注:本当は、セフレ期間中にも幸せな時間が沢山あったんですけど、そういうエピソードをあまり本編にいれてあげられなかったので、後日談を番外編として書いてみました♪
これまでのお話。
1話 2話 3話 4話 5話
6話 7話 8話 9話
これで、このシリーズはおしまいです。最後まで読んで頂きありがとうございました。
いつかこのお話に出てくるジヨンくんの恋物語も書いてみたいな♪
だけど、まずは、予告通りヨンベ編を書きますので、そちらもよろしくお願いしますm(__)m
名古屋でのコンサートのあと、せっかく長いお休みをもらっていたのに、まさかヌナと恋人同士になれると思っていなかった俺は、みっちり予定を詰め込んでしまっていた。
まだ恋人になる前、アメリカで遊んでいるところを見せつけてヌナを嫉妬させてやろうと思っていたバチが当たったのかな…。時差もあるし、ヌナも忙しい人だから、連絡はほとんどLINEで、声さえも聞けない日々。俺はヌナの為にセルカ棒まで駆使していっぱいインスタ更新してるって言うのに、
ヌナは恥ずかしがって写真も送ってくれない。
クラブではしゃいでみても、一人になった時、寂しさが増すだけだった。
今までだって、ヌナと長い間会えないことはあったのに、これまではどうして堪えられていたのか不思議なくらいだ。何をしていても頭の中には常にヌナのことがあった。
(ヌナは違うのかな?寂しいなぁ。でも、クリスマスには会える)
元々、イブの予定は、ヌナの為に開けていた。突然いってびっくりさせようと思って。
恋人になれたので、少し予定を変更して二人でささやかなパーティーをすることにした。
最近はそのことばかり考えて浮かれている。
勘のいいジヨンヒョンには、早々に気付かれて、笑われてしまった。
でも、気にしない。だって、恋人になって初めて一緒に過ごすクリスマスなんだ。浮かれて何が悪いんだ。
俺は、その日を指折り数えながらアメリカでの予定を消化し、直行便で日本まで向かった。
「ヌナ、ただいまー♪」
俺は予めもらっていた合鍵でヌナの部屋に入った。お互いに忙しいし、持っていた方が便利だろうって、ヌナが送ってくれたんだ。
そんな些細なことでも、二人の関係の変化を感じるようで嬉しい。
けど、舞い上がりながら部屋に入った俺は、玄関に並べられた靴を見て青ざめる。
そこには、あるはずのない男物の靴が置かれていた。それも、ものすごーーーく、見覚えのある靴が。
俺は、かーっと頭に血が上って、靴を脱ぎ捨てると、部屋の中にかけ上がった。
「何やってるの!ジヨンヒョン!」
ジヨンヒョンは、ソファーでくつろぎながら、ヌナとお菓子を食べていた。何だか『女子会』って雰囲気だけど、そうやって気に入った子に取り入るのが上手い人だってことを俺はよぉーーーく知っている。
「どうしてヒョンがヌナの部屋にいるんだよ!」
俺はヒョンを睨み付け、韓国語で怒鳴った。それにも関わらず、ヒョンは片言の日本語でのほほんと返事を返してくる。
「えーっとねぇ、シブヤであって、ついてきたんだよ」
何だよ、それ!?意味わかんないんだけど!俺の彼女だって知ってて、どうして部屋までついてくるわけ?ヌナがジヨンヒョンの誘惑に乗らない女の子だってことは、立証済みだろ?大体、そんな可愛い子ぶったしゃべり方でヌナの気を引けると思ったら大間違いなんだからな!
あーー、もう、ジヨンヒョンなんかにヌナのこと紹介するんじゃなかった。こんな人にヌナのこと誘惑してって頼んだなんて、何かあったらどうするつもりだったんだよ!俺の馬鹿!馬鹿!馬鹿!
色んなことに腹が立ちすぎて、俺はもう、何に対して腹をたてているのかわからなくなっていた。
そんな俺を見かねたのか、宥めるようにヌナが言った。
「スンリ。そんなに怒らないで。取材で渋谷に行ったら偶然ジヨンに会って、私が誘ったのよ」
「ど、どうしてそんなことしたんだよ!」
軽い女じゃないって、ヌナ言ってたのに。彼氏の先輩と密室で二人きりになるのは、軽い行動じゃないの?ジヨンヒョンに騙されて、油断しすぎてるんじゃない?
口に出したら嫌な顔をされそうな言葉が次々と浮かぶ。堪えているのが大変で、無意識に、眉間の皺が深くなっていた。
「私たちのことで色々お世話になったから、お礼がしたかったのよ。けど、外で女性と二人きりじゃジヨンに迷惑がかかると思って。わかるでしょ?」
わからないよ!お礼って何?そんなこと、ヌナが気にする必要ないのに。
納得は出来ないけど、反論すると余計なことまで言ってしまいそうで、俺は黙っていた。
すると、ヌナが、少し怒ったようにこう言った。
「スンリは、私のこと信用してないの」
「そ…、そんなことないよ!」
俺は慌てて否定した。ヌナのことは、勿論信用している。けど、いくらヌナにその気はなくったって、男は狼なんだ。ヌナは全然わかってない!ジヨンヒョンなんて、表向きは牙がないみたいなふりしてるから、余計に質が悪い!
「ヌナぁー。スンリがこわいから、俺、そろそろかえるね」
俺たちのやり取りを黙って見ていたジヨンヒョンが、突然、甘えた声でそう言った。そのことに、俺はまた苛っとして、ヒョンを睨む。
「何だか、ごめんなさいね」
「ダイジョーブだよ。たのしかったぁ。また、あそぼーね」
ヒョンはそう言うと、ニコッと笑って、ヌナの手をとった。そして、そのままヌナの手の甲に、物語の王子様がするようなキスをする。
(なっ…!)
俺は、文字通り、開いた口が塞がらない状態になって、とんでもないことを仕出かしたヒョンを見ていた。するとヒョンは、そんな俺をちらりと見て、挑発するようにニヤリと笑ったのだ。
(こっの、エロオヤジぃ~!!!)
俺は心の中で悪態を吐いたが、言葉には出来ず、わなわなと震えていた。そんな俺を満足そうに眺めて、ヒョンは部屋を出て行った。
「ふふふ」
ヒョンの姿が見えなくなると、我慢できなくなったようにヌナが笑った。その声を聞いて、俺ははっと我にかえる。
「ヌナ!どうして笑ってるの!」
「だって…、スンリ、あなたからかわれたのよ。気付いてないの?」
「はぁ?」
からかわれたって何?喧嘩を売られたの間違いじゃないの?
どちらにしろ、ヌナが笑っている理由がさっぱりわからない。
「ジヨンって、本当にスンリのことが好きなのね。嫉妬しちゃうくらい」
「はぁーーー?」
本当に、意味がわからない。ヌナは何を見てそう思ったんだ?どうしてそんなどきっとするような笑顔で、そんなこと言うんだよ。
「ジヨンはね、すごく楽しそうに、スンリの話を沢山聞かせてくれたのよ?」
「ちょっ…、何それ?ヒョン、何を話したの?ねぇ、何を話したの?」
「ふふふ」
「ちょっ…、ヌナぁーーー?」
怖いんだけど。一体どんな話をしたんだよ。ヌナが笑ってくれているから、悪い話じゃないと信じたい。
「ってゆーか、どうしてそれでヒョンが俺を好きってことになるの?どうせ俺のこと馬鹿にしてたんでしょ。さっきだって、あんな嫌がらせをして…」
「嫌がらせじゃないわ。からかわれただけよ」
「どう違うの?好きならどうして虐めるの?」
「それは…」
ヌナは、俺の顔をじーっと見て、お日様みたいにふわりと笑った。
「スンリの怒った顔が、可愛いからなんじゃない?」
「は、はぁー?」
ヌナに突然、可愛いなん言われて、俺は戸惑った。どちらかと言うと、ヌナには格好よくて逞しい男に見られたいんだけど、一応、褒めてくれてる気がするし…。嬉しいような悲しいような…。とりあえず、物凄く恥ずかしいことだけは確かだ。
「知らなかったわ。スンリって案外嫉妬深いのね」
ヌナはそう言って、クスクス笑う。嫉妬深いという言葉に、俺は落ち込んだ。
「だ、だって…。ヌナ、嫌だった?」
「そんな顔しないの。嫌だなんて言ってないでしょ?」
ヌナは、優しい笑顔で、俯いている俺の顔を覗きこんでくれる。
「嬉しいの。今まで知れなかったスンリの顔が沢山知れて、すごく嬉しい」
そんな言葉とともに贈られた笑顔は、本当に晴れやかで、年齢よりも少し、幼く見えた。
俺の方こそ知らなかった。ヌナって、こんな可愛い顔で笑うんだ。
何年も傍にいたはずなのに、知らない顔が沢山ある。その発見に喜びを感じて、発見が増える度、どんどん好きになっていく。
まるで、ふりだしに戻って、1から恋をしてるみたい。初めての恋みたいに、胸がときめく。
ヌナも同じなのかな?だから、俺に向けてくれる笑顔は、こんなに輝いていて、こんなに可愛いのかな?
そうだったら、嬉しいな。
「ねぇ、ヌナ」
「何?スンリ」
「今日はスンヒョンって呼んでくれないの?」
「え…」
「この前は、呼んでくれたでしょ。ベッドの上で」
ヌナの頬がぽっと赤く染まる。こういう初々しい姿も、恋人になって知った一面の1つだ。
ひょっとして、前は少し、背伸びしてたのかな?だとしたら、無理をさせていたってことなんだろうけど、そういうところも可愛いって思ってしまうのは、不謹慎なのかな?
「ねぇ、ヌナ。スンヒョンって呼んでよ」
「い、嫌よ」
「どうして?」
「スンリだって、ヌナって呼んでるじゃない」
当然だよ。だって、あれは、俺の“武器”だもん。
「俺は名前で呼んでもいいけど、ヌナが困るよ」
「え?」
「だって、我慢できなくなっちゃうから」
意味がわからないのか、ヌナはきょとんとしている。俺はクスッと笑って、ヌナの耳に唇を寄せた。
「俺、ヌナの可愛い笑顔を見てたら、したくなってきちゃった。だから、あの時みたいに名前で呼んだらきっとスイッチ入っちゃうよ?」
そう言うと、ヌナの瞳を見つめて、返事を待つ。照れるかな?怒るかな?
ドキドキしながら待っていると、ヌナは眉間に皺を寄せて、深く長い溜め息を吐いた。
あれ?なんか新しい反応だな?
「スンリ。それは、私があなたの名前を呼んでも同じことなんじゃないの」
「うん。だから呼んで」
「……はぁー」
あ、また溜め息。
嫌だったかなぁ?やり過ぎたかな?わからないことがいっぱいで、時々不安になる。だけど、そんな不安さえ、今は楽しい。
恋って、楽しいんだ。
そんなことも、俺にとっては、新しい発見の一つだった。
俺が密かに、恋というものの甘酸っぱさに浸っていると、ヌナがぶつぶつと何かを囁いた。
「…こういうところは、恋人になっても変わらないのね」
「え?何か言った?」
「…むしろ悪化してる?」
「ヌナ、どうしたの?」
「呆れるくらいどスケベねって言ってるの!」
ちょっ…、酷くない?ヌナ、そんな風に思ってたの?
「ヌナのことが好きだからエッチになるんだよ!駄目なの!?」
「駄目じゃないけど」
ヌナはそう言うと、ちょっとだけ不機嫌そうに俺を睨んで、俺の胸ぐらを掴んだ。
「エッチになるのは、私前だけにしてよね。スンヒョン」
強気な瞳が俺を映している。
今のは反則。ぐっときた。
「ヌナだって、嫉妬深いじゃん」
「そうよ。あの時そう言ったじゃない」
ヌナはそう言って俺を引き寄せると、俺の唇にキスをした。
「あっ…、ヌナ、んっ…」
また一つ、新しい発見。開き直ったヌナは、物凄く大胆で、くらくらするほど、セクシーだ。
「スンヒョン…」
ヌナが、俺の名前を呼ぶのを聞いて、俺はヌナの耳元に、彼女の名前を囁き返した。それからもう一度キスをして、そのまま二人で、ソファーに倒れこむ。
「もぉ…、せっかく沢山料理用意したのに」
「終わったら食べよ。ヌナの手料理。楽しみだな。食べたら後でもう一回。ね?ヌナ」
「あっ、もう、ばかぁ、エッチ」
ヌナが甘い声で俺を罵るのを聞きながら、俺はヌナの中に俺自身を収めた。
そういうヌナだって、結構エッチだよね。俺のことぎゅって締め付けてるの、気付いてる?
何度も抱いた身体にも、まだまだ知らない反応がある。
これからも二人で、お互いの新しい何かを発見しあいながら、いつまででも恋をしていようね。
もっともっと好きになるから、もっともっと好きになって。
ね、ヌナ。お願いだよ。
それから二人で、ヌナの作ってくれた料理を食べて、ささやかなパーティーをして、約束通り、もう一度抱き合った。
そのまま夜は、お互いに抱きしめ合いながら眠った。
ヌナの鼓動を感じ、吐息を聞きながら、俺は、この幸せを永遠に守れる強い男になろうと誓った。
画像拝借致しました。