多くの人たちが減量を希望している。しかし、これがなかなか難しい。減食して運動を行っても思いのほかはかどらない。結果として減量は叶わず肥満が継続するといった感じであろう。この減量を難しくしている理由のひとつに先天的な肥満遺伝子の存在と、さらに後天的な慢性の基礎代謝の低下が上げられる。
肥満遺伝子は倹約遺伝子とも言われ黄色人種の3割ほどに出現するという。すなわち何万年もの人類の歴史の中で幾日も食餌が摂取できない時、体脂肪に蓄えたエネルギーを無駄に消費しないよう基礎代謝を低下させ長期に生存ができるよう変化した遺伝子を倹約(肥満)遺伝子と呼ぶ。つまり太りやすい人は倹約遺伝子を有している可能性が高い。
また何度も減量のため減食を繰り返していると基礎代謝は減少する。体内のエネルギーの代謝を考えた場合、過剰なエネルギーは白色脂肪細胞に蓄積し、消費は褐色脂肪細胞(もしくは筋肉運動など)で行われる。白色脂肪細胞は全身に、褐色脂肪細胞は頚部~上背部、腋などに分布するとされている。つまり太りにくい人には褐色脂肪細胞が多く、太りやすい人は褐色脂肪細胞が少ないと説明できる。
ところで慢性に繰り返し減量を試みていると基礎代謝は減少し体重は反発(リバウンド)しやすくなる。エネルギー代謝(新陳代謝)には甲状腺ホルモンが深く関与しており、甲状腺ホルモンの代謝経路でT4からT3に変換される際、通常のT3に行かず多くが代謝を鈍らせる(エネルギー蓄積に働く)リバースT3(rT3)に変換されるため、結果とし交感神経への刺激が低下するからである。
ちなみに自律神経はα神経とβ神経で調整されているが、そのうちエネルギー代謝を担当するβ3は脂肪燃焼にかかわる褐色脂肪細胞に分布する。たとえば甲状腺機能亢進症では発汗や痩せが出現するのはこのためである。また漢方薬の麻黄の成分であるエフェドリンは全ての交感神経を刺激するので古くは心不全や喘息の薬として用いられた。
かつて中国の減量薬として牛の甲状腺末が、アメリカの減量薬として麻黄が用いられたのは、新陳代謝を刺激するからである。しかし、いずれも心作用が強く死者を出したので減量のためにこれらを使用することは禁止されている。
また覚醒剤アンフェタミン(シャブ)は麻黄から抽出された成分であり、美容外科で広く使用されているサノレックスもまた麻黄から抽出された成分を利用して作られている。痩せるためにシャブを使用したり、高額な薬剤費を支払ってサノレックスを購入するのは、実は単に交感神経刺激~体脂肪燃焼を得るためなのである。