「一さん」


そう呼べるようになったのはいつだろうか。


寒い寒い北の土地。


彼が眠るこの土地で。


彼が嬉しそうに笑ったのはいつだろうか。


「一さん」


そういえば帰ってくる言葉。


『千鶴』


今。


その声を無性に聞きたい。


ずるい。


「ずるいですよ、一さん。こんな――」


こんな置き土産を残していくなんて。


湧き上がる嘔吐感。


無意識になでてしまう腹。


はらりはらりと冷たい風が頬を伝う泪をさらっていく。


どうか。


どうか私もつれてって。


―――そういえなくなってしまった。


生きたいと願ってしまった。


「――待っていてください」


必ず。


貴方の元に戻ってきます。


だから。


だから――。


『待っている』


聞こえるはずもない声。


けれど。


だから。


彼女は顔を上げて生きていく。



「シズちゃん」


よせばいいのに臨也はいつも静雄のことをそういう。


もちろんわざと。


わざとじゃないと男に、同性に、会えばいつも喧嘩という殺し合いを始める相手にちゃん付けをするかっての。


私はいつものことかとひとつため息をついてここ、池袋のど真ん中でそっと臨也から離れた。


離れないと巻き込まれて死んじゃうし。


なんたって今目の前にいるのは池袋最強・喧嘩人形・平和島静雄がいるんですもん。


臨也がいなければ私にも笑みをくれるけどいますからね、こいつが。


「臨也、先行っとくね」


「んーご苦労さん。気を付けて」


「・・・・」


ひらひらと手を振って駆け出した。


それと同時に。


どぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉんっっっ!!!


・・・相変わらずすごい。


臨也にたいしては手加減がないよ静雄。


とりあえず本屋によれば門田とよくいる遊馬崎と狩沢がいた。


「やほー」


「あっ!おひさしぶりっすね」


「だねー今回は何がおすすめ?」


本屋にいけば必ず彼らに毎回こういう。


「今回はっすね。この新刊っすかね」


「そうそうっ!あの大人気作を生んだ―――」


云々。


おすすめを教えてくれるのはいんだけどネタバレは勘弁してくれ。


そう思いつつも買った本は毎回面白くさすがヲタクだけあると思う。


「自分ら今からロシア寿司で昼飯食うんっすけどどうですか?」


「ドタチンもいるよー」


「門田かーこの頃会ってないなぁー」


行こうかなと思っていると突然携帯が鳴った。


【折原臨也】


「以外と早かったね」


「え?」


「何々?彼氏??リア充??リア充??」


「さぁね。あ、やっぱ今回はパス。門田によろしく言っといてー」


すすめられた本を片手に隅に移動して電話を取る。


「もしもし?どうだったー?」


『んー?取引終わったよ』


「そ。んじゃ静雄は?」


『シズちゃんはダンプにひかれた』


あっさり言う。


「あそ。んじゃ大丈夫か」


そして私もあっさり言う。


だってあれだけで死なないの知ってるし。


ところで。


「なんで臨也は静雄をシズちゃんていうの?」


『なに突然』


「んにゃただの好奇心。だって明らかに神経逆なでしてるじゃん」


『当たり前だよわざとだし』


「逆なでるにしてもほかのやり方があるでしょあんたには」


『うーん。そうなんだけどねぇ』


「?」


突然黙り込んだのでひょっとすると見つかったかと思った。


静雄に。


『だってシズちゃんあからさまなのじゃないとわからないじゃん』


「・・・・」


たしかに。


「ねぇ臨也」


『ん?』


「じゃあさ私今度からあんたのことイザイザって呼んでもいい?」


『は?』


その反応ごもっとも。


「いやさぁ、イザイザくらい言わないと私の気がすまないというかさぁ」


『は?ねぇなんの話??』


「じゃあね――イザイザ」


『ちょっ―――』


ぶつっ。


勢いよく切った。


本当に気が済まない。


それは私が臨也が好きだからだろうと思うし。


いつまでたっても私の気持ちに気づかないから―――いやもしかしたら気づいてるかも。


彼だけの呼び方。


臨也だけの呼び方。


それがどうしてもこんなに―――。



今はどうでもいい。


今は臨也と落ち合うのが先だと気持ちを切り替えて本を購入して店を出た。



                                   ー endー

たまに。


本当にたまに思う。




―――こいつは本当に情報屋かと。




「折原さん折原臨也さん、ちょっといい加減にしてください」


私に跨る男性に機械的に言ってみた。


すると―――。


奴、情報屋さんは。


「え?なんで」


「・・・・」


ふつうに言いやがりました。


私の服をめくりあげながら。


なんで?


そんなのわかってんだろう。


折原さん。


情報屋さんよぉ!!


いい加減にしてくださいっ。


ことの発端が臨也のプリン食べちゃっただとしても!


やりすぎってわかってる?!


ねぇ!


「こらこらこらこらこらこらこら!!!!!!」


あわててブラのホックをはずそうとしている臨也の手を死ぬ気で止める。


「だいたい!プリンそこまで好きじゃないでしょ?!」


「うん。むしろ君の好物だよね」


「そうですね!」


ぐぐぐぐっ。


どうにかして私の処女←を守ろうと頑張る。


これでも処女ですけど、なにか?


とにかく!


「とにかくっどいて!!」


「やだ」


「なんでよっ」


「君を襲うため?」


・・・・なぜに疑問形?!


やめて!


しょっ、シズちゃんにヘルプミーするよっ?!


なんて思ってても。


臨也の手がするする私の服に侵入してきて。


あ。


これはやばい。


「・・・・やばい」


「ん?」


さらりと流れる黒髪。


本当やばい。


や。


この状況がじゃないよ?


いや。


やばいけどね。


でも。


気づいちゃった。


何にって。


コイツについて。


「・・・臨也」


「んー?」


やわらかいこの手の感触は胸から感じてますけど?


「こんな状況で恋って生まれるんだね」


ぴたっ。


止まった。


臨也の手が。


「臨也」


「・・・」


「臨也」


「うん」


「や。別にどうこうしたいって感じじゃないから」


「そ」


だから。


「だからさぁ」



























































































































「この手どけて?」








そのあと。


さんざん泣かされました。


けどっ!


ちゃんと処女は守ったよ!!


                                -endー