>巡拝の際に、鞄や杖などに付けます。
>その音色は不魔の役割を担います。
>特に歩き遍路のお遍路さんにおいては山道などで、自身の存在をまわりに知らせる役目もあります。
>現在では、鈴の音はお遍路さんの代名詞になっています。
調べた限りでは『持鈴』って、一般的な仏具とか寺院用仏具などではなさそうなんですよねぇ…。
というか、寺院向け仏具カタログも確認したけど載ってないっぽい。
※授与品用のカタログには載ってるところもあります。
仏具で『柄の付いた鈴』といえば
・金剛鈴
・御詠歌鈴
の2種類です。
※ガンダーベルはチベット仕様の金剛鈴なので、『金剛鈴』としてカウント。
[金剛鈴]
独鈷杵,三鈷杵,五鈷杵などの金剛杵と一緒にお盆の上に置かれてる、柄付きのでっかい鈴。
主に銅系統の合金で製作されるため、黄色っぽい金色〜白っぽい金色あたりの色をしています。
[御詠歌鈴]
お寺を讃える和歌を詠い、唱える際に使用する専用の鈴。
多くの流派は明治以降の成立で、作法,用具が規格化された正確な時代は不明ですが、おおよそ近代と思われます。
この持鈴という仏具。
個人的に疑問に思うのが『戦前のもの、とされる持鈴が見当たらない』という点。
例えば、お遍路関係の資料展示などで
・数珠
・笈摺
・遍路笠
・札挟み(納め札)
などは江戸時代〜戦前のものがあったりします。
持鈴自体、そんなに大きなものではないので、例えば
個人宅で笈摺や数珠と一緒に仏壇に仕舞われていた
という事もあり得るはず…
しかし、見当たらない。
さすがに
戦時中の金属供出で1つ残らず鋳潰された
というのは、考え難いんですよねぇ(^_^;)
なんで『持鈴』だけ江戸時代〜昭和初期のものが見当たらないんでしょうか…?という疑問が (・`ω・´;)ゴゴゴゴゴゴ
仮に現物が全く残ってないとしても、古くからあるなら巡礼者などを描いた絵巻,浮世絵などに持ってる人が描かれていてもおかしくはないと思うのですが、調べても確認できず…。
とはいえ、四国お遍路は、お伊勢参り、西国三十三所、熊野詣でなどに比べると絵巻,浮世絵などの記録自体が少ないのですが…
他にも気になるのが、霊場会の説明で
>現在では、鈴の音はお遍路さんの代名詞になっています。
となっている点。
書き方的に『鈴の音=お遍路さん』は、昔からではなく『近代に定着した』とも取れるような表現になってます。
>特に歩き遍路のお遍路さんにおいては山道などで、自身の存在をまわりに知らせる役目もあります。
とあるため、仏具というよりは、現在の『クマ鈴』的なポジション…?
熊鈴が広く普及したのは、ここ50年ほどの間だったはずなので『近代登山の常識』が知られていない時代に、クマ鈴的なものを持たせるために制定された可能性もあります。
四国の野生動物の生息状況を考えると
・日本オオカミは明治時代に絶滅。
・四国の熊生息域は徳島県〜高知県に跨がる剣山とされている(お遍路道からは直線距離で40km以上離れている)
ということから、想定しているのは猪,鹿,猿あたりでしょうか。
以前、お遍路について調べた際に
「江戸時代〜戦前のお遍路は読経ではなく、御詠歌を唱えるのが主流だった」
というのがありましたので、御詠歌鈴的な位置付けで発展,普及した可能性も…?
と思ったのですが霊場会の説明で
>巡拝の際に、鞄や杖などに付けます。
と明記されているため、御詠歌鈴とは位置付けが異なる様です。
一応調べたところ、年代的には
・御詠歌が『流派』として各宗派で成立,規格化されたのは1950年代が中心(※高野山金剛流の成立は比較的早く1926年)
・四国八十八ヶ所が現在のカタチに整備され、情報定着のために先達制度が設けられたのが1950年代
という感じなので、『近代』という範囲ではだいたい一致しますが…
四国八十八ヶ所霊場の経本に鈴を鳴らす箇所の記述がないので、勤行の鳴り物としては想定していないっぽいですね。
【結論】
色々と調べて、考えてみましたが
『巡礼用のクマ鈴』
という道具な気が…。
想定している動物は、おそらくクマではなく、イノシシ,鹿,猿あたりではないかな、と…。