先日、とあるベンチャー企業からこのような相談を受けました。

 

「常勤監査役について、どの程度の範囲まで許容されるのでしょうか。

現時点で週3日などオフィスにいることが、ガバナンスにおいて重要であるとは思えず、コスト等の観点からも最小限のラインを見極めたいと考えております。」

 

同社は、素晴らしい技術を有しており、早ければ2年後に株式上場を見据える会社なのですが、今は社員10数名で、売上も年間で数百万円程度。拠点も1つで、確かに現時点で常勤監査役が監査機能を発揮する場面は多くなさそうです。

しかし、株式上場基準上は監査役会または監査等委員会設置が義務付けられており、常勤監査役は必須事項です。

 

自分は、こう答えました。

 

「常勤監査役の件、上場時において必須で、直前期監査役監査運用するため、今度の定時株主総会で選任が必要です。

週3日も証券会社によっては不足とする証券会社もあります。誰でも良いわけではなく、監査役としての適格性を備えている必要もあります。

現状の規模で常勤監査役を置く必要性については、確かに疑問を感じられる点も頷けます。通常の監査業務だけなら、常勤監査役の方も手持ち無沙汰になることは充分考えられます。

現時点では、規程や統制など作っていかないといけない部分が多いので、枠を広げてその辺りまで助言或いは手を出して頂けそうな方を選任すると、担当者の業務も軽減されますし、良いかと思います。」

 

正直なところ、監査役が業務遂行に手を出せば自己監査になりかねず、本来的な回答ではないと思います。

しかしながら、まだ本格的な企業活動を開始していない段階で株式上場直前期を迎える会社においては、監査機能だけを果たす常勤監査役の存在は、「ガバナンスにおいて重要であるとは思え」ないと言われてしまいます。

まずは、監査すべき土壌づくりを助言し、時には手を出して頂ける方。会社として体をなしてからは、本来業務にシフトしていって頂ける方。ベンチャー企業の常勤監査役にはそんなバランス感覚が求められるのではないでしょうか。