Dear Miss M

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マチコ・デラックス・・・失礼!間違った。マチコ・プレミアム「Machiko Premium 1975~1982」 「Machiko Premium1983~2011」の発売を記念して、愛すべき歌姫「渡辺真知子」へのオマージュを込めて・・。チョットだけ辛口のレビューも、それは愛情の証しとお許しください。

Amebaでブログを始めよう!





「Show WA」(≒昭和)というサブタイトルと「渡辺真知子を作った水と空気=音楽の故郷」という見方からすれば、モンキーズやGARO(ガロ)、加山雄三、スティービーワンダーやバーバラストライサンド・・・といった選曲があってもおかしくない。


むしろ、彼女が近年よく歌う所謂、洋楽ポップスやジャズのスタンダードは彼女が身近に聴いて育った音楽とは少し違うはずだ。


1990年代の中頃から、周囲からの誘い、あるいはシンガー渡辺真知子を生かす一つの手段としてのスタンダード(ジャズ・ポップス・ラテン)のカバーを歌うという選択があったのだろう。

勿論、それが悪いということではない。そういった音楽シーンでの評価――CD売上げといった数字化できるものではない、純粋に歌唱力や表現力といったミュージシャンとしての力量への評価――が今の彼女を支えているともいえるのだから。


でも、その渡辺真知子の音楽の原風景に見えるのは、幼い頃から少女の時代、プロデビューに至る時代に彼女が体験したであろう、邦洋のフォークロックであり、昭和40年代の黄金期の歌謡曲であったりした筈だ。当時の弘田三枝子や由紀さおりの歌い方(をデフォルメして)マネしていた世代の女の子だったはず。


CD収録となると、邦洋問わず、どうしてもいわゆるスタンダードの選曲になりがちではある。ただ、聴き手が果たしてそれを望んでいるかといえば、疑問である。今回の「Chinese soup」(荒井由実)のように意表を突く選曲こそ「聴いてみたい!」という欲求(勿論、購買意欲も)を高めてくれるポイントではないだろうか。








01 かもめが翔んだ日 (編曲:中路英明)

02 迷い道 (編曲:青木タイセイ)

03 MI TIERRA NATAL (編曲:中路英明)

04 My Way (編曲:中路英明)

05 りんご追分 (編曲:石塚まみ)

06 ブルー (編曲:天野清嗣)

07 蘇州夜曲 (編曲:石塚まみ)

08 CHINESE SOUP (編曲:国府広子)

09 また逢う日まで (編曲:前田憲男)

10 唇よ、熱く君を語れ (編曲:青木タイセイ) 




相変わらずジャケ写の詐欺・・・もとい、魔術師ぶりを存分に発揮しているとかいないとかの噂話はさておき(笑)、「Amor Jazz 2 ~Show WA~」がリリースされた。


レコーディングの進捗状況はブログやFB、ラジオの番組等で目にし、耳にしていたのだが、それにしても前作「Amor Jazz」から1年半少しでの第2弾。「腕の中のスマイル」(2012年10月)以降、2年弱で3枚目の意欲的なペースでのアルバムリリース。

自由に出来る環境(独立、マイナーレーベルへの移籍)を作り上げた意欲と努力には改めて頭が下がる思いだ。


レコーディングメンバーはツアーメンバーでもあるSpecial Egg(石塚まみ、コモブチキイチロウ、加納樹麻、岡部洋一)を中心に、中路“帝王”英明(arrange&trombone)、天野清継(arrange&guitar)、国府弘子(arrange&piano)、前田憲男(arrange&piano)、青木タイセイ(arrange&trombone)、赤木りえ(flute)、大儀見元(percussion)、Eric Miyashiro(trumpet)、そして勿論カルロス菅野(percussion)等々、多くのミュージシャンが参加している。これまでの渡辺真知子のキャリアの足跡をそのまま表しているメンバーだ。全体的には「熱帯ジャズ」色の濃いメンツになっている。


収録曲の構成は、邦洋のスタンダードナンバーのカバーが6曲、お馴染みのオリジナルのリメイクが4曲となっている。



03「MI TIERRA NATAL」

アルバム全体のイメージの元とも言える作品。

中路英明のインストに歌詞を付けた作品で、熱帯ジャズ楽団のボーカリストとして渡辺真知子が参加していたころからのお気に入りで、いつか歌詞をつけたいという思いが20年越しに実現したことになる。

歌詞を付けるにあたって、中路からもらった長文のメールに書かれた故郷への思い「・・・わたしの心と身体は故郷の水と空気で出来ている・・・」というメッセージが歌詞にも表現されている。(※メールには中路の京都の生家や実母のことなどプライベートな部分もあったようで、ラジオではその辺りにも少し触れていた。)

そういった経緯や事情を踏まえて改めて聴いてみると、長らく離れた故郷への想い、という歌詞の内容が一層、普遍的な印象を与えてくれる。

ロスとプエルトリコのFM局で1位を獲得した、という話も曲を聴けば納得の名作。そしてこの作品に目を付けた渡辺真知子の慧眼(けいがん)にも感服する。


04「My Way」

ラインアップにこの超スタンダードな曲名を目にした時、さて一体どんなふうに料理するのか?という期待と(失礼ながら)多少の不安を感じた。

それは奇しくも本人がラジオで言っていたことなのだが、曰く「多分、周囲は声も大きいし(例のごとく朗々と)盛大に歌うだろうと思っているだろう」ということだった。その辺りは彼女の持ち味でもあり、同時にやり過ぎ(歌い過ぎ)≒感情過多になって聴き辛くなる危惧も孕んでいる。


そんな予想を裏切って?ワンテイクで決まったというこのバージョンは抑えの効いたボーカルが大正解だ。自分自身に歌いかけるようなボーカルが狙いだったようで、力を変に抜きすぎていないところも良い。軽やかな天野清継のアコギから始まるアレンジもシンプルで淡々として、どこか牧歌的な印象もあり、この作品にありがちな終末感を消し去って明るさを感じさせる。直前まで英語でのレコーディングを予定していたようだが、これも日本語にして正解だったと思う。



05「りんご追分」

長く歌い続けている作品の一つ。

以前、渡辺真知子と美空ひばりの歌い方の類似点について書かれたブログを目にしたことがある。クラッシック畑の人のようだったが、地声から裏声の使い方、言葉の扱い、リズムの取り方が美空ひばりに酷似していると驚いていた。そのライブでは美空ひばりの作品は歌っておらず、渡辺真知子のライブも初めてだったようで、先入観なしのその印象は的を射ているような気がする。


そもそも、「タメ」る傾向にある渡辺真知子の歌い方と、後年の美空ひばりの歌唱の「イメージ」。特に我々の世代がよく知っている30代後半以降の美空ひばり、イコール、目一杯タメた、クセのある歌い回しの「イメージ」に、渡辺真知子自身も無意識の内に近づけているかもしれないと思っている。



07「蘇州夜曲」

これもライブ等で何度か歌われている。

青山円形劇場でネオ・チンドンの「かぼちゃ商会」と演った時は、その高音の伸びの素晴らしさに思わず鳥肌が立つほどだった。その時よりはキーは低く、その分、今の声質に合ってしっとりとした味がある。



08「CHINESE SOUP」

荒井由実時代のyumingの懐かしい作品。

ポプコンの予選で「ひこうき雲」リリースから間もない荒井由実が、審査員としてアマチュア渡辺真知子の作品を聴き、他の審査員が「直すべき」と指摘したメロディーの付け方に「それはあなたの個性だから直さなくていい」と言い切ってくれたことを「私の事を理解してくれる人がいた」と感激した・・・という話ももう40年前のこと(!笑)。

arrange&pianoは元ミコンズ盟友の国府弘子。ライブでの共演は数多いがレコーディングへの参加は確か初めてのはず。いまだに現?ミコンズ赤木りえのフルート共々相変わらずパワフルだ。

このアルバム全体を通して聴くことのできる抑えめのボーカルは、この作品でも渡辺真知子の声質とマッチングが良く、若い頃には出ない(出せない)適度な“アンニュイ感”もいい味を出している。



09「また逢う日まで」

オリジナルは1971年。この時期に少年時代を過ごした私にとって、この年を挟んでの数年間はいわゆる歌謡曲の成熟期真っ只中という印象がある。その中でもこの作品は、アルバムサブタイトルの“昭和”の象徴そのものである。


御大、前田憲男のコテコテのサンバアレンジも、そもそもサンバテイストのある作品がゆえ、バスドラのサンバキックも違和感は無い。王道過ぎる選曲と言えなくもないが、十分に楽しめる。それよりも、御大は勿論、エリック宮城、本田雅人等々豪華な管のメンツに、ギャラ大丈夫だろうか?予算の心配が・・・。

因みに、尾崎紀世彦のレコードのギタリストは渡辺真知子の1stアルバムでギターを弾いていた水谷公生である。




最後にオリジナルのリメイク4曲について

このところ毎回書いているような気もするが、セルフカバー、リメイクに関しては、あまり度々やるのもどうかと・・・。


今回のリメイクは、02「迷い道」のスペイン語のコーラスはカッコイイいし、10「唇よ、熱く君を語れ」のホーンアレンジも気持ちよくて、出来としてはいいと思うのだが、全10曲中、リメイク4曲というのは果たしてバランスとしてもどうなのだろう?まして、すでに何度かリメイクされているものばかり。正直、新鮮味は無い。

その4曲分のうち、何曲かでもオリジナルの新作が聴きたい・・・と思うのは私だけではないはず。


「Amor Jazz」というアルバムコンセプトにピタリとハマる作品を作るのは難しいかもしれないが、根本要との「腕の中のスマイル」、一青窈への提供作「あたしだって」などで垣間見られるメロディーメーカーとしての力は十分に魅力を感じさせる。むしろ、何故作らないのか、勿体ないと思うほどだ。






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01 生きがい(詞:山上路夫 曲:渋谷毅 編曲:井上鑑)

02 寒い夏(詞・曲:渡辺真知子 編曲:井上鑑)



 「メソポタミアダンス」から1年7ヶ月振りの20枚目のシングルCD。


 同じ洗足学園の先輩、由紀さおり作品(1970)のカバー。(といっても由紀さおりは英文科卒らしいが)。

「夜明けのスキャット」「手紙」に次いで一般的にはよく知られたヒット曲で多くの歌手がカバーしている。

ただ、個人的にはこの作品より「初恋の丘」(1971)のほうが印象深く好きなのだが当時のオリコンチャートではだいぶ差(6位と68位)があったようで、記憶に残る作品とチャート(売上げ)は別物という一つの例だろう。


 で、渡辺真知子のシングル初カバーソング。渡辺真知子自身が望んで実現したカバーのようだが、さすがにこれは「ミスマッチ」だなあというのが正直なところだった。このタイミングで何故、由紀さおり?どうして「生きがい」?というのがイマイチ分からないこともあったが、上手く歌ってはいるものの表面的になぞっただけのように聴こえるボーカル。オリジナルとは違うグッとくる何か、つまり「渡辺真知子ならでは」の部分がほとんど感じられない。本人の歌いたいという思い入れとは裏腹に自分のモノに消化し切れていないもどかしさが残る。



 さて、オリジナルという意味ではC/Wの「寒い夏」が久々の新作であった。

デビュー当時から渡辺真知子を知る吉川忠英(ギタリスト)にこのレコーディングで「マチコもこんな詞を書くようになったんだなあ」と言われたという。ソングライターとしての成長、或いはそれなりの年齢になったことの両方を含めての言葉だろうが、渡辺真知子自身は作品の最終的な出来栄えに関してはレコーディング直後から強烈な不満があったようだ。ただ、不満とは言っても周囲に対してではなく自分自身へのそれだった。

 

 まずコーラス部分の英語詞はポルトガル語にすれば良かったと後悔し、デモを聴いた時点で歌っている声がイメージとは違い子供っぽいことにも落胆したという。ソングライター・渡辺真知子が求めていた「大人の女」を歌手・渡辺真知子はこの時点では表現出来なかったのだ。


 

 デビュー30周年記念アルバム「鴎30」(2007年)で同郷のベーシスト・コモブチキイチロウのアレンジで再録された「寒い夏」を聴くと、1993年当時に渡辺真知子が抱えていた不満がよく理解できる。

最近のFM番組で語った、リ・アレンジのボーカルの「丁度良い重さ」は湿り気=豊潤さと置き換えてもいいだろう。ようやく辿り着いた理想のボーカルの境地は2007年の「鴎30」で味わって欲しい。


 


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メソポタミア・ダンス(詞・曲:美里如彫 編曲:新川博)※ブティック・ジョイTVCFイメージソング

C/W Overswas Call(詞・曲:渡辺真知子 編曲:笹路正徳)





 前作1988年の「哀愁トラベラー」以来、渡米期間をはさんでの3年8ヶ月振りとなる19枚目のシングル。

詞・曲を手掛けた美里如彫は当時、その名前から女性?と思い込んでいたが、実際は身長2m近いゴツいギタリスト(ナイト・ホークス青木秀一)だと分かった時はさすがに驚いた。 


 「Machiko Premium1983‐2011」のブックレットには、この作品のCF起用に至るまでがレコード会社ではなく事務所主導で進められた経緯なども書かれていて興味深い。作品提供に至った経緯は不明だが、青木秀一はソニーのオーディション合格者でもあるので、同じSMA所属であったのかもしれない。その関係で、という可能性は高そうだ。


 TVの深夜枠、特にテレ東あたりでは特に頻繁に流れていた企業のCFで、最初にCMを見た時は渡辺真知子にも久々にスポットライトが当たったなあという嬉しさとちょっとした感慨もあった。ただ、ひと頃の(1970年代後半~80年代初めまでの)「CMソングからヒットへ」という時代ではすでになく、このCMシリーズ自体も短いスパンで入れ替わるようなものだった。この「メソポタミア・ダンス」もTVCMとして流された期間はあまり長くはなかった記憶がある。


 渡辺真知子自身が詞・曲とも手掛けていない作品としては初めてのシングルA面曲(厳密にはCDだからC/Wとなるが)。本人の手に依らない作品というせいもあって、当時はこの作品への思い入れはあまり強くはなかった。むしろ、曲調のイメージや(嬉しいことではあるが)TVCMのタイアップなど若干、前のめり気味に力の入った様子が逆に若干、「ちょっと無理してる」印象になっていたのかもしれない。


 だが不思議なことにライブなどでこの曲を聴く(見る)とちょっと印象が変わるのだ。渡辺真知子のシングルとしてはちょっと異質なタイプであることに変わりはないのだが、ある意味「ダサかっこ悪さ」ギリギリのラインをフラフラと行ったり来たりする(特に当時の)渡辺真知子の象徴のような作品だと(個人的には)感じていたが、発売当時より何年か経ってから、特に20周年のあたり以降「メソポタミアダンス」を歌う時には、余裕というか「こんなのも歌ってたのよね、若い頃には・・・フフッ・・・」的な(笑)貫禄さえそこはかとなく感じられて、悪くない。

 最近はバンド編成や最新アルバムからの選曲ということもあり、ほとんどライブで披露されることはなくなったがギターが入った編成の時は是非聴きたい、ライブ映えのする作品の一つである。


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01 夢をわたる鳥たち (編曲:青木タイセイ)

02 Amar haciendo el amor (編曲:石塚まみ)

03 愛の讃歌 (編曲:中路英明)

04 Speak low (編曲:石塚まみ)

05 Como fue (編曲:石塚まみ)

06 Volare (編曲:森村献)

07 Summer time (編曲:石塚まみ)

08 Cry me a river (編曲:島健)

09 What's new (編曲:島健)

10 Here's to life (編曲:藤野浩一)


※01、03、06 Produced by カルロス菅野

※08、09    Produced by 島健


 島健アレンジ&プロデュースの2作品。


「08 Cry me a river」 「09 What's new」

 さすが島健、いずれの作品も弦アレンジの見事さに脱帽。丁度いい具合に力の抜けた渡辺真知子の低音を存分に使った歌唱と相まって、このアルバムの中でも秀逸の出来でアルバム全体をグッと締めている。

 また「08 Cry me a river」の最後の日本語詞には文字通り、「殺(や)られた!」という感じ。見事に意表を突かれた。渡辺真知子本人の手による歌詞とのこと(アルバムクレジットにその旨記載するのを忘れたのを非常に残念がっていた)だが、本人のアイディアだろうか?あるいはプロデューサー島健の発案か知りたいところではある。


「10 Here's to life」

 渡辺真知子のライブで最初にこの作品を聴いたのは、1999年夏、青山円形劇場でのアンコールだった。ゲストの「かぼちゃ商会」とのコラボも最高に盛り上がった忘れられないほど素敵なステージだった。実は、この青山円形でのライブの直前、同じ事務所の村下孝蔵が亡くなっている。公私ともに付き合いの深い、盟友とも同志ともいえるような関係の村下の死は相当なショックだったはずである。

ライブでの選曲がその事と関係していたのかは分からないが、人生のある時期における「一区切り」をイメージさせるような歌詞と重ね合わせて、ステージ上では彼のことを思い浮かべていたに違いないと感じた。

 本アルバムもオリジナルのイメージに近く、またベストパフォーマンスだったあの夏の青山円形劇場のそれを彷彿とさせる情感と前向きな力強さにあふれている。



 2011年の夏、渡辺真知子がパーソナリティを務めるラジオ番組にカルロス菅野がゲスト出演した。

その時、「是非、熱帯ジャズ楽団をバックにラテンジャズのカバーアルバムを!」というメールを出し、番組で取り上げてもらったことがあった。

 勿論今回の2枚のアルバムの企画前のことで、こちらとしても半ば夢のような、リクエストしておきながら実現はさすがに困難かなと言うのが正直なところであった。

 

 しかしその僅か1年半後、大手を離れ自社レーベル設立等、色々な苦労困難を乗り越えての2枚のアルバムの連続リリースという離れ業には嬉しくもあり、その行動力には頭が下がる思いで一杯だ。

 それには90年代以降のオリジナル作品以外のジャズやラテンを歌ってきたという活動、才能あるミュージシャン達とのコラボが形(CD)として十分に残せていないというもどかしさ、心残りが大きなモチベーションになったのだろうと思う。恐らくファンが思う以上に渡辺真知子自身が「なんとかしたい」と思っていたに違いない。


 今、この「Amor Jazz」は私のPC作業のBGMとして大活躍中である。本来、渡辺真知子の「歌」に対してBGMという言葉を使うのはは似つかわしくない。聴き手に対する強引なまでの訴求力がそれを許さないからだ。それが、日本語詞でないこと、落ち着いたアレンジ・演奏と抑えられた歌唱といったプロデュースの成功でBMG「としても」、耳に心地よいアルバムに仕上がっている。

 欲張りなもので、アルバムがリリースされたばかりだというのに早くも「Amor JazzⅡ」を期待してしまうのは私だけだろうか。勿論オリジナル作品のアルバムとは別枠で・・・というのは(笑)。



musicians


ds:加納樹麻、渡嘉敷祐一、Scott Latham

b:コモブチキイチロウ、納浩一、松本茂

g:天野清継

per:カルロス菅野、伊波淑、岡部洋一

pf:石塚まみ、森村献、島健

horns:奥村晶、青木タイセイ、中路英明、Andy Wulf

strings:徳永友美strings、東京ニューシティ管弦楽団(con:桑野聖)

coro:石塚まみ、カルロス菅野、コモブチキイチロウ、伊波淑


Producer:渡辺真知子

Co-Producer&Director:中山千恵子

Recorded and Mixed by:鈴木英治

Mastered by:鈴江真智子

 

Spanish Direction:Pepi Fernandez

French Direction:Giry Vincent



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01 夢をわたる鳥たち (編曲:青木タイセイ)

02 Amar haciendo el amor (編曲:石塚まみ)

03 愛の讃歌 (編曲:中路英明)

04 Speak low (編曲:石塚まみ)

05 Como fue (編曲:石塚まみ)

06 Volare (編曲:森村献)

07 Summer time (編曲:石塚まみ)

08 Cry me a river (編曲:島健)

09 What's new (編曲:島健)

10 Here's to life (編曲:藤野浩一)


※01、03、06 Produced by カルロス菅野

※08、09    Produced by 島健



 昨年10月発売の「腕の中のスマイル」から3ヶ月(!)の超最短インタバルで、いわば35周年記念の第二弾アルバム。当初はNY録音の構想もあったようだが、オリジナルバンド「Special Egg」と旧知のミュージシャン達のサポートを仰いで作られたカバーアルバム(詳細はCDコメント参照)。


 カルロス菅野プロデュースの3曲から


「01 夢をわたる鳥たち」

 アルバム「TAHIBALI」からのセルフカバー。何故1曲だけオリジナルを?と思ったが、のちの活動の変化のきっかけともなったアルバムの中でもいわば象徴のような作品だけに、そういった思いがあっての選曲であれば納得がいく。アレンジに大幅な変化は無いものの、よりラテンフレーバーのエッセンスを凝縮したような仕上がりになっている。オリジナルにはないメンバーによる終盤のCoro(コーラス)もいい雰囲気を感じさせている。


「03 愛の讃歌」

 これは近年のライブで歌われている作品の一つ。

「愛の讃歌」といえば越路吹雪、越路吹雪といえばかつて真知子バンドのバンマスであった羽田健太郎がFMのライブ番組(1979年頃)で渡辺真知子の良さを(意外とあがり症なのだが)「本番に強い歌手」であることだとほめていたことがある。その時、引き合いに出したのが大スター越路吹雪の話で、やはりステージに上がる前は食事ものどを通らないほど緊張するのに本番でミスをしたことがない・・・という逸話。勿論、大スター並みにステージ度胸が云々、という恐れ多い話ではなくデビュー間もない割には肝の据わった(ように見える)若い女性歌手を持ち上げたということなのだろう。

 その若い女性歌手だった渡辺真知子も考えてみれば「愛の讃歌」を歌っていた頃の越路吹雪の年齢をこえているのだなあと思うと感慨深いものがある。


 年齢だけの問題ではないが、30~40代の渡辺真知子には似合わなかったかもしれない「愛の讃歌」が、このアルバムでは何の違和感もなく聴く事が出来る。情感にあふれた豊潤な印象の渡辺真知子らしい「愛の讃歌」になっている。ただ、冒頭だけちょっと力が入り過ぎの感が・・あの部分だけ2~3割抑え目で歌って貰えればパーフェクトだったかなあ(笑)。


「06 Volare」

 こちらはほぼライブ定番ともいえる作品。30周年アルバム「鴎30」にもCoba(アコーディオニスト)のアレンジで収録されている。Cobaアレンジより若干テンポを落としているが、たたみかけるような歌い方が相変わらず心地よい。さらに時折り聴かせる見事な「巻き舌」もらしさを演出していて思わずニヤリとしてしまう。

 


次いで、「Special Egg」石塚まみ(pf)編曲の4作品


「02 Amar haciendo el amor」

 「この曲、合うんじゃない?」と勧められてカバーしたという、セリーヌ・ディオンのアルバム「Let's Talk About Love」(1997)収録曲。

 カルロス菅野がバンマス時代の定番で、前半を日本語詞に変え(これが意外と合ってる)、ビート感を押しだした、とにかくカッコいいアレンジでライブではかなり人気のあったカバー。これはなんとか形に(CD化)して欲しいと思っていたファンは多いはず。本作ではオリジナルの「まったり」とした雰囲気に幾らか近づけたアレンジになっている。

 オリジナルにはない、ベースとボーカルのユニゾンのフレーズ(以前のライブのそれとは違うが)は、このアルバムでも天野清継のギターソロの後に聴ける。

 かつてのライブで聴いた強烈な印象からすると地味な仕上がりだが、この楽器編成でのアレンジとしては十分満足出来るもので、ライブでもまた是非聴いてみたい作品。


 なお、CDクレジットにも記載されているがスペイン語のチェック(先生)は某有名若手俳優の母親(渡辺真知子オフィシャルブログ参照)。レコーディングではかなりしごかれたようで、若干意識がそちら(発音)に向いているかなという点は否めないが、CD収録ともなればこれはやむを得ないだろう。惜しむらくはもう少し、熟(こな)れるだけの時間があればというところか。


「04 Speak low」

 熱帯ジャズ楽団にボーカルとして参加していた時代(デビュー20周年の頃)、当時渡辺真知子が出演したFM番組で熱帯とのライブ(中野サンプラザだったか?)で歌ったばかりの「Speak low」の音源を流したことがあった。熱帯ジャズの一ボーカリストとしての新境地にやる気満々という雰囲気が伝わり、当然、「Machiko Watanabe」の歌声もCDに収録されるものと思っていたが、レコード会社の壁であろうか、結局そのライブCDに渡辺真知子の歌った作品が収録されることはなかった。

 そんな恨みつらみ(笑)がある訳は無いだろうが、ともかく抑え気味のボーカルがぴったりハマっている。このアルバムの「Special Egg」とのセットでは一番のお気に入りだ。

  

「05 Como fue」

 これもかなり長く歌い続けているラテンのカバー。オリジナルのバンド以外にも色々な場所で、異なるミュージシャンとのコラボを聴いていると、一般的に「あの時のあのバージョン(歌い方、演奏)がこれまでのベストだ!という印象が記憶に残っているもので、渡辺真知子の場合も当てはまる。ただ、例外的にこの「Como fue」に関しては不思議といつ聴いてもあまり印象が(いい意味で)大きく違わないのだ。それは恐らく、この作品(「06 Volare」も同様)がカバーというよりすでに真知子オリジナルとでも言えるほど歌い込み、馴染んでいることの証しだろう。

 

「07 Summer time」 

 この曲は20周年記念アルバム「歌祭り」島健トリオバージョン(ライブ)でもカバーされている。

「歌祭り」でも感じていたのだが、悪くは無いけれどどうも渡辺真知子には合っていない作品なのかな、と思うことがある。本作も多彩なフェイクを織り交ぜて自由自在という感じもあるけれど、技巧に走り過ぎて、かえって全体の印象が散漫になっているようにも思える。聴き手の好みもあるだろうが、若干変化付け過ぎで落ち着かない。歌い方の方向性を少し絞ったほうがいいような気もする。




musicians


ds:加納樹麻、渡嘉敷祐一、Scott Latham

b:コモブチキイチロウ、納浩一、松本茂

g:天野清継

per:カルロス菅野、伊波淑、岡部洋一

pf:石塚まみ、森村献、島健

horns:奥村晶、青木タイセイ、中路英明、Andy Wulf

strings:徳永友美strings、東京ニューシティ管弦楽団(con:桑野聖)

coro:石塚まみ、カルロス菅野、コモブチキイチロウ、伊波淑


Producer:渡辺真知子

Co-Producer&Director:中山千恵子

Recorded and Mixed by:鈴木英治

Mastered by:鈴江真智子

 

Spanish Direction:Pepi Fernandez

French Direction:Giry Vincent



渡辺真知子35th Anniversary 'Amor & Smile'Tour at 六本木stb139(2013/2/3)


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 当日のセットリスト、メンバー等はすでに渡辺真知子公式ブログ「海からのメッセージ」にUP済みということで、こちらへ


 ステージは二部構成で一部は「腕の中のスマイル」二部は「Amor Jazz」、2枚のアルバム中心に行なわれた。



 一部はSpecial Eggとのステージ。「海につれていって」からスタート。

のっけから文句を言うのも気が引けるが、――ベストセラーデビューアルバムの冒頭の伸びやかな作品なのだが――くりかえしのサビ以降の崩し過ぎた歌い方に思わず、「そりゃないでしょ、いくらなんでも」。そんなふうに歌う作品じゃないはず。作品の持つイメージと乖離しすぎ。

 

 「迷い道」ではコモブチキイチロウ(b)、石塚まみ(pf)の二人のコーラスがいい味を出していた。特に石塚まみはバックミュージシャンのコーラスという域を超えている、という表現はかえって失礼にあたるほどのキャリアのあるボーカリストで、このSpecial Eggでももう少しスポットライトを当てる構成もアリだろう。

(「風が待ってる」石塚まみ )。


 「ブルー」はアルバム「腕の中のスマイル」に収録されている多重コーラスバージョン。

「あたしだって」では歌い始めてすぐ、歌詞間違い?で演奏を止めて最初からの歌い直し、というちょっとしたハプニング。これはCDレビューでも触れた点だが、今回のライブでも歌い方(崩し)が気になる。せっかくのメロディーラインの良さが伝わらない。もう少し抑え気味で歌えないものか。


 「腕の中のスマイル」は例によって根本要のボーカル音源に合わせてのバージョン。「ツアーなどで忙しくなかなか難しいがなんとか生のステージでデュエットを実現したい」とのこと。

「愛(いのち)のゆくえ」「Amazing Grace」と続いて、第一部終了。



 二部はSpecial Eggにゲストのカルロス菅野(per)、島健(pf)、さらに3管、4弦を加えての贅沢ないわば、アルバム「Amor Jazz」再現ライブ。


 「夢をわたる鳥たち」「Amar hachiend el amor」「愛の讃歌」と続き、いよいよ島健登場。

「Amor Jazz」の中でプロデュース&アレンジを担当した「Cry me a river」「What's new」での共演が実現。アルバムの中でも際立つピアニストとしての存在感、味のあるアレンジは「さすが島健」と言うほかない。


 島健が退いて、「かもめが翔んだ日」前半をアルバム「鴎30」のスペイン語を含む3拍子バージョン、後半をオリジナルバージョンというスペシャルバージョン(公式ブログ記述より)。

「歌って歌って恋をして」で二部が終了。


 アンコールではゲストミュージシャンを再び呼び込んで「横須賀ストーリー」。音圧、音量の心地よさはホーンセクションが入ったライブならではの味わい。続いて、「唇よ熱く君を語れ」。島健と石塚まみ、二人のピアニストが一台のピアノの前に並んで座っているのもなかなか見られない面白い光景であった。

最後にSpecial Eggをバックに「Here's to life」。悪くはなかったのだが、欲を言えばせっかく弦のゲストが来ていたのだから、この曲も参加してもらえればさらに厚み、深みが出たのではないだろうか。構成上、あるいはリハの関係で出来なかったのかもしれないが、この点だけが残念。

 

 個人的には一部まずまず、二部大満足のライブではあった。

今回のような構成だとオリジナルからの選曲はおのずと限定される。渡辺真知子のライブを「初めて」観に来る人にとっては初期のヒット曲は当時のイメージに近い形で聴きたいと思うのは自然な思いだろう。ほぼオリジナルのアレンジで「歌い方」自体をあまり崩しすぎるのは聴き手の思いに少し配慮が足りないようにも感じる。もっとも、「かもめ~」のように大きなアレンジ変更(3拍子スペイン語バージョン)などはオリジナルとは別の作品といえるほどで、話は別だが。


 今回のライブは、というかアルバム「Amor Jazz」自体がデビュー20周年の少し前から徐々に挑戦してきた新しいジャンル、ミュージシャンとの出会いの成果だ。それは熱帯ジャズ楽団であり、島健トリオである。レコーディングには参加していないが今回のライブで久々に共演となった渡辺真知子バンドの元バンマス宮本大路(sax)の思い(宮本大路ブログ )は、ミュージシャン同士の信頼関係も感じられて一ファンとしても嬉しいかぎりだ。


 毎回のライブにホーンセクションを呼ぶのは難しいというのは、選曲上の制約が出てくるという点で残念ではあるが、近々のライブには実力のある――昨年のさくらホールでのその演奏力、表現力には太鼓判を押せる――若手の弦二人が入るので十分に楽しめるライブになりそうである。
 以下、今後の「35th Anniversary‘Smile&Amor’Tour」の日程。



名古屋ブルーノート 2013年2月16日(土)

渡辺真知子 35th Anniversary‘Smile&Amor’Tour

石塚まみ(p)、コモブチキイチロウ(b)、加納樹麻(d ) 

佐久間大和(vn)、内田佳宏(vc)

モーションブルーヨコハマ 2013年3月9日(土)

渡辺真知子 35th Anniversary‘Smile&Amor’Tour

石塚まみ(p)、コモブチキイチロウ(b)、加納樹麻(d ) 

佐久間大和(vn)、内田佳宏(vc)









 流石に師走ともなれば、来年のことを話しても鬼も笑うまい。というわけで以下宣伝。



渡辺真知子カバーアルバム「Amor Jazz」2013年1月25日発売予定



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先ずは、来年早々(1月25日)発売予定のニューアルバム「Amor Jazz」。

今年10月にアルバムをリリースしたばかりだというのに今度はLatin/Jazzのカバーアルバムがリリースされる。はやくもネット通販サイトに収録曲名も出ているので、否が応でも目に入ってしまう。


01 .Summer time

02. Speak low

03. Amar hacindo el amor

04. Como fue

05. Cry me a river

06. What's new

07. Volare

08. 夢を渡る鳥たち

09. 愛の賛歌

10. Here's to life


※曲順に変更があるようです詳しくは FILE RECORDS ONLINE SHOP


渡辺真知子自身のオリジナル(08)とセリーヌ・ディオンのアルバム収録曲(03)を除けば、まず誰もが知るLatin/Jazz/Chanson(シャンソン)のカバーだが、あえてジャンル分けするまでもない名曲ばかり。

何れも渡辺真知子がライブで歌ったことのある曲ばかりで、CDではどう料理されているのか楽しみ。




ビルボード大阪(2013/1/25)、STB139(2013/2/3)、名古屋ブルーノート(2013/2/16)ライブ告知


Dear Miss M

Billboard-LIVE ビルボードライブ大阪 2013年1月25日(金)

渡辺真知子デビュー35周年記念LIVE~腕の中のスマイル~

石塚まみ(p)、コモブチキイチロウ(b)、岡部洋一(per)



STB139 2013年2月3日(日)

渡辺真知子 35th Anniversary‘Smile&Amor’Tour

石塚まみ(p)、コモブチキイチロウ(b)、斎藤たかし(d )

ゲストミュージシャン:島健(pf)、カルロス菅野(per)他


名古屋ブルーノート 2013年2月16日(土)

渡辺真知子 35th Anniversary‘Smile&Amor’Tour

石塚まみ(p)、コモブチキイチロウ(b)、加納樹麻(d ) 



名古屋の方は早速、タイトルに‘Amor’の文字が入っている。

大阪のライブは「Amor Jazz」の発売当日。名古屋では勿論、大阪でも当然このアルバムからも何曲か披露されるだろうし、10月に発売されたばかりのアルバム「腕の中のスマイル」ともあわせて、選曲には頭を悩ませているのではないだろうか?

ともあれ、新作アルバム2枚分が楽しめる‘お得感’のあるライブになりそう。

またサポートミュージシャンの中でも特に、シンガーソングライターとしてのキャリアも豊富な石塚まみ(p)。キーボーディストとしてばかりでなく歌(声)の魅力で渡辺真知子バンド「Special Egg」を支えている。是非彼女のピアノ&歌声にも注目して欲しい。









Dear Miss M


06「Smile」

 言わずと知れた、スタンダードの王道のような作品。

オーケストラとの共演時も含め、渡辺真知子のライブでも度々歌われてきたお馴染みの1曲。オリジナルのイメージを大きく変えるようなアレンジ・歌い方はやりづらいタイプの作品でもある。


 近年の渡辺真知子の歌い方の特徴というかクセというか、これは洋楽カバーに限らず全般的に言える傾向だが、この「Smile」のように“ソフトに、余裕を感じさせる歌い方”をすることが目立つ。「上手い」という印象に異論はないのだが、果たしてそれが渡辺真知子の本来の魅力を伝える歌い方かというと疑問である。本来、ひたむきで懸命に歌う様子が聴き手を惹きつけてきた歌手であり、多少荒削りであっても情感あふれる歌い方が魅力のはず。表面的な技巧とか、時おりみせる“フワッ”と力を抜いた歌い方はそのキャリアと共に身に付いてしまった悪い癖のように思えてならない。


 作品の問題ではなく、こういった歌い方に(どうしても)なってしまうのであれば、こういうタイプの作品は彼女に合っていないように思える。



07「Amazing Grace」

 これも近年のライブのアンコールでの定番カバー。

「Smile」に比べ、こちらは渡辺真知子向きのタイプの作品だろうと思う。

歌い続けるうちに微妙に崩し方、フェイクのニュアンスも変化して現在の歌い方≒CD音源に至っている。

ステージ毎、歌い回しが変わるしのは当然だが、以前はもう全体的に少しストレートな歌い方で崩し方も少なめであった。フェイクも「ここぞ」というところで利かせるからこそ、であって最小限にとどめたほうが効果的だろう。また、CD(スタジオ録音)ということで、どうしても歌い方が丁寧になり過ぎてしまう傾向(ある程度やむを得ないが)もあって、ライブでの良さが完全には出し切れていないのが残念。


08「展覧会の絵」

 ELPの「展覧会の絵」を聞いてこれを歌いたいと思ったのは高校3年(※本人談)


 「題名のない音楽会」(1999年)で聴いたのが初めてだったが、その後自身のバンドをバックにライブでも実現させ、そして最初の「歌いたい」という思いから40年近く(!)ついにCDに収録するまでに至った。

 

 いや、何が凄いってその持続力、行動力、周囲を巻き込むパワー。TVでの披露は企画とはいえ、言い出した本人にかかるプレッシャーも大きかったろうし、また自身のバンドでは、この作品をとり上げるためにメンバーを説得し、時間をかけてバンドアレンジしてもらって、そもそも何より演奏(実現)可能なメンバーであるという前提もある。

 

 そして今回のフルオーケストラ70名のCD化。今どき、レコーディングにフルオーケストラなんて一握りの金銭的余裕のあるビッグネームですら、滅多にしないだろうに・・・。しかし、恐らくこれこそが渡辺真知子が温めていたの理想の一つの実現であったに違いない。


 この「展覧会の絵」がラジオ等のメディアではオンエアされる機会は或いは殆ど無いかもしれないが、

「アマチュアの純粋さを失わないプロフェッショナル」という、ミュージシャンにとっての理想を実際に形にしているデビュー35年のシンガーソングライターの存在は知られるべきだろうし、評価されるべきではないだろうか。


09「歌って歌って恋をして」

 デビュー20周年記念用に書き下ろした曲(作品としてのレビューは別の機会に譲るとして)、これままた最近のライブでの定番。前作のアルバム「鴎30」にも収録されている。


 わざわざ大御所に大枚叩いて、あまり変わり映えのしないアレンジを頼まなくても・・・おっと、これは独り言なので聞かなかったことにしてもらうとして・・・いや、皮肉ではなく、アレンジは素直で嫌味がなく聴きやすい仕上がりになっている。しかし、これも前アルバムに収録したものを敢えてまた何故という疑問が湧く。本人が気に入っている作品というのは分かるのだが、これまでCD化されたものでは20周年ライブでの歌・アレンジのほうが良いと感じるし、聴き手にとっての目新しさ(新鮮さ)も選曲の面で多少は考慮すべきではないだろうか。



10「横須賀ストーリー」(ボーナストラック)

 「山口百恵トリビュートセレクション」(2012/10発売)に収録。 

基本的に “自分のヒットソングの(セルフ)カバーは止めた方がいい” そして “ヒットソング以外のセルフカバーと他人の作品のカバーはとりあえず何でもアリ” だと思っている。 

 

 いわゆる「カバー」一般に対し「オリジナルのイメージが損なわれる」というカバーされる側に立った否定的な見方、「オリジナルのイメージを壊さないように」というカバーする側の配慮。どちらも分からなくはないけれど、ヒットソングとなって手を離れてしまったら、どちら側もある意味の「覚悟」が必要かもしれない。

 

 いかように料理されるか分からないし、どのような出来映えになるかは予想もつかない。ただ、不出来で非難されるのは「する側」なのだから、大事なのはカバーする側の意気込みであって、今回のような “企画ありき” のカバーであればなおさら、カバーする側は自身の今現在の立ち位置をハッキリとさせることが必要だろう。


 で、サルサになった「横須賀ストーリー」。

ここ10年以上にわたり、「熱帯ジャズ楽団」「松岡直也」等々多くのラテン系のミュージシャン達とのつながりを深めてきた中でのこのアレンジ。こういった渡辺真知子の近年の音楽志向が一般の音楽ファンにどれほど知られているかというと疑問ではあるが、こういったアプローチになった必然性が理解出来るという点でこれは十分に「アリ」なカバーだと思っている。

 

 頭サビの「これっきり~もう、これっきりですか」の歌い方が少し平板な印象を受けるが、それ以外では味のあるボーカルを聴かせてくれるし、バンドメンバーによるCoro(コーラス)も雰囲気を盛り上げている。35周年のライブではレコーディングメンバーをゲストに呼んでの迫力あるステージングを披露してくれた。

 最近では渡辺真知子オリジナルバンドでホーンを入れることは久しくやっていないが、コスト面で困難とは承知の上で、是非近い将来にホーン+コーラスを従えてのリッチでゴージャスな派手目のライブを実現して欲しいものだ。

     


※参加ミュージシャン
Dear Miss M
Dear Miss M

01 かもめが翔んだ日 (詞:伊藤アキラ 曲:渡辺真知子 編曲:船山基紀、藤野浩一)

02 愛(いのち)のゆくえ (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一)

03 腕の中のスマイル (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一) 

04 ブルー (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一)

05 あたしだって (詞:一青窈 曲:渡辺真知子 編曲:石塚真美)

06 Smile

07 Amazing Grace

08 展覧会の絵 (編曲:奥慶一、藤野浩一)

09 歌って歌って恋をして (詞、曲:渡辺真知子 編曲:服部克久)

ボーナストラック

10 横須賀ストーリー (詞:阿木耀子 曲:宇崎竜童 編曲:青木タイセイ)



Producer:渡辺真知子


Co-Producer&Director:中山千恵子

Recorded and Mixed by:鈴木英治、伊東俊郎

Mastered by:鈴江真智子




Dear Miss M

 2007年、30周年にリリースされたアルバム「鴎30」から、5年と8ヶ月振りのアルバム。

新曲及び企画カバーの4曲(02、03、05、10)を除けばまさに集大成というか、これまでステージ等で披露しながらCD化されなかったものを網羅した、贅沢なアルバム。
 ただ、この贅沢という言葉、渡辺真知子自身にもそれなりの重圧がかかりそうな言葉ではある。

何故ならこの35周年のアルバムはデビュー以来在籍していたソニーミュージックレコーズ(最終的な所属はソニーミュージックダイレクト)から離れ、自社レーベル(Kamome Mucic)を立ち上げての第一弾。やりたいことが出来る反面、コストは自分持ちという現実もあるからだ。



01「かもめが翔んだ日」

 自社名にすら入れてしまったように、もはやもう切り離せなくなってしまった感のある作品。

編曲の藤野浩一とこれまで定期的にやってきたオーケストラコンサートでのバージョンをCD化した形。 申し訳ないが、アレンジ云々という以前に、すでに食傷気味である。昔(デビュー当時)より今の歌い方のほうが好きという方もいるようで、そういう方にはアリなのかもしれないが正直なところ、リ・アレンジしてCD化するのはもう考えた方がよさそうだ。



02「愛(いのち)のゆくえ」

 出だしのメロディーを聴いて、「あれっ?どこかで聴いたことがあるような・・・」と思った方は10年位前(デビュー25周年の頃)のライブに頻繁に足を運んでいた熱心なファンかもしれない。

当時、2~3度ライブで歌われてそれっきりお蔵入りしていた作品のAメロ部分だけがこの新曲に使われている。お蔵入りしていた曲も決して悪くはなかったので、それはそれとして世に出して欲しかったなあという気もする。

 

 昨年の震災を念頭に作られたこの新曲は、渡辺真知子らしくグイグイ引っ張っていくような強引さが頼もしい。こういったストレートで前向きな感情表現は好き嫌いが分かれるところかもしれないが、この作品に関してはこういう表現スタンスもありではないかと思っている。全ての人が一様にとはいかないが、この前向きさ、力強さに勇気づけられることもあるのではないだろうか。勿論、言葉を投げ掛ける側の真摯な態度と人柄が受け入れられることが前提ではあるが。


 ただ、一つだけ、2番の歌詞に出てくる「たられば繰り返す夜は・・・」の「たられば」がどうも気になる。

唐突に出てくるこの「たられば」は便利な言葉ではあるが、私には“大雑把な省略語”のイメージが強い。この歌詞の内容としては直接的すぎるというか、品が無いというか、繊細さが感じられない。言葉の選択として少し安直ではなかったか?「後悔の念」を表す別の言葉を模索すべきではなかったろうか。



03「腕の中のスマイル」

 故尾崎紀世彦とのデュエットの約束は残念ながら果たされなかったが、代役として一肌脱いだのがスタレビの根本要。かつての渡辺真知子バンドのバンマス&キーボーディストであり、それ以降もレコーディングやステージで繋がりの深い光田健一がスタレビに在籍していたこともあり、すんなり決まったのかと思いきや、実際は意外と遠回りしての結論だったようだ。

 

 若干の歌詞の手直しはあったようだが、まるで当初から根本要をパートナーに想定していたかのような2人の馴染み具合には驚かされる。元々、2人ともいわゆる「美声」とは少し違った声のタイプ、ある意味声質も含め「似ている・近い」と思っていたので、同じタイプの掛け合わせは果たしてどうなのか?興味津々であったが、特に根本要の声質と作品イメージが違和感なく、しっくりしている。むしろ渡辺真知子の声より合っているかも、と感じるほど。


 ちなみに、アクが強くてデュエット不向きでは?と思われている渡辺真知子だが、実際のライブでこれまで聴いた「EPO」「アルベルト城間(ディアマンテス)」「尾崎紀世彦」らとのデュエットはいずれもが極上のそれで、渡辺真知子の寄り添うようなユニゾン、グッと支えるような低音部でのハモり。これらはTV等では味わえない、ライブでこその魅力。根本要とのデュエットも(実現すれば)ライブではCD以上に迫力を増すこと間違いなしだろう。 


 この作品も歌詞に関して気になる箇所がある。2番の冒頭「本当の強さは強いほどやさしさが違う 見えないくらい」の一文で、言わんとしていることは分かるのだが、少し分かりずらい。「強さ・強い」のダブりも気になるし、これも別の表現があったのでは?と感じる。


 余談だが、先日の35周年の渋谷のライブMCでは――BSの歌番組で共演した鈴木雅之にそれとなくデュエットの誘いをかけたところ、鈴木雅之は番組MCの大友康平に向かって「キミ、お相手して差し上げなさい」――うまいこと逃げられた(断られた?)という裏話を明かして客席の笑いを誘っていた。



04「ブルー」

 20周年の頃に光田健一アレンジで録音していたアカペラ多重録音の、まさに蔵出しの「ブルー」。

よって、40歳前半の渡辺真知子のコーラスに今現在の渡辺真知子のボーカルが乗っていることになる。

当時、夜中遅くまでかかって録音したというこのバージョン。何度重ねたか分からないという程、凝ったこの音源からはコーラス好きの、まるでアマチュアシンガーが純粋に音を楽しんでいるかのような情景が浮かぶ。いつまでも尽きない旺盛で貪欲な好奇心が渡辺真知子の音楽人生を支えているのだろうなあ。



05「あたしだって」

 一青窈のアルバム「一青十色」に収録された、いわば提供作品のカバーとなる。作詞は一青窈。

今回このアルバムに収録された新作(曲を書いた3曲)の中では間違いなく一番の出来。言葉に無理なく自然にメロディーが乗り、力の抜けた、それでいて印象に残る歌詞とサビメロ。

まあ、渡辺真知子の「真骨頂」とは言わないまでも、メロディーメーカーとしての才能もまだまだ捨てたもんじゃないというのは証明出来ただろう。

 

 渡辺真知子のこれまでの提供作品は以前紹介したように、そのキャリアに比して極端に少なく、残念なことにその出来もイマイチというものが多い。その理由の一つに歌詞の質の問題もあることにも言及したが、それらとは対照的にこの作品で渡辺真知子のメロディーラインを引き出したのは間違いなく、一青窈の書いた良質な歌詞である。調べた限り作曲はせず作詞のみを手掛けているということと、数曲のヒットソングの情報以外に、その能力について語れるほど一青窈を知っている訳ではないが、全ての歌詞を手掛けていることからも歌詞(言葉)に対するこだわりも持っているようだし、何よりメロディーが付けやすい歌詞を書けるという作詞家としての一つの重要な才能を持ち合わせているのは間違いない。


 渡辺真知子バージョンは一青窈オリジナルバージョンに比べてかなりテンポを落として歌っている。

遊び心も感じられる歌詞ときっちり生真面目なメロディー。それをさらりと歌う作詞者、噛みしめるように歌う作曲者。それぞれのバージョンの聴き比べも面白い。

レコーディングでは編曲、Pfの石塚まみ、渡辺真知子2人とも偶然にも「蘇州夜曲」のようなイメージを描いていたそうで、実際ピアノのニュアンスがなるほどと思わせる。


 ただ、歌い方でどうにも気になることがある。それは後半以降の感情を入れすぎた歌い方。

ライブではいざ知らず、CDでのこの歌い方はさすがにちょっと「くどい、やり過ぎ」としか思えない。渡辺真知子本人は当然これで良しと思って歌っているのだろうから、結局Co-プロデューサー兼ディレクター中山千恵子の判断の範疇になるだろうが、客観的にみて本当にこれでいいと思ったのだろうか?良い作品なだけにもう少しさらりと抑えめに歌って欲しかった。


                                                          つづく



01 かもめが翔んだ日 (詞:伊藤アキラ 曲:渡辺真知子 編曲:船山基紀、藤野浩一)

02 愛(いのち)のゆくえ (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一)

03 腕の中のスマイル (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一) 

04 ブルー (詞、曲:渡辺真知子 編曲:光田健一)

05 あたしだって (詞:一青窈 曲:渡辺真知子 編曲:石塚真美)

06 Smile

07 Amazing Grace

08 展覧会の絵 (編曲:奥慶一、藤野浩一)

09 歌って歌って恋をして (詞、曲:渡辺真知子 編曲:服部克久)

ボーナストラック

10 横須賀ストーリー (詞:阿木耀子 曲:宇崎竜童 編曲:青木タイセイ)



Producer:渡辺真知子


Co-Producer&Director:中山千恵子

Recorded and Mixed by:鈴木英治、伊東俊郎

Mastered by:鈴江真智子