遥かな旅に  憧れ続けて

けれど  離れられずに

この街を  ずっと見てきた



訪れると  切ない場所や

待っても  来るはずのない人

それでも  ここで

暮らしていくだろう



青空の下  聞こえてくるのは

行き交う車と

心地よい  路面電車の音







陽射しの中  輝いた日や

雨の中  泣いた夜のこと

この街も  僕を見ていた



あの頃と  見違える路地や

今はもうない  あの店

それでも  ここで

生きていくだろう



夕焼けの中  聞こえてくるのは

かすかな  虫の音と

厳かな  寺の鐘の音







止まらぬ  時の重さに押されて

すべてが  変わっていく

人の心も  街の景色も



流された  軽い日々のあと

もし  また  会えたならば

それでも  笑って

名前を呼びたい



風の中  聞こえてくるのは

聞きなれた  街の音

何気ない  この街の音