☆夏子の酒 / フジ放映 1994
新米の季節である。
刈り入れ時期になると思い出すドラマがある。
和久井映見主演で1988年から1991年まで週刊モーニングに連載されたマンガのドラマ化であった。
連載マンガとはいえれっきとした実録社会派でこのストーリーにはモデルや原作者が取材した舞台もある。
ドラマの方は1994年の1月から3月に放映され、正に新酒が出回る時期に当て込んで本放送された訳だが、撮影は前年の田起こし時期から開始されると言う気の入れようで、お台場に移転する前の新宿河田町時代のフジテレビが製作放映した。
視聴率絶対王者だったフジが一番輝いていた時期の頃の産物である。
主人公の佐伯夏子役にはドラマ初主演の和久井映見が演じたが、このドラマで知名度が上がった若き酒職人役の萩原聖人と翌年実生活で結婚して話題を振り撒いた(2003年に離婚)。
ドラマ冒頭では夏子は広告代理店に勤めるコピーライターの卵で就職して2年、都内でOLを満喫していたが大きな仕事にも恵まれず古い大口取引先のオヤジにプチセクハラを受け、帰社して上司にそれを愚痴るも逆に叱責を受ける始末で、悶々とし始めていた。
そんなタイミングで新潟の小さな町で造り酒屋を営む実家に帰ってきた夏子は手厳しくも優しい兄(友情出演の中井貴一)から酒造りに最適な幻の米と言われていた"龍錦"を探していることを知らされるが、夏子が滞在している最中に長岡で僅かだが龍錦の種が手に入った情報から無理を押して出掛けて、何とか持ち帰ったものの夏子の目の前で倒れてしまう。
滞在中に夏子は同窓会に参加、同級生の役者達に今は全く見ない懐かしい役者達が居並ぶが、女優になると上京して果たせず帰ってきていた痩せていた頃の松下由樹がいたが、後に夏子の実家の造り酒屋で事務の仕事に就くことになる。
このドラマでは父親役に今は亡き高松英郎が出演しておりその存在感だけで充分絵になる正にいぶし銀の演技だったが、兄の中井貴一以上に厳格な役どころだが、たまに見せる笑顔が誠に癒される。
兄嫁には若き日の若村真由美が演じており慎ましくも揺れる女ごころを繊細に表現する演技は演技陣の中でも出色の出来であった。
夏子は実家で兄から龍錦の夢を聞き、帰郷前に会社で日本酒メーカーのコピーライティングのコンペの話が持ち上がり自分も田舎の小さな造り酒屋の娘だからこの仕事をやらせて欲しい!と懇願したが認められなかった、という伏線が張られており、夏子はインスピレーションが湧きその酒メーカーのコピーをFAXする。
いよいよ夏子が東京へ帰る日、駅で電車に乗り込んでいた夏子に無理を押して見送りに来た中井貴一の台詞が泣かせる。
お日さまみたいな酒を作りたいんだ
太陽の光を浴びて七色に輝く…そんな酒を。
おまえが秋に帰ってきた時には黄金にたわわに実る稲穂が、ブワーッとだぞ‼️💦
夏子が聴いた最期の兄の言葉だった。
という事で中井貴一はこの最初のエピソードと最終話で完成した龍錦で作った酒(中井貴一の役名 康夫の字を冠した康龍という名の酒)を和服の夏子と桜の木の下で酒を酌み交わす幻想シーンのみの出演であった。
この後のストーリーはネタバレになるので気になる方はユーチューブ動画か現在ではDVD📀でもリリースされている。
平成の一桁時代のノスタルジーとしても楽しめるが、今から観るとドラマの展開の中で龍錦を如何に拡めるか?という問題を夏子の夢を語らせて彼女の孤軍奮闘により村人たちにもジワジワと無農薬米を作らせる気運が高まるという展開に感傷的ではないか?と言う疑問が湧くところではある。
現在だったら町おこし、グルメブームに絡めて日本酒の新たなシェアが描けてこれ程苦労をしなくても何とかなりそうなものだが、時代の流れを感じることはこのドラマを観ると充分感じることが出来るし、農家の現状と夢で何とかなると言うギャップを強烈に批判する若き日の区長役の平泉成の台詞には確かに説得力があった。
サントラ動画は↑ココをタップする
♫風と雲と私 は↑ココをタップする