職場の集合写真の出来上がりを見て、驚く。
私の額というか、生え際というか、前頭部というか、
本来髪の毛が黒々とある部分、
その左側だけが白く発光している。
たぶんフラッシュの当たり具合による乱反射だろうが、
そもそも髪の毛が豊富であれば、乱反射するはずもない。
現に女性職員たちの髪の毛は、天使の輝きはあれども、
地肌が透けての乱反射は見あたらない。

洗面所に行って、鏡でこっそり実物を確認する。
さすがにトイレの薄暗い電灯ではピカピカに輝くことはないが、
やはり、そこそこは地肌が透けて見えている。
私は7:3のいわゆる横分けスタイルなので、
この境目からの侵攻が始まったようだ。

その日から左前頭部を中心に据えたグルーミングを始めた。
シャンプーもリンスもマッサージも育毛剤も左だけたっぷり行う。
でもこれくらいでは、すぐに効果がでるはずもない。
鏡に映った姿は、ちょうど、ローマ字の“N”の形だ。

ある日、はたと気付いた。
今の7:3分を、左右逆の3:7分にしたらどうだろう。
そこで、いつものように入念なヘアケアをしたあと、
普段とは逆方向にブラシを通してみた。
ドライヤを当てながら、髪に負担を掛けないよう慎重な作業だ。
すると、
髪の流れに逆らっているので、いつもよりボリュームででてふさふさ感が出ている。

これでしばらくはN字からの脱出だな。と、ひとりほくそ笑む。
でも、やはり右側も昔に比べれば、薄くなりつつはある。
あ、そうか、将来これでオールバックにすれば、
いわゆるM字カットが完成するのか…

いえいえ、そうはさせません。
MからNへ、そして字(地)の見えない前頭部へと。
生え際の後退との戦いはまだまだ続くのです。

生え際 後退