仕事にまつわる思い出話も書き残していきます。

まずは、やっぱり「今井荘」。

2003年11月1日「起業した」。と自分の中で言っただけで仕事があるワケじゃなかったが。。ｗ

必要なものは、パソコン、プリンター、スキャナー（当時は別だった）、HP、名刺、

そして、

「東京オフィス」と呼べる拠点が欲しくて、ゲリラ的に東京に飛んだ。

東京は人生で2回目。

1回目はまだ結婚していたとき「さんまの夜もから騒ぎ～人妻SP～」の最終オーディションで麹町STに参じた件だった。

その件も結構面白かったけど、別な機会にページを譲るとして。

とにかく東京の街をはじめてちゃんと見た。

目指したのは渋谷。なぜなら、田舎で一番見る東京はNHKのお天気カメラ「渋谷の様子です」だったから。

シティーハンターでおなじみの新宿と迷ったが、売り飛ばされたり殺されちゃいけないので回避。

たまたま出たのが宮益坂方面で、田舎者らしく上を見上げた。

一番上にあった不動産屋（エイブルだったと思う）に上がる。ドキドキする。

「東京モンは田舎者を舐めている」「地方者は都会でだまされる」そういうネガティブキャンペーンを、おそらく都会を知らない人によって刷り込まれていたので、

25歳の田舎娘は「ここが最初の勝負だ！負けるものか！」

目一杯の虚勢を孕みつつドアを開けた。

対応してくれたのは、30歳前後のおにーさん。

私「事務所物件探してまして、いえ、地方にもオフィスはあるんですけどね（自宅な）

そろそろ東京にも欲しいかな～なんて、ハハ（まだいっこも仕事ないけど）」

不「そうなんですね、エリアはお決まりですか？」

ほらきた！！と思った。

ここで、東京のことを実は何もしらないことがバレてはいけない。

予習は十分「スーモ」でしてきた。勉強はできるほうじゃなかったが、目標があれば努力は惜しまないので。

で、得た学びは、

　「山手線」がナウらしい！

　「山手線」と言えばだいたいＯＫ！

ということ。

私「そうですね～・・・まあやっぱり、、山手線沿線かなと思ってますねっ！（どや！）」

不「・・・・山手線のどの駅とかありますか？」

続けざまに次のお題がきた・・！

でもお手の物。予習してますから。

っていうか、スーモ先生に聞いて、山手線縛りで一番安い駅を絞ったら、おのずと候補駅はこうなった↓

私「まあ池袋か、それかまあ、

　　ひぐれさと　あたり

　　ですね！（どーーーや！ひぐれさとカッコイイだろうっ？）」

不「ひぐれさと・・・・・ああ日暮里（にっぽり）？（ｗ）」

私「ささささ最近はにっぽりとか言いますね！？（そうなの？）」

不「もともと、にっぽりって読むんですかね（ｗ）」

虚勢がもろくも崩れ去る音を聞いた。

もう開き直って事情をいろいろと話す。。

フードコーディネーターとして起業したいこと。

田舎に小さい子どもがいて単独で往復になるし、とにかく最安値で、スペックはなんでもいいこと。

お兄さんがアドバイスをくれた。

不「そういうクリエイティブ系の仕事だったら、名刺的に代官山とか恵比寿がいいんじゃないですか？」

で、最初に内見したしたのが、恵比寿駅近最安値のこの物件。「今井荘101号室」

二階建てで、玄関は共有。汚れた靴が溢れていて臭い。

玄関入ったすぐの短い廊下の正面が、なぜかいつもドアが開いている和式便所（トイレと呼ばないやつ）。

風呂なし、給湯なし、4畳半一間にシンクに水の水道だけむきだしで、収納もない。

1階に2部屋、2階に2部屋あり、他3部屋はおじいさん、ニート、バンドマンという、漫画のようなキャスティング。

私が借りたのは、101で道に面しているのだけど、窓には昔のクリクリクリってやるねじ式の鍵だけで、

大家さんが「こんな若いお嬢さんが入るような物件じゃないですよ・・・💦」と心配してくれたけど、

「ここ決めます」

恵比寿アドレスで家賃4万円、これで十分だった。

不動産屋の兄ちゃんが、内見の最後、部屋の鍵を閉めながら言った。

「ええこのように。鍵はできます」

施錠が自慢の物件かよ！

私伝説の出発点として、この上なく相応しいと思った。

この物件は、夏は外より暑く、冬は外より寒いという奇跡のコンディションで、

夏は黒い彗星が慣れるくらい出た。冬はあるものを全部着た。

水を流すとバタバタ大きな音がするシンクで髪を洗った。

クリスマスにたまたま仕事があった年、この部屋で子どもたちにカードを書いて送った。

苦境の折々に、絶対にここから這い上がってみせると、強く思った。

階段の1段上は分厚い雲に覆われていて、どこに、どんな場所に上がりたいのかわからなかったけど。

叶えるまでやめやしない、負けない、と。

今も、あの不動産屋のにーちゃんのこと、思い出します。

彼が幸せになっていますように。

余話：今井荘