「シズちゃん」
よせばいいのに臨也はいつも静雄のことをそういう。
もちろんわざと。
わざとじゃないと男に、同性に、会えばいつも喧嘩という殺し合いを始める相手にちゃん付けをするかっての。
私はいつものことかとひとつため息をついてここ、池袋のど真ん中でそっと臨也から離れた。
離れないと巻き込まれて死んじゃうし。
なんたって今目の前にいるのは池袋最強・喧嘩人形・平和島静雄がいるんですもん。
臨也がいなければ私にも笑みをくれるけどいますからね、こいつが。
「臨也、先行っとくね」
「んーご苦労さん。気を付けて」
「・・・・」
ひらひらと手を振って駆け出した。
それと同時に。
どぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉんっっっ!!!
・・・相変わらずすごい。
臨也にたいしては手加減がないよ静雄。
とりあえず本屋によれば門田とよくいる遊馬崎と狩沢がいた。
「やほー」
「あっ!おひさしぶりっすね」
「だねー今回は何がおすすめ?」
本屋にいけば必ず彼らに毎回こういう。
「今回はっすね。この新刊っすかね」
「そうそうっ!あの大人気作を生んだ―――」
云々。
おすすめを教えてくれるのはいんだけどネタバレは勘弁してくれ。
そう思いつつも買った本は毎回面白くさすがヲタクだけあると思う。
「自分ら今からロシア寿司で昼飯食うんっすけどどうですか?」
「ドタチンもいるよー」
「門田かーこの頃会ってないなぁー」
行こうかなと思っていると突然携帯が鳴った。
【折原臨也】
「以外と早かったね」
「え?」
「何々?彼氏??リア充??リア充??」
「さぁね。あ、やっぱ今回はパス。門田によろしく言っといてー」
すすめられた本を片手に隅に移動して電話を取る。
「もしもし?どうだったー?」
『んー?取引終わったよ』
「そ。んじゃ静雄は?」
『シズちゃんはダンプにひかれた』
あっさり言う。
「あそ。んじゃ大丈夫か」
そして私もあっさり言う。
だってあれだけで死なないの知ってるし。
ところで。
「なんで臨也は静雄をシズちゃんていうの?」
『なに突然』
「んにゃただの好奇心。だって明らかに神経逆なでしてるじゃん」
『当たり前だよわざとだし』
「逆なでるにしてもほかのやり方があるでしょあんたには」
『うーん。そうなんだけどねぇ』
「?」
突然黙り込んだのでひょっとすると見つかったかと思った。
静雄に。
『だってシズちゃんあからさまなのじゃないとわからないじゃん』
「・・・・」
たしかに。
「ねぇ臨也」
『ん?』
「じゃあさ私今度からあんたのことイザイザって呼んでもいい?」
『は?』
その反応ごもっとも。
「いやさぁ、イザイザくらい言わないと私の気がすまないというかさぁ」
『は?ねぇなんの話??』
「じゃあね――イザイザ」
『ちょっ―――』
ぶつっ。
勢いよく切った。
本当に気が済まない。
それは私が臨也が好きだからだろうと思うし。
いつまでたっても私の気持ちに気づかないから―――いやもしかしたら気づいてるかも。
彼だけの呼び方。
臨也だけの呼び方。
それがどうしてもこんなに―――。
今はどうでもいい。
今は臨也と落ち合うのが先だと気持ちを切り替えて本を購入して店を出た。
ー endー