遥か長い道のりを
風にたずねてみても
何も答えてはくれない

熱くはじけた日々
冷たく沈んだ夜
いくつも通り過ぎ
ここにたどり着いた
全てを受け入れて

落ち着ける場所を探し
風の音を聴きながら
痛む足のまま  
今日も
目の前の道を歩いて行く


遥か永い時の流れを振り向いて
空をながめてみても
何も映りはしない

出逢いの笑顔
別れの涙
いくつも繰り返し
今ここにいる
全てを解き放ち

やすらぎの時を求め
空を見上げながら
疲れた心かかえ
明日も
目の前の時を生きて行く

各駅停車に揺られ

少し離れた古い街まで

やるせない毎日から逃れたくて

一日だけのひとり旅



無人駅での待ち時間

眺める寂れた町並みに

いつしか埋もれてしまっていた

懐かしい歌がよみがえる



わずかばかりの駅前広場は

キレイに変わっていたけれど

ひとつ路地裏に入り込めば

そこの景色はあの頃のまま



小さな喫茶店では

陽気に笑う家族連れが

最後に声を出して笑ったのは

いつだったのか忘れてしまった



二人で過ごした日々は

今では遠い輝きの中

もしここであなたに逢えたら

何を言えばいいのだろう



意味なく流れるあの街で

明日も生きて行かなければ

ほろ苦い想い出はこの街に残し

夕闇のホームにひとり佇む
僕は、子供だった。

宿題の問題ができなくて、悩んでいた。



たぶん、夏休みだったのだろう。

何日も何日も、同じ問題の答えを考えていた。



ある日、なぜかすぐに、答えがわかった。

僕は急いでお母さんのところに行き、

「できたよ!」と言った。



するとお母さんは、

「始めから、やり方が間違っていただけじゃないの」

と、にこりともせずに言った。



そのとたん、僕のうれしさは、

消えてしまった。



僕はお母さんが、

「良かったね」と言って、

笑ってくれると思ったから。



今でも僕は、

言葉を怖れ続けている。