出血して亡くなってしまいました。血栓溶解剤を投与したことで死に至らしめたという明らかな治療ミスですが、『脳梗塞で亡くなった』と遺族に説明した病院側の隠ぺい体質は厳しく問われなければなりません。そもそも脳梗塞＝血栓溶解剤投与という短絡的な処置してしまった当該医師は責任を感じていないのでしょうか？責任を感じていたものの、病院幹部から口止めされたのか？情報提供したのは、現場に居合わせた病院スタッフではないかと思いますが、義憤を感じるのは当然でしょう。なお、狡猾な病院側は情報漏洩した犯人探しをしたことは容易に想像できます。隠ぺい体質によって病院の組織が守られるという発想が是正されない限り、どこでも起きると思います。

今回は病院関係者によって情報提供されて明るみに出ましたが、普通は亡くなり方に疑義が生じた患者側が病院側に問い合わせることになります。しかし、専門知識の差があり過ぎて病院側のミスを認めさせるのは容易ではなく、病院側の積極的な情報開示を求めても応じてもらえず、提供されても肝心の部分は隠されていることがほとんどです。しかも、どこがどう辻褄が合わないとか、治療・処置が不手際だということを素人の患者側が見つけだすのは不可能！その結果、患者側勝訴はわずかです。

米国ではグラフに示すとおりで、死因の３番目に医療ミスが挙げられています。

これに対し、日本では･･･

日米の医療水準は同等とし人口比が3倍であることを考慮すると、日本でも８万件以上になるはずです。ところが、わずか約３千件。訴訟社会のお国柄の米国と単純に比較することはできませんが、少なすぎるというのが実感です。脳梗塞を起こした患者が術後まもなく傷口が未だ塞がっていないという状況を確認しないまま（カルテを見ていない！）、漫然と血栓溶解剤を投与してしまったこの医師とそれを隠ぺいした病院に事例に見るように、氷山の一角としての３千件なんでしょう。医療ミスが表に出てこない背景には、日本の医療機関の隠ぺい体質、それを助長する有形無形な環境と雰囲気、それに日本人ならではの裁判沙汰は好まないという感覚があると思います。それを良いことになかったことにする病院が多い現状を改善するのは、自覚に待つだけではなく、政治が介入し、処罰を含めて法整備をすべきです。そもそも自覚するようなタマではないのがプライド高き医師たちです。

2015/10、医療事故調査制度ができましたが、医療ミスが起きたので第三者機関に調べて欲しいという申請をするのは、事故を起こした病院側なので、この制度が機能するはずがなく、有名無実の最たるものです。術後で傷口が塞がっていないことを確認せずに脳梗塞を起こした患者に血栓溶解剤をした明らかな医療ミスも、賠償は認めたものの病院側が医療事故調査制度に基づいて医療事故の報告をしなかったことに関しては報告義務違反は問わないという判決です。

医師会は政権与党の票田なので、彼らが不利になる法律は作らず、体裁だけ整える形式的なものになり、且つ、三権分立なのに判決も（裁判官に）因果を含めたものになってしまいます。日本が一部特権階級に有利な社会から、遍く公平な社会になる日はくるのでしょうか？

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改善されない病院の隠ぺい体質／患者死亡