石の店の前を通りかかったとき。
ふと、目に入ったショーウインドウ。
そこにあったのはフラットビーズ。
第一印象『これ、大平天台の珠なのでは?』
大平天台
天台宗の僧侶用の数珠。
円盤型の珠の直径が在家向けの2倍くらいあるのが特徴。
ジーっと観て。
「これって
・穴の周辺が欠けてる
・石の色や模様が不揃い
・石の厚みもバラバラ
とかで、イマイチな品質っぽい」
と思ったり…。
まぁ、そうだよねぇ〜
と思って立ち去ろうとしたらPOPに目が吸い寄せられ…
『この棚の商品50%OFF!』
『この棚の商品30%OFF!』
「安いなら、日課念仏用に簡単な物を自作するのもありかな」
と思って、フラットビーズの価格を確認&計算したところ
『棚にあるフラットビーズ(直径12mm)を買って自作したとしたら、同じ物を木製でオーダーするより安い』
という感じだったので、買うことにしました。
日課念仏
浄土教(浄土宗など)で行われる『毎日、念仏を◯◯◯回数お唱えします』という誓約。
数百〜数千回で、通常の数珠だと弟子玉の操作が必要なので『念仏に集中し過ぎる』と、数珠を繰り間違える事がわりとある。
※特に観想念仏だと繰り間違える
念仏
定義的には『阿弥陀仏を呼ぶ』ということ。
お風呂に入って「ごくらく、ごくらく」と口にするのも念仏の一種である、と説く僧侶も居られます。
※ごくらく=西方極楽浄土のこと→極楽浄土に想いを馳せて、その名を呼ぶ→南無阿弥陀仏と同義 という解釈。
念仏の種類
【観想念仏】
密教系の念仏。
阿弥陀仏や西方極楽浄土を想い浮かべて唱えるもの。
特に阿弥陀仏の姿を想い浮かべる場合を【観像念仏】という場合あり。
【称名念仏】
浄土教系の念仏。
『念仏を唱えるだけ』というもので、黙読でも可。
現代でいう『ながら◯◯』みたいなのもOK、というフリースタイルが特徴。
※称名念仏でも浄土宗,真宗(浄土真宗),時宗,融通念佛宗で、意義が異なるので注意。
家に帰って、フラットビーズの数を確認。
レッドアゲート293個
オニキス172個
合計465個
※40cm程の束になったものが『1本いくら』で販売されていたため、購入時点で個数は未確認。
レッドアゲート
赤系の縞瑪瑙。カーネリアンの縞模様あり版。
オニキス
黒系の瑪瑙。ブラックアゲートの縞模様なし版。
本質的には同じ『瑪瑙』という石英系の複合鉱物。
石英系鉱物なので、広い意味では水晶の仲間。
※石英単体の結晶ではないので、水晶ではない。
レッドアゲートは…なんというか赤というより茶色?( ̄▽ ̄)
一言で言うと『柿の種』ですね、コレ…。
お菓子じゃなくて、植物のほうの。
大きさ,色,形状的に…ですね(´゚д゚`)
オニキスは特に安かったためか、オニキスと呼んで良いかどうか?みたいなグレーゾーンな品質のものもちらほら混ざっていました。
※グレーゾーンな品質=色がまだらだったり、縞模様がある部分があったりする
いわゆる、B級品ってやつですかね( ̄▽ ̄)
そんなわけで、組み立てたものがこちら。
阿弥陀如来の梵字の刻まれた石(おそらくオニキス)を親玉に使いました。
中糸はスムース糸を使用。
スムース糸
レザークラフト用のポリエステル系の手縫い糸。
撚糸ではなく組糸で、丸糸ではなく平糸なのが特徴。
用途は念仏などのカウント。
というか、それしか用途がない( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
出来たものは
重量 820g(=0.8kg)
球数 465個
という感じ。
この重量だと、持ち歩くなら
ロープを担ぐみたいに輪に腕を通して肩に掛けるか、襷掛けにするか
って感じかなぁ…。
ちなみに私的には『数珠は読誦回数を数える道具』という認識(っ ॑꒳ ॑c)
儀式などの見た目や作法が重要視されるシーンを除けば
・カウントのミスが起こり難い
・操作性が高い
・耐久性が高い
というのが重要で
「一般在家が自宅で行う毎日の読経,真言,念仏などのカウントは『宗派の正式なカウンター(数取器具)』という形状にこだわらなくても〜」
という感じ。
【購入時に見かけた不思議なこと】
石の購入時にお店の方が、石(購入する商品)に
・乾燥した葉っぱに着火して、煙に潜らせる
・水晶?のさざれ石を敷き詰めた器に乗せる
・大きな水晶の単結晶をアルミ製っぽい音叉で叩く
・火打石と火打鎌を打ち合わせ、火花を散らす
ということをしておられました。
お寺で
御守り授与の際、真言を唱えてからお渡し〜
みたいなところもあるので、それ系の商品受け渡しの式典とか儀式みたいなのかなぁ?と思ったり。
もしくは車の納車式とかそんな感じのやつの石屋さんバージョン的な?( ॑꒳ ॑ )
気になったので、調べてみたりしまして。
【乾燥した葉っぱに着火して、煙に潜らせる】
ホワイトセージというハーブの一種を焚いているっぽい。
石関係のお店では一般的に売っている物のようなので、特殊なものとか、グレーゾーンなものではない模様。
成分的には樟脳やユーカリと同じ様なものが7割ほどを占める模様。
防虫効果がありそうな成分構成だなぁ…と思ったり( ॑꒳ ॑ )
発祥を調べたら、アメリカの先住民族が儀式などの際に用いるものだそうで。
1960年代にヒッピー文化が日本に入ってきたとき、一緒に入ってきたっぽい。
基本的には、信仰活動の一部のようです。
【水晶?のさざれ石を敷き詰めた器に乗せる】
情報を探すと「水晶に載せると石が浄化されてパワーが充填される」というのはたくさん出てくるのですが…
発祥は探しても見当たらず。
更に情報を漁ると、1913年に発行された『宝石と鉱物の文化誌』という書籍を土台として。
ヒッピー文化と一緒に日本に入ってきたものが大元になっているような印象。
図書館などで古い本を漁ってみた感じだと
1970年代 ノストラダムスの大予言を発端とするオカルトブーム到来
のあたりで、ヒッピー文化の鉱物関係(主にパワーストーン関係の部分)がオカルトブームに取り込まれて、情報が混ざって判別不能になってる…
水晶の上に置いて「石を浄化」や「パワーを充填」などの考え方の大元はどこかなぁ?と思うのですが…
1970年代のヒッピー文化全盛期には
『石を水晶の上に置いて浄化する』
『水晶の上に置いてパワーを充填』
みたいな考え方はなかった、もしくは主流ではなかった模様。
(情報が見つからなかった)
角度を変えて
・アメジストドーム
・水晶クラスター
などの結晶の集合体に載せるのが推奨されているので、主要産地であるブラジルやウルグアイなどにそういう文化があるのかな…?
と思って探してみましたが、見つけられず…
『石の浄化〜』的な話を探すと
・2000年代から関連情報が出てくる
・筆者などで、石に関わった経歴について『15年以上』『20年以上』『25年くらい』という表現をされている
※計算すると明確に1990年代以前を経歴に含める方がほぼ見当たらない
※1990年代の終わり頃にギリギリ食い込むかどうかあたりが最古っぽい
という印象。
情報密度からすると
主に2000年代から行われるようになった
という印象なので、ここ四半世紀くらいの流行の考え方なのかも?
もしくは、2000年代以前は石のパワーは永遠だと思われていたが
『パワーが低下することがわかった』
『石にも疲労が起こることがわかった』
『石にパワーを充填する方法が存在することがわかった』
みたいなブレイクスルーがあったのか…
発祥は謎(´・ω・`)
【大きな水晶の単結晶をアルミ製っぽい音叉で叩く】
クリスタルチューナーによるヒーリング、というものらしい。
発祥を調べたら
1790年 スコットランド医師・化学者であるウィリアム・ カレンの研究で音によるカウンセリングが発表され、 カウンセリングアイテムとして使われるようになった
という情報がネットに多数。
キーワードは『4096Hz』あたりでしょうか。
科学的な話っぽいので、ガッツリと情報を漁った結果〜
スコットランドのウィリアム・カレン(1710年4月15日 - 1790年2月5日)
・エディンバラ医学校の教授
・グラスゴー王立医学・外科学校の学長
・スコットランド王の侍医
・冷凍技術の根本を築いた学者
1711年 音叉が発明される
発明者 イングランドのジョン・ショア(1662年 - 1751年)
1806年 アルミニウムが発見される
発見者 イングランドのサー・ハンフリー・デービー(1778年12月17日 - 1829年5月29日)
1850年代 アルミニウムは高価な希少金属扱い
1886年 電解製錬法の発明され、工業的な量産が可能になる
発明者 アメリカのチャールズ・マーティン・ホール(1863年12月6日 - 1914年12月27日)
発明者 フランスのポール・エルー(1863年4月10日 - 1914年5月9日)
1930年 周波数を示す単位が制定される
ドイツのハインリヒ・ルドルフ・ヘルツ(1857年2月22日 - 1894年1月1日)
( ゚ー゚)う〜ん…
1790年2月5日に亡くなられた方が1790年に発表ということは、亡くなるまでの36日間に発表した、ということになります。
冷凍技術の根本を築いた方で、王様の侍医を務めて、王立大学の学長を〜みたいな知名度だと、事故や病気で亡くなったのなら記録されるはずだけど…
死因に関する情報が見当たらないので、おそらくは老衰ではないかと推定できます。
時代的に考えて、約80歳はかなりのご長寿ですし。
そうすると、1790年に発表というのは、ご本人には無理がありそうな気がする…
没後に論文が発見されて〜パターンかなぁ?
時代や地域的に音叉は存在しているので、音叉を使っているのは時系列的におかしな点はなし。
音叉は通信販売のサイトなどをみると、見た目通りアルミ製な模様。
ステンレスではなく、アルミ製である理由は不明。製造コストとかでしょうか…?
医療用の音叉などの精度や耐久性を求められる業務用の音叉はステンレス製なので、アルミ製で精度や耐久性が確保できるのかなぁ…
時系列的に考えると『伝統的に』というわけではなさそうです。
周波数については近代に入ってからかな。
正確に計測するには音を電気信号に変換する必要がありますし。
音叉などの振動源を水に浸ければ物理的な波形として視認可能ではありますが、4096Hzだと電子的に処理しないと計測できませんね(・_・;
4096Hzという数値の根拠を調べたら
『地球の共振振動の基本周波数の9オクターブ上げた倍音』
というもののようで。
詳しく調べると
1952年 シューマン共振が発見される
発見者 ドイツのヴィンフリート・オットー・シューマン(1888年5月20日 - 1974年9月22日)
【火打石と火打鎌を打ち合わせ、火花を散らす】
火打石と火打鎌(火口金)を使った切り火による魔除けと思われます。
日蓮宗が祈祷などの際に行ってますね( ॑꒳ ॑ )
※十三宗五十六派に数えられる方の日蓮宗です。
発祥を調べたら、検索に出てくるのは
『仕事に行く人を送り出す』みたいな場面で切り火を行う
という時代劇のワンシーンの紹介。
この習慣,風習的な意味での切り火は、主に明治時代に広まり、定着した模様。
※マッチが普及して火打石が売れなくなった小売業による販促キャンペーンが定着した説あり。
明治時代に広まったなら、時代劇の『仕事に行く人を送り出す切り火』は歴史考証的に間違いか?
というと、これは微妙なところで…
販促キャンペーンを行うにしても、そこに説得力を持たせるための根拠が欲しい
例.チョコレートを贈って想いを伝えましょう!→聖バレンタインの逸話を引用
じゃあ、どこから説得力の根拠を持ってきたのか?といえば、神道から持ってきた説があり
氏子などが、そういう習慣を持った地域はない
とは言い切れない(一社の故実の存在する可能性がある)ので、確実に間違いである、とも言い切れない
みたいな感じで、イマイチ曖昧。
切り火の知名度としては、時代劇の地上波放送が終了して久しいですが、アニメ(鬼滅の刃)の影響もあり、若い世代でも知っている模様。
神道でいう『清浄な火』は『忌火』と呼ばれますが、これは主に火鑽で熾した火。
火打石で熾す火より手間と時間が必要なので、『火によるお浄め』として考えると火打石でも略式になるのではないかな、と…。
[火打石の原理]
『火打石』で『火打鎌』を削って、火花を生じさせる
簡単にいうと
原始的な方法で簡易的な『火花試験』を行い、着火のための熱源としている
という感じな模様。
※火花試験=JIS規格に定められている金属の試験方法の1つ
[火打石]
火打石は『モース硬度7以上』の鉱石であれば何でも可、とのこと。
モース硬度7以上の根拠は
『加熱急冷による硬化処理した鉄が、モース硬度基準で5〜6相当』
と言うのが理由らしく、大雑把に言えば『鉄より硬い石』であればなんでもいい模様。
材質的には
・水晶(石英の単体結晶)
・メノウ(石英の小さな結晶の集合体)
・チャート(プランクトンなどの死骸(殻に石英成分が混じってる)が千年単位で堆積したもの)
などの石英系鉱物を選べばOKっぽい。
石英系鉱物以外だと、黒曜石なども使用可能な様です。
※黒曜石=割ると刃物のように鋭利な加工が可能な石(石器の材料)
[火打鎌(火口金)]
火打石による発火(火花が飛ぶ)の原理は
『金属が、高硬度の物質に削られ、その際に火花が生じる』
というもの。
火花試験の判別の資料をみる限り、火花の量は
・金属の成分
・削られる金属の量
という2つの要素で、おおよそ決まる、とのこと。
このあたりについて詳しく知りたい場合は『火花試験』などで検索するとわかるかと思います。
古来から火打鎌に使われてきたのは鉄。
『石で叩けば火花が飛ぶくらい硬い』
というのが条件で
硬過ぎる→石が削れるだけで、火花は飛ばない
硬さが足りない→金属が凹んだり傷が付くだけで、火花は飛ばない
ということから、適度な硬さというのが難しいものの様です。
日蓮宗の僧侶に訊いてみたところ
発火合金やマグネシウムなどの使用は状況次第
とかなんとか。
※発火合金(フェロセリウム,ミッシュメタルなど)
セリウムという金属(160℃で発火する)を主成分とする合金。
フリントロック式ライター(Zippoなど)の『石』,アウトドア用のファイアスターターのロッドなどに使用される。
※マグネシウム
法律上、危険物の第二類に分類される可燃性の固体。
非常によく燃える金属。
人が大勢集まる儀式で
『離れたところからでも、火花が見えるように』
という配慮で使用する
火打鎌を使用すると『石の破片』が飛び散り、屋内(特に靴を履かない場所)で行うと危険なため
破片が飛び散り難く、屋内でも比較的安全に使える
という安全面から、檀家の仏間での法事では発火合金を使用する
など、使用理由は色々な模様。
僧侶の中には
『火花が散るほどの激しい金属音』が
・魔を祓う
・空間を清める
と説く方もおられるので、切り火の解釈自体も色々な模様。
※この解釈では『火』だけでなく『音』も重要な要素である、ということになるので発火合金の火打鎌ではダメという事に…。
ちなみに発火合金を使用した火打鎌は
『握る部分(木材)に、棒が接着剤などで固定されている』
という見た目でわかりやすい構造が特徴。
扱い易さや安全性から、伊勢の猿田彦神社などで授与されているものは発火合金が採用されているようです。
〜余談〜
『火打石と火打鎌を打ち合わせて火花を飛ばす』という動作について
・最適な材質を使用する
・適切に打ち合わせ、効率的に火花を生じさせる
ということを徹底的に最適化していくと、どうなるのか?と考えたところ
『オイルの入っていないZippoライターで着火動作(火花を飛ばす)を行う』
というようなところに行き着きました(私的な結論)