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児玉さんと乃木さん。



最後ですけれども……字ばっかです。

「二百三高地」の半分は、カッコイイおっさんでできています。



●乃木さんと児玉さん


進退窮まってる乃木さんたち第三軍を、

自ら指揮しにいくと児玉さんが言い出します。


わしが行ってやらねば

乃木はひとりでは戦えん


……か

過保護か!!(゜Д゜;)


あの子の悲しみ 私の悲しみ

ふたりで分ければ少しは減るでしょう?か!※

※倉橋ヨエコ「過保護」


失礼しました思わずツッコんでしまいました。

ヤンデレ自虐ソングの女王の声が聞こえたので…


満州軍総参謀長の児玉さんが、第三軍司令官の乃木さんをさしおいて

乃木さんの軍隊を指揮するっていうのは明白な越権行為で、

本来ならやっちゃいけないことなのです。


それでも乃木さんのところに行くって言ってきかない児玉さんは

部下(たしか松川さん)から


閣下は総参謀長の責任を

放擲されるのですか!


って窘められます。でも行く。



●児玉さんといわおちゃん

児玉さんは、満州軍総司令の大山巌に

旅順の第三軍を指揮しに行くと伝えます。


すると巌ちゃんはこう言いました。


戦争になって

勝ち戦になりそうなら帰っていただくが

負け戦になりそうなら

オイひとりで充分でごわす


心配は要りもはん


で、自分が着てた毛皮のチョッキを児玉さんに渡す巌ちゃん。


やっべえええええ巌ちゃんカッケエエエエ

「坂の上」でマスコット扱いしてすいませんっしたー!!!

でも「坂の上」の巌ちゃんは可愛かった!スナメリみたいで!!



●児玉さんが旅順へ

児玉さん、来るなり大喝。

バカモン!!!

ヒエーすいませんすいません


「幕僚がストーブを囲んでいて、この戦争に勝てるとおもってんのかあ!!」


「弾くれって言ってもアンタら(総司令部)一度もくれなかったじゃないか!!」という伊地知さんに

「責任をとるべき参謀長が言い訳するってどういうことだ!?」


乃木さんがどこにいるかわからない、と言われ

「お前ら、軍司令官の居場所もわからんのか!」


もう、児玉さんが言ってることが真っ当すぎて言い返せない。

なんか無意識に自分の職場にダブらせてしまった……


それにしてもよく怒鳴るんです児玉さん。



児玉さんが乃木さんを呼ぶときに

ひげおやじー

って呼んでた。

仲良いねえおっさんたち。



●津野田くんが画面のどこかにいるはずなのに

どの人かわからん……!!


●児玉さん主導で作戦転換

児玉さんが、味方に当たるのを覚悟で要塞に向けて砲撃しろと言います。

第三軍の幕僚たちは、それはできないと答えます。


陛下の赤子(せきし)である同胞を

友軍が砲撃するっちゅう事は…!!

(伊地知さんの台詞)


赤子(せきし)とは、国民のことです。

これとほぼ同じ台詞がドラマ「坂の上の雲」にもありました。

陛下の砲で陛下の赤子を撃つことはできません!!


「陛下」を「日本国」に言い換えると分かりやすいのかなあ。

あ、思想どうこうの話ではなく、言葉のニュアンスの話ですよ。


他の皆様の感想文読んだら、ドラマ「坂の上の雲」の旅順要塞攻略戦は

司馬さんの原作よりもこの映画に近い描写だったとおっしゃってる方がいました。


私は原作読んでないのでアレですが、確かにドラマとこの映画、似てるところ結構ありましたね。



●悲惨な戦場

ドラマ「坂の上の雲」よりハードです。


●最終的には両軍とも弾がなくなって投石

投石は「印字打ち」とも言うそうです。

石は手投げ武器の原点だ!

●そこから旅順港は見えるか

ほぼ同じシーンです!

この映画ではあんまり劇的には描かれてない…気がします。意外とアッサリめな感じ。

他に山場がたくさんあるからでしょうね。


通信兵、どこにケーブル巻きつけてんのおおおお


●金掘り攻め

みんなで頑張ってトンネル掘ってました!

これは手間かかるわ…


●UGGYAAAAAAAAAAA目潰しいいいいいいい(×Д×)

いてえええええええええ


●「乃木は無能」とか言ってた民衆が

手のひらを返したように「乃木大将バンザーイ!」って……


●のんびりやの豆腐屋の息子が意外にタフだった

勝手にパクってきたラッパを吹いて、現地の人から烏龍茶のお茶っ葉をもらう。

もっしゃもっしゃ食ってる。



●ドラマの核心…っぽいもの?


部下が死んでゆき、次第に古賀くんはロシア兵に対して憎しみを抱き始めます。

話の冒頭で、素晴らしい文学者をたくさん生み出したロシアという国家を尊敬するとまで言ってた古賀くんが。


そしてついに、捕虜のロシア兵に向かって銃を発砲。

要塞攻略戦の前に乃木さんが著した規約には、捕虜は丁重に扱うように、と書かれていたのに。

窘められた古賀くんは、自分の思いを爆発させます。

長いけど引用します。


前線の兵には体面も規約もありません。

あるのは生きるか死ぬか、それだけです。


兵たちには……死んでゆく兵たちには

国家も軍司令官も命令も軍規も

そんなものは一切無縁です。


灼熱地獄の底で鬼となって焼かれてゆく苦痛があるだけながです!


苦痛を……部下たちの苦痛を……

乃木式の軍事精神で救えるがですか!?


それを聞いていた乃木さん。

上官の一人が、「乃木閣下も御令息を亡くされておるんだぞ!」と言うと、

古賀くんは「当然であります!」と言い放ちます。


前線に立つものが死ぬ運命にあるのは当然だと申しあげておるのです!


それなのに、部下や御令息を死地に駆り立てながら

敵兵に対して人道を守れという軍司令官のお考えは

自分には理解できんがです!!



戦争なんかやってたら、古賀くんみたいな発想の人って一定数出てくると思うんですよ。

司令官は、こういう人たちを上手いこと説得できなくてはいけないと思うんです。


しかし乃木さんは、これに対してただ「隊へ帰りなさい」と言っただけ。


このドラマが史実に忠実であったとして、乃木さんが愚将だと言うのなら、

たぶんこういうところなのかなと思います。

古賀くんの言ってることはよく理解できる。だから、何も言えない。

戦争を仕事だと割り切れない。

児玉さんなら、「お前の気持ちどうこうを気にしている余地はない」

「わしが考えているのは、この戦争にどうやったら勝てるかということだけじゃ!」

って言いそう。

「 」内は、実際に劇中で児玉さんが言った台詞。


ビジネスとして割り切れる児玉さんではなく、

割り切れない乃木さんをメインに据えるというのが興味深いですね。


ただ、史実では児玉さんが言う前からすでに

第三軍は味方に当たるの覚悟で要塞に砲撃を行ってたらしいですが。




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黙々と栗をむいてる乃木さん。草食っぽい。


●いちばん金沢弁が上手かったのは

最後に出てきた小学校の校長先生っぽい人。

「なんしとらいや!」=なにしてんだ!
↑このイントネーション完璧だった


【総括】


戦闘シーンすごい。

少し昔の作品ですから、CG技術がすごい最近の映像の方が迫力はあるのかなと思いますが、

この作品の描写はすごい。なんにもごまかしてない。

リアルすぎて、観ててつらくなってきます。

NHKのゴールデンタイムではできませんね、あの描写…

これからご覧になる方は、そのへんお気をつけください。


仲代乃木さんはすごくいいキャスティングです!あれは乃木さんだ!!


いろいろ議論ができそうな佳作です。

未見のかたはぜひ!



【おまけ】

いわおちゃんがスナメリなら、乃木さんや児玉さんはどうかというと


「坂の上の雲」

柄本乃木さん…テンジクネズミ

もふもふ感が!あとあの小動物っぽい感じ!

高橋児玉さん…クマ

ヒグマみたいな、遭遇したら確実に殺られる系の。


「二百三高地」

仲代乃木さん…ヤギ

本物の乃木さんもヤギっぽくないですか?もしくはキリン。

丹波児玉さん…フクロオオカミ

精悍な感じ。


こちらのいわおちゃんは、ゾウアザラシって感じでした。



【参考】

『徹底検証 日清・日露戦争』 文春新書

『歴史読本 日露戦争100年目の真実』 2004年4月号

『歴史街道 二〇三高地の真実』 2011年11月号