南三陸町の歌津八番クリニック院長ブログ

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東日本大震災による大津波で壊滅した宮城県南三陸町の、唯一生き残った民間医療機関の院長によるブログ。地域の医療情報、当院の治療のこだわりなどを真面目に掲載しています。

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夏太りにご用心

 夏は痩せると思い込んでいる人は少なくありません。しかし夏は意外にも太りやすい季節なのです。基礎代謝を考えた時、冬の寒い時期には気温と体温の差が大きいので体温維持のためにエネルギー消費が高進しますが、暑い夏では気温と体温の差が小さいのでエネルギーの消費は減少します。

 そこで夏を乗り切るために鰻やフルーツあるいはアイスクリームをたびたび摂り、さらにはジュースや糖質入りスポーツドリンクを一日中飲んでいれば余剰なカロリーは、よほどの運動をしない限り体脂肪に変わります。つまり夏はエネルギー消費が少ないので現状の体重を維持するために食欲が低下するとも言えます。

 一年を通じて見れば夏は食欲が低下して体重が減少し、食欲の秋・冬で体重が増加することによって体重の変化がなくなります。これが上手くいかないと20歳で50キロのお嬢さんが1年たった0、5キロの体重増加で40年後の60歳で70キロのおばさんに変身してしまいます。そんな訳で夏太りにご用心を。

多くの人たちが減量を希望している。しかし、これがなかなか難しい。減食して運動を行っても思いのほかはかどらない。結果として減量は叶わず肥満が継続するといった感じであろう。この減量を難しくしている理由のひとつに先天的な肥満遺伝子の存在と、さらに後天的な慢性の基礎代謝の低下が上げられる。


 肥満遺伝子は倹約遺伝子とも言われ黄色人種の3割ほどに出現するという。すなわち何万年もの人類の歴史の中で幾日も食餌が摂取できない時、体脂肪に蓄えたエネルギーを無駄に消費しないよう基礎代謝を低下させ長期に生存ができるよう変化した遺伝子を倹約(肥満)遺伝子と呼ぶ。つまり太りやすい人は倹約遺伝子を有している可能性が高い。


 また何度も減量のため減食を繰り返していると基礎代謝は減少する。体内のエネルギーの代謝を考えた場合、過剰なエネルギーは白色脂肪細胞に蓄積し、消費は褐色脂肪細胞(もしくは筋肉運動など)で行われる。白色脂肪細胞は全身に、褐色脂肪細胞は頚部~上背部、腋などに分布するとされている。つまり太りにくい人には褐色脂肪細胞が多く、太りやすい人は褐色脂肪細胞が少ないと説明できる。


 ところで慢性に繰り返し減量を試みていると基礎代謝は減少し体重は反発(リバウンド)しやすくなる。エネルギー代謝(新陳代謝)には甲状腺ホルモンが深く関与しており、甲状腺ホルモンの代謝経路でT4からT3に変換される際、通常のT3に行かず多くが代謝を鈍らせる(エネルギー蓄積に働く)リバースT3(rT3)に変換されるため、結果とし交感神経への刺激が低下するからである。


ちなみに自律神経はα神経とβ神経で調整されているが、そのうちエネルギー代謝を担当するβ3は脂肪燃焼にかかわる褐色脂肪細胞に分布する。たとえば甲状腺機能亢進症では発汗や痩せが出現するのはこのためである。また漢方薬の麻黄の成分であるエフェドリンは全ての交感神経を刺激するので古くは心不全や喘息の薬として用いられた。


かつて中国の減量薬として牛の甲状腺末が、アメリカの減量薬として麻黄が用いられたのは、新陳代謝を刺激するからである。しかし、いずれも心作用が強く死者を出したので減量のためにこれらを使用することは禁止されている。


また覚醒剤アンフェタミン(シャブ)は麻黄から抽出された成分であり、美容外科で広く使用されているサノレックスもまた麻黄から抽出された成分を利用して作られている。痩せるためにシャブを使用したり、高額な薬剤費を支払ってサノレックスを購入するのは、実は単に交感神経刺激~体脂肪燃焼を得るためなのである。








「当院の糖尿病食事療法」

震災後は不眠症や神経症の出現、高血圧症の悪化など種々の疾患の悪化がみられましたが、中でも糖尿病の悪化も相当数みられました。理由としては、薬が切れてしまった場合も少なくありませんでしたが、それより物資として提供される食品が菓子パンやおにぎり、カップ麺など高糖質食品のオンパレードであったことが震災後の糖尿病悪化の原因であったと考えます。もちろん運動不足もあったので尚更です。

また今回の被災後いろいろな医療機関に通院していた患者さんの多くが、かかりつけ医が閉院したり、交通手段を失ったという理由で当院へ来院されました。そこで一番驚いたことは食事指導が全くなされていないか、食事指導がなされていても昔風の食事指導しか受けていない患者さんが数多かったことです。もっとも食事指導ばかりか糖尿病の病態生理など説明せずに、いきなりSU剤を処方していた信じられない医療機関もありました。

ご存知かと思いますがエネルギー源として利用される栄養素は糖質、脂質、蛋白質の三つで、それぞれ1gあたり4Kcal、9Kcal、4Kcalと説明されています。糖尿病とは糖質(ブドウ糖)の代謝障害であり利用障害です。つまり膵臓からのインスリン分泌不足か、血液中のインスリン抵抗物質により食品中に含まれるブドウ糖が上手く処理されず、または利用されず高血糖の状態が継続した状態が糖尿病です。

糖尿病に対する食事指導としてカロリー制限が広く普及していますが、当院での糖尿病に対する食事指導は糖質制限です。さらに厳密にいうなら肥満を伴った糖尿病は糖質制限プラス脂質制限であり、痩せを伴った糖尿病は主として糖質制限です。前者では旧来のカロリー制限に近いものですが、いずれの場合も蛋白質は1日に必要な量は確保しなければなりません。なぜなら蛋白質不足は血漿アルブミンや免疫グロブリンの合成、さらには凝固因子やコラーゲン合成などの材料であるアミノ酸が不足してしまうからです。

また当院の食事指導では米などの主食に含まれるブドウ糖の消化吸収を緩徐にするために、主食の前に繊維質の多い葉野菜を十分摂取することを勧めています。初期糖尿病の患者さんの中には食後の高血糖と空腹時の低血糖を示す方もいらっしゃいますので、インスリン分泌の波を少なくする目的で食前の葉野菜摂取を指導しています。

さらに糖尿病治療中、HbA1cが高いにもかかわらず、たびたび低血糖発作を起こす患者さんには意識的に脂質を摂取するよう指導しています。なぜならエネルギー燃焼サイクルの中で、血液中にブドウ糖しか供給されていない場合、それが枯渇すると体脂肪からの脂肪酸供給が間に合わないため低血糖を生じるという理由からです。