人員不足を解消するために-6
6.OJTで注意すべきこと
前回、OJTの進め方についてお話ししました。
まずは、なにを、だれが、どのように教えていくか、ということをきちんと決め、その通りに実行していくことです。
ただ、そうはいっても、「時間がない」「人がいない」「教えられる人がいない」といった出来ない理由が先に立ってしまうかと思います。
でも、そういう理由で、新人育成ができないと、いつまでたっても、人が定着せず、育ちもせずに終わってしまいます。
①出来ない理由を言い訳にしない。
新人が定着するまでの間は、シフトを組み換え、通常よりも、時間帯に1名多く配
置するといった工夫をし、指導役の教育時間を確保するようにします。
最低限、7日間は、教える人がフリーの状態でいられるようにしておきます。
7日間が過ぎたら、1日1~2時間程度の教育時間が取れるよう、再度シフトを調整します。
新人がある程度仕事を覚えるまでは、他のスタッフにも負担を強いることになります。
でも、それだけの時間を割かないと、新人が職場に慣れ、定着していくことは難しくなります。
他のスタッフにも、充分説明をし、協力体制を取っておきます。
②How to do も大事ですが、Why to do も忘れずに
一つひとつの仕事を、どのようにやるのかは大事ですが、なぜ、なんのためにやるのか、ということもそれと同じくらい大切です。
介護や医療の現場に限った事ではありませんが、仕事には意味があります。
その意味をきちんと理解させておかないと、つい作業に流れてしまい、思わぬ事故につながりかねません。
③OJTは、指導役(トレーナー)だけの仕事ではない
新人のOJTは、指導担当者だけが責任を持つのではなく、他のスタッフ全員も関わっていくべきことです。
そうはいっても、他のスタッフが、あれこれ勝手に教えても、新人は混乱するだけです。
他のスタッフは、新人が今何を教わっているのか、把握しておいてください。
その上で、新人が教わった仕事をしていたときに、普通に出来ていたら褒めてあげてください。
また、新人の表情や態度を観察し、疲れていたり困っていたりしているようだったら、一言声をかけてあげてください。
些細なことですが、他のスタッフ全員が新人の名前を覚え、呼びかけてあげると、新人はホッとします。
例えば、「××さん(新人の名前)、何か困っていない?私は○○(自分の名前)です。」「××さん(新人の名前)、良く出来てたわよ。私○○が新人の頃はその仕事が苦手でねー」といったように、新人の名前をよびつつ、自分の名前も言ってあげるといいです。
新人が一つのことを出来るようになることは、一緒に働いている仲間が楽になることです。
全員で協力しながら、OJTを実りのあるものにしていきましょう。
人員不足を解消するために-5
5.OJTの進め方を工夫する
OJTとは、仕事を通じて教えることで、現場で色々なことを教える上で、便利な教育用語として使われています。
仕事を離れて教育指導を行うことはOff JTと呼んでいます。
OJTは、便利な言葉で、人があまり定着していない職場でも、「うちはOJTで教えています」と言ったりしています。
でも、実態はどうかというと、先輩職員が、その都度、自分のやり方を指示する程度のことが多いのです。
指導された新人職員は、指導の仕方が具体的でなかったり、先輩職員によってやり方が違っていたりして、とまどいます。
教える側にも言い分があるでしょう。
仕事をしながら教えるので、どうしても時間に制約がある、教えるよりもまずは利用者様のお世話をすることが先、言葉で言うよりも自分のやり方を見てもらい、覚えてもらいたい、新人に教えるのは自分の役割ではない、等々。
結局のところ、組織全体で、新人を育てることの意思統一がされておらず、育成のためのしくみが整備されていないために、OJTが名ばかりのものになってしまっているのです。
①事前の準備
a.何を、いつ教えるのか、具体的に決める
b.作業を出来るだけ、1動作3分程度に区切る
c.作業ごとに指導役を決める
d.作業の教え方を統一する
e.OJT業務一覧表を掲示しておく
②一回で教えることは、1行動(1動作)のみに絞る
a.1分間Off JT まず、簡単な説明を行う
b.3分間OJT やって見せる、やらせる、指導するを繰り返す
c.1分間コーチング 褒める、やる気を引きだす
③OJTで指導した1行動を、翌日以降、必ずフォローする
a.教えた人が確認するのは無論ですが、他の人にも確認してもらうようにする
b.出来ていないところや間違ったやり方をしていたら、3分間OJTを行う
④OJTの記録をつける
a.少なくとも、新人の入社3カ月間は、個人別のカルテを作り、指導記録を書き込ん
でおく
b.この個人カルテは、次に入社してくる新人の指導にも活かせる資料となる
最初から一人で何でも出来る新人はいません。
人材の定着のためには、最初の教育訓練が肝心です。
その場しのぎの指導ではなく、事前の準備をしっかり行い、丁寧な指導をしてください。
人員不足を解消するために-4
4.指導役を育てる
人を定着させ、育成していくためには、指導する人がいなければなりません。
親はなくても子は育つ、といいますが、企業においては通用しません。
お子さんを育てた経験のある方はお分かりかもしれませんが、子供を育てるということは親も勉強させられ、子供から多くのことを学んでいくということです。
人を指導する、ということは簡単ではありませんが、定着率を高め、早く一人前の人材になってもらおうとすれば、指導する人がいなければなりません。
指導者を育てる、と考えると難しそうですが、以下のやり方を参考にしながら進めてみてください。
①最初に覚えておいてほしい重要なことだけをまとめたテキストを作成しておく
新人が入ってきたときに、1~2週間のうちに覚えてほしいことを整理し、分かりやすくまとめておくのです。
最初からたくさんのことを教えようとすると、それだけで新人は嫌になってしまいます。
これだけは覚えておいてほしいという大切なことだけに絞って、指導します。
例えば、会社の理念、施設の概要、出勤や退勤のやり方、一緒に仕事をする人たちの役職や名前および呼び方、利用者へ接するときの挨拶の仕方といったことです。
②最初は一人の指導役が教える
最初の1~2週間は、一人の指導役が教えることとします。
いろいろな人から、あれこれ指示をされると、それだけ新人は混乱してしまいます。
最初の指導役を任された人は、①の最初に覚えてほしいことを、OffJTでまず教え、 そののち、一緒に付き添って教えていきます。
この段階の指導役は、別段、ベテランの方でなくてもいいのです。
1~2年前に入った経験の浅い職員であってもかまいません。ただし、何を教えなければならないのかということを、きちんと教えたうえで任命してください。
③分担制にする
最初の段階が過ぎたら、次は、仕事の指導役と、それ以外の指導役を分けてみることです。
仕事の指導役は、仕事のレベルや性質によって、指導する人が変わってかまいません。
ただし、指導する人のやり方が、その職場内では絶対的に正しくないといけません。
他の先輩職員が、その仕事の指導役であるAさんのやり方はおかしいから、本当はこうするのよ、と新人に言ったとしたら、新人は混乱します。
指導役のスキルを見極めたうえで、任せたら責任を持たせて指導させることです。
新人が悩むのは仕事のことだけではありません。
人間関係やちょっとした仕事の疑問を言いだせないなど、悩みを抱えていきます。
そうした悩みを親身になって「聴いてあげる人」が必要です。
仕事の指導役と悩みを聴いてあげる人が同じであってもいいのですが、仕事が忙しかったりすると、ついつい聴いてあげられなくなります。
④指導役は、注意や叱ることではなく、褒めて伸ばすこと
指導する人に求められることはいくつかありますが、一番大事なことは、褒め上手になることです。
人は褒められると、やる気を出します。ちょっとした事を褒めてあげればいいのです。
最初から子育てが上手な親はいません。
特に最初の子の子育ては苦労します。でも2人目、3人目となっていくにつれ、慣れてきます。経験が自信を産んでいくのですね。
新人の育成も同じです。
指導役となる人に、最初から完全を求めるのは酷です。
施設の責任者が、指導役をフォローしていくことで、指導役も育っていきます。
責任者も、指導者の良い点を見つけて褒めてあげてください。
