箱庭。 -2ページ目
あんなにも
あなたを思っていたのに
いざ死んでしまえば
ありがとう
本当にありがとう
天国でも元気でね
としか言えない
今日はじめて
隣町にある
大きなペットショップへ寄った
あたしと
あたしの家族の犬が
突然いなくなったから
買いものに来たのだ
想像していたよりも多く
彼女への贈りものは揃っていた
ずっとずっと奥の向こうまで
沢山の幸せが続いている
あたしの犬が
何も受け取ることができないように
あたしがここへ来ることも
二度とないだろう
決して
なぜか
じっと見つめられている気がする
わたしは振り返る
そこには誰もいない
写真はきらいだ
思い出を切り取るようでいて
なにも残さないから
深めるのでなく
撮るために来たみたいだから
それに
どんなにきれいなものごとも
あたしが感じたままに
写りはしないんだ
けっして
町はずれの空き家に
何台ものトラックが停まり
誰もいない部屋に
ざわめきを連れてくる
居間にはテレビ
キッチンには冷蔵庫
すべてが生まれ変わり
洗濯機は音を立ててわらう
あなたがここへ越してきたので
みんなうきうきしている
木々がざわめき
鳥がさえずり
花は色をつける
シンプルで清潔な場所
凪いだ海の瞳
あなたがここにいると
わたしは暖かい
たとえば
持っているカメラの機種や
最近旅した街の景色や
お勧めの映画の話を
それとなく
さりげなく
聞いてみたいけれど
口にすると
貴方への気持ちが
雪崩のように押し寄せて
何も言えなくなる
私が
私を脱いで
もう一人の私と
向かい合う夜
君と僕をつなぐもの
君と僕をこわすもの
それは「恋愛」ということば
幻想のカーテン
じぶんの出す糸に
からめとられる
かわいそうな蜘蛛
あたしはあたしらしく
そう思っていたけれど
あたしらしく生き続けることは
ただしいのだろうか
本当に

