母のはなし

『お母さんね、実は一度を堕胎を迷ったことがあったんだ』 


母が話をしてくれた。



私は3人兄弟の真ん中。

下には少し歳の離れた弟がいるニコ


甘えん坊の末っ子気質の弟で、姉から見ると心配な部分も多い子だが、何せ昔から母は弟を溺愛していた笑い泣き笑い泣き


実はその弟の妊娠発覚時、母は産まないつもりだったと…キョロキョロ



当時、母は父との離婚を考えており妊娠の発覚は完全なサプライズだったらしい。



産んで育てていく自信がない…

そう思って、誰にも話さず堕胎をする為に産婦人科に行ったそう。


『でもね、そこはあなたとお姉ちゃんを産んだ産院だったから、看護師さんも助産師さんもみんな顔馴染みでね昇天


診察の話を聞きつけて、みんなが集まってきてくれて「おめでとうございます」って盛大にお祝いをして頂いて…とても言い出せなくてね…

そのまま帰ってきたんだ』


と。


典型的な亭主関白の父に振り回される母を子供の頃から見ていたので、母が離婚を考えたという事について驚きはなかったけど


まさか弟がお腹にいるタイミングでそんな事になっていたとは知らなかった驚き



『それで別の産院を探しているうちに、お父さんのお父様の体調が悪化してね〜。

それからお葬式までの間とにかくバタバタしてねあせる


そのうちにどんどん週数が進んで、いよいよ病院に行かなくては間に合わないというタイミングで


父に話したところ「産んで欲しい」って言われたそう。


『その時ね、なんだかストンって心に落ちてきたの。産もうって。悩んでたことが嘘みたいにね』



たぶん心は産みたがってた。

理性がそれを留めていたけど、結局母親の本能は「産みたい」という事だったのかな、とそんな話だった。



お母さんにもそんな時があったんだ…



自分の事でいっぱいいっぱいだったけど


きっと世の中にもたくさんの事情を抱えて出産を迷ったり不安に感じたりする人がいるんだろうな曇り


不謹慎だけど、なんだか少し心が軽くなった自分がいた。


NIPTの結果がでて不安な時、


街ですれ違う妊婦さんや子育て中のママさんたちがみんな幸せそうに見えて


不安や悲しい気持ちを抱えた私は、疎外感というか…なんだか世の中でひとりぼっちの様に感じていたからショボーン



母がその話をしてくれた真意はわからないけど、

たぶん夫婦の決断がまだできていない私たちの選択を、ふわりと包み込むための話だった気がした。