先日、とある上場準備会社から下記のような相談を受けました。
「上場に向けて、監査役会を置かなければならないと聞いてるんですが、監査等委員会でもいいんですよね。どっちがいいんでしょうか。メリットデメリットを教えていただけますでしょうか。」
当方では、
「機動性の確保や役員構成員数をスリム化のためには、監査等委員会設置会社が良いように思います。とはいえ、監査役会設置会社の方がまだまだ多いですし、ガバナンス軽視のための移行ではといううがった見方をされる可能性もありますので、注意は必要ですね。」
とお答えし、下の比較表を添付しました。
上場会社においては、①監査役会設置会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社の3形態が認められています。
①監査役会設置会社:監査役3名以上、うち半数以上が社外監査役で、常勤監査役1名以上
②監査等委員会設置会社:取締役会の内部機関として監査委員会を設置。3名以上の取締役を置き、うち過半数が社外取締役
③指名委員会等設置会社:取締役会の内部機関として、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置。いずれも3名以上の取締役を置き、うち過半数が社外取締役
指名委員会等設置会社は、見ての通り監査等委員会設置会社よりもハードルが高く、東証一部上場会社の中でも僅か60社のみとなっています(日本取締役協会「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」より)。
http://www.jacd.jp/news/odid/cgreport.pdf
従って、新規上場を目指す会社にとっては、実質的に①監査役会設置会社か②監査等委員会設置会社かの選択になります。
そこで、両者の違いを比較してみるとこうなります。
項目 | 監査役会設置会社 | 監査等委員会設置会社 |
構成員 | 監査役3名以上 | 取締役から3名以上 |
社外役員 | 半数以上 | 過半数 |
常勤役員 | 1名以上 | 規定なし |
任期 | 4年 | 2年 |
取締役会での議決権 | なし | あり |
CGCへの対応 (※義務ではない) |
社外取締役を別途2名 | 監査等委員で足りる |
より導入障壁が高い(≒統制が強い)項目を青字、参入障壁が低い(≒統制が弱い)方を赤字にしてみました。
このうち、社外役員については監査役でも監査等委員でも3名であることが多い(2018年新規上場会社90社中81社)ので、半数以上でも過半数でも2名以上選任となり、大差はありません。
従って、取締役の他に監査役を3名置き、しかも社外取締役を2名以上置くことを促される監査役会設置会社より、監査等委員会設置会社の方が、より適用しやすい印象はあります。
監査等委員会設置会社は、2015年5月1日施行の会社法より適用が認められた新しい形態ですので、多くの会社は適用するために組織変更する必要があるのですが、2018年に新規上場した90社のうち、監査等委員会設置会社は19社を数え、このうち3社は常勤監査等委員が明記されていません。
ちなみに、株価への影響も言われたりします(監査等委員会設置会社は外国人投資家の受けが良い)が、公開価格に対する初値の騰落率平均で言うと、前述の19社は単純平均125%、残りの71社は100%。
これをもって、株価への影響があるとするかどうかは微妙なところですかね。。。