『がわっぱ』 | ちわわ図書館

『がわっぱ』

たかしよいち、斉藤博之絵

『がわっぱ』

個人的お気に入り度:★★★★



再読。



既成のイメージによらない、

作家自らのかっぱ像を形にするべく書かれた物語絵本。



遠い海の果てで、大きなハスのつぼみのような赤い物体から

人間のこぶしほどの大きさでうまれてきた

がわっぱ(河童)の「きゅうせんぼう(九千坊) は、

千年もの眠りから覚めたところで、

これから200年の旅に出るのだ。


きゅうせんぼうは夜も昼もなく泳ぎ続けるうち、

5日で2倍、10日目にその2倍、

ひと月で人間の子どもくらいの大きさになり、

50日目に人間のこぶしくらいの子どもを産む。

子どもはすぐにきゅうせんぼうの後ろを泳ぎだし、

同じように大きくなり、子どもを産む。


そうやって子どもが子どもを産み、

100年海という海を泳ぎ続ける間に、

がわっぱは700匹の大所帯に。


今度は山を旅するべく陸に上がろうとするが、

川は鉄の網でふさがれている。

そこは長者どんの土地であり、

長者どんの許可なしでは何者も自由に行き来することはできないのだ。


長者どんと交渉するため1人だけ陸に上がったきゅうせんぼうは、

その土地の田畑はすべて長者どんが支配し、

人々は死ぬまでこき使われているのを見ることになる。


それどころか、お日様が沈みそうになると、

長者どんは金色の扇を掲げて招く。

すると、お日様は沈むことができない。


田畑も、人間も、お日様も、ここではすべて長者どんのものなのだ。


長者どんがわっぱ1匹につき金貨10枚を持ってくれば

通してやるというが、それは到底無理な金額だった。

がわっぱたちはお日様をなんとかして沈ませて、

闇に乗じてこの土地をとおり抜けようと相談する。


がわっぱの特殊能力とチームワークによる

長者どんとの壮絶な戦いの末、

悪いやつらをやっつけて無事山に登ることができた

がわっぱたち。


5日目に最後尾の700匹目の大きさが半分になり、

10日目にその半分の大きさになり、

100日目には消えてしまう。

700匹のがわっぱは10年目に70匹になり、

100年後には先頭のきゅうせんぼう1匹に。


一番高い山の頂にたどり着いたきゅうせんぼう

小さくなって消えた翌日、

そこには海の底にあったのと同じ、

ハスのつぼみに似た物体(色は紫)が現われたのだった。


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小学校4年生の頃に学校で読み聞かせてもらって、

とても気に入った絵本。


細かい内容はすぐに忘れてしまうのだが、

海で生まれたがわっぱが、

100年もかけて次第に数を増やしていき、

悪いやつらをやっつけたあとで

100年かけて小さくなって減っていき、

最後はもとの1匹になって消える。

そしてそれが繰り返されることを予感させ、

人智を超えた不思議な存在に、わくわくさせられたものだった。


きゅうせんぼうは山の頂上で千年の眠りについたのだ。

眠りから覚めると、きっと今度は山から海に向かって

旅をすることになるのだろう。


次の時代にはまたとんでもない支配者が

がわっぱたちの行く手をふさいでいるかもしれない。

しかし、きっと彼らの旅をとめることはできないだろう。

がわっぱたちは人間の定めた国境や規則を超えた存在なのだ。


たかし よいち, 斎藤 博之
がわっぱ―かっぱものがたり