尾張地域(※名古屋を中心とした愛知県の西部)特有の信仰に
「7ヶ月間の月参りを1巡とし、大随求菩薩様を7巡 参拝する」
というものがあります。

大随求菩薩様自体、知ってる人でも
「あ〜、たしか京都の清水寺の戒壇巡りのところの?」
程度のマイナーな仏様なのですが、尾張では割とメジャーですね。
メジャーといっても、境内に随求堂があったり、像が祀られていたりする感じで、御本尊ではありませんが…。

仏様としての位置付けは
・観世音菩薩の変化の一種
・御守り,護符などの『神仏頼み』の手段が具現化された存在
・ご利益は幅広く「なんでも叶う」とされる
・密教の仏様で、胎蔵界曼荼羅の蓮華部院に居られる
という感じ。



この7ヶ月、7巡の参拝をする人が得られるされるご利益は

『病気にならず、元気に長生きする。
 最後はあっさりと苦しむことなく死ねる』

という、ぴんぴんころり(通称PPK)が主な感じ。


戦争に行ってた世代あたりからは絶大な支持があったそうです。
現在の主要参拝者層はその子供世代ですが(´・_・`)

最短でも
7ヶ月×7巡=49ヶ月間=4年1ヶ月
という間、毎月参拝するということから「七七月参り」と呼びます。
※お寺により呼び方は多少変わりますが、だいたい『ななつきまいり』で通じます。


[余談]
この七七月参りでは、御血脈が頂けるため、達成者は結縁灌頂とは別の手段で仏様とご縁を頂けるというカタチになります。


この七七月参りで有名なお寺は下記の3ヶ寺。



最も盛んなのが愛知県犬山市にある寂光院

昭和25年頃に制度変更があり、現在は
・5巡=35ヶ月=2年11ヶ月で大満願
・365日いつでも『参拝した日』が御縁日
という定義になっているため、3ヶ寺の中で最も継続し易いシステムになっています。

なお、七七月参りは『連続して』とは定められていないため、参拝しない月があってもOK

詳しい説明は公式サイトの七七月参りに記載があります。



授与品は7回毎に、満願の証として
・長寿箸
・御血脈
を頂き、35回で第一回大満願として
・輪袈裟
が頂けます。


その後も7回毎に長寿箸&御血脈を。
第二回大満願にも第一回とは別の記念品を。
というように色々頂けるようですが、第二回大満願以降は非公開のため未確認。

2021年現在、第八回大満願(280ヶ月=23年4ヶ月)が居られるとのことなので、少なくとも第八回までは記念品が存在する模様。


地方の山寺で、駅からも車道(歩道がほぼない)を徒歩30分ほど。
境内も駐車場を5分ほど歩いて納経所へ。
そこから本堂まで階段を15分。
という感じで文字にすると結構な運動量なら感もありますが、広い駐車場とスロープカー(エアコン付き)があるので、アクセスはそんなに悪くはない感じ。


ご家族で運営されている寺院で、みなさん気さくな方なので
「月参りするぞ!」
というよりは
「月一で近況報告を兼ねた世間話がてら参拝に行く」
という近所付き合い感覚で行くのが長続きの秘訣な気がします。



犬山寂光院の次に盛んなのが名古屋市の八事にある興正寺
八事山 興正寺|名古屋公式ページ | 八事山興正寺は高野山真言宗の別格本山です。江戸期の開山より、尾張徳川家二代藩主光友公の帰依にはじまり、尾張徳川家の祈願所として人々と深い縁を結んできた興正寺。国の重要文化財指定の五重塔など多くの寺宝を有し、自然豊かな境内は多くの方に親しまれています。また、永代供養を伴う納骨堂を設けております。リンクwww.koushoji.or.jp

興正寺では大随求菩薩ではなく、大随求明王としてお祀りされており、通称は『ぽっくりさん』

昔ながらの
7ヶ月×7巡=49ヶ月=4年1ヶ月
という仕様ですが、犬山寂光院と同じく
365日いつでも『参拝した日』が御縁日
となっているので、いつでも始めることができます。

詳しくは公式のPDFファイルに説明が掲載されています。


授与品は
7回毎に紙袈裟守り(公式サイトの説明では御血脈)
7巡で興正寺の輪袈裟
7巡達成後のことは特に定めていないようです。


興正寺の月参りの回数を記録する証札には日付記入欄がないため、自己管理が必要。
犬山寂光院からマイカーで1時間弱、公共交通機関でも1時間半ほどなので、同日にお参りすると参拝日の記録管理が楽なのでオススメです。

興正寺は
・地下鉄駅から徒歩5分の街中にある
・本堂は平地にあり、車椅子でもいける
・広い駐車場完備
・車椅子の介助も可
・従業員数90人弱
という街中の大きなお寺なので、3ヶ寺の中で最も利便性の良いといえます。



有名ではあるものの、あまり盛んな印象がないのが愛知県知多市にある大智院

通称は『めがね弘法』
盲目の老人がお大師様におすがりしたところ、目が見えるようになり、自分の使っていたメガネ(※見えない目を隠すため、煤で色をつけたもの)をお大師様に奉納していった
という伝承のあるお寺です。

こちらも大随求菩薩ではなく、大随求明王。
通称は『ごっとりさん』


他の2ヶ寺とは異なり、縁日である5日に加えて15日を『大随求明王命日』として、その日の参拝者を対象としています。
※2021年時点で15日の大随求明王命日は行われていないため、実質的に5日のみ。


達成すれば御血脈を頂くことができますが
【5日の9時〜12時に参拝する】
という日時の制限があるため、仕事などのスケジュールを考えると達成難易度はかなり高め。


カレンダーを確認すると
『5日が土・日・祝日』
というのは
年に2〜3回程度(5月5日があるので1回は確定)
であるため、有給休暇なしだと地元の人でも1巡3年〜4年掛かる計算に。
49回の参拝達成となると30年くらいかかりそうです。


年次有給休暇を…と思うと、5日という日付は『月初』にあたるため
「月末締めの書類処理が…」
という休みを取り難いタイミングにあたります(´;ω;`)


そのため、ご縁のある人には行き易いけど、ご縁のない人には全く縁がないという仕様です(´・_・`)



その他の寺院にも七七月まいりはあります。

有名というわけではありませんが、七月七度詣りという名前なのが愛知県知立市の遍照院

上記の3ヶ寺の授与品が『御血脈』や『輪袈裟』の授与であるのに対し、遍照院は
・7ヶ月間の参拝達成で数珠玉3つ
・7巡で累計21玉を集め、略式の数珠を完成させる
という、玉集め方式。

玉集め以外にも
・戒壇巡り1回毎に白衣に押印
・21回で満願(満願の受付は旧暦21日限定)
というものもあります。
※白衣は『曼荼羅白衣』というもので『着用する曼荼羅』という位置付けになります。