KUKI Laboratory

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私立高等学校の非常勤講師としても働く大学院生。その仕事と研究のメモ。専門は日本近代文学、とくに明治末期・大正期の谷崎潤一郎小説。他に興味関心があるのは90年代のアニメ作品、ジブリ製作のアニメ映画です。

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分析するに値する作品ではあったけど、この既視感ゆえに評価しにくい。「エヴァンゲリオン」「少女革命ウテナ」「魔法少女まどか☆マギカ」「輪るピングドラム」あたりの精神分析的な要素が、なんとなく感じられて、そういうのは今さらな感じがするし、ジブリでやる仕事ではないような気がする。「子供のための物語をもう一度」と宣言するわりには、先行作品にぶら下がって、高いところから子供たちを見下ろすような、そういう作品になってしまった感じがする。
百合要素は認めて...も差し支えはないと個人的には思っているけど、碇シンジ/渚カヲルの女性バージョン、つまり、境界例的な人物と、それとは異和的な他者、自分からは遠く離れた理想としての他者との淡い幻想として見ることができる。
幻想というのがしっくりきて、百合的な関係がヘテロセクシャルによって解消するあたりが、今、同系の作品としてみられている「アナと雪の女王」とは逆行している。男に奪われることによって、現実に目覚め、理想を「思い出」の箱に納めようとする。だから、永遠に貴女のことを「覚えている」という宣言は、「思い出」=「過去」として、いったん箱に納め、私を愛してくれた人を永遠に保存することで、これからを生きようとする、可能性の物語として開かれている。
ただ、こうして見たときに、マーニーが誰かという「答え合わせ」は蛇足で、ああいう全てを教えてしまうあたりの下手さは辟易した。そして、作中人物の言葉による説明のくどさ。空白を残さず、全部埋めようとするあたりのケチ臭さが、どうも気に入らない。そこらへん、庵野秀明や幾原邦彦はうまい気がする。米林監督は先行作品にぶら下がるわりには、変に優等生で、僕はそんなに変なことはしませんよ、全部キッチリやります、というつまらなさがあるかな。そんなに媚を売らなくてもいいような気がするんだよなー。
でも、それが功を奏して、わかりやすいがゆえに世間的にはウケるのだろうけど。謎解きを終えたときに生じるカタルシスはあるだろうけど、でも「泣ける」というのは、なんとなく敗北宣言な気がする。ある程度、展開は予想がつくし、予想通りの答えを出されても、泣く気にはならない。一昔の下手なドラマの演出レベルの話で、設定がわかりやすすぎて物足りない。もう泣けないんですよ、あれくらいの演出じゃ。
マーニーとの耽美な関係をもっと丹念に描くことに集中すればよかったのに。ぱっとしない地味な序盤と、ラストのマーニー正体解説は本当にいらないわ。謎を残して読者に想像させるくらいの余裕がないのかな、この監督は。正体不明の少女という方が、神秘的で好きだけどな。構造に気をとられ、せっかくの同性愛的な美しさが表現しきれていない気がする。

その他、貨幣と愛の交換不可能性、貨幣に対する恐怖など、興味深い点はあるにせよ、上記の通り全体的な評価は低い。背景美術の荒さも減点対象。ジブリでなかったら、すごくいい作品だったけどね。僕好みのテーマではあるので。

ダブルヒロインが可愛いから、おまけで評定「3」。美形のメンヘラっていいよね。杏奈はわりと気に入りました(笑)。

あまりにも辛口で語りすぎたので、それでもやっぱり捨てきれない、この作品に対する好きなところを、僅かばかり語って終わりにします。
孤独のなかで生きていると自覚する杏奈には心の拠り所がない。そこで、理想像としてのマーニーは、自らの不安や生きづらさを慰める唯一的な存在として愛の対象となる。
精神的に崩れてしまいそうな杏奈と、それを癒す理想の存在としてのマーニー。以前からずっと知っている、というマーニーの言葉は、「私はあなたである」という含意にも聞こえる。
それでも、自分の弱さを語ったのちに、マーニーの弱さを知ったとき、杏奈はマーニーに対して孤独の理解と共感によって愛を感じる。ここらへんの愛や、少女の裸足へのフェティッシュは本当に好きです(笑)。
自分から遠く離れているようで、しかし、その繊細さを知るとき、自分と似ているように感じる。「あなたは私である」とここで返答することが可能だったかもしれない。だから、自分の孤独を慰めるように、他者の繊細さを癒そうとする。愛で満たしてあげるために「私もマーニーが好き、いままで会った『誰よりも』」「もちろんよ、許してあげる!あなたが大好きよ!」と言う。その言葉は耽美的で、この作品のなかでもっとも深く印象に残ったかな。マーニーを愛するということは、実は、自分自身を愛するということに他ならない、ということだろうと、結論付けておきます。

あれ?やっぱ評価「5」でもいいかな?(笑)