昔、津田沼(習志野)に住んでいた頃のことです。
ベロベロに酔っ払って、多分、東京方面から乗ったはずなのですが、
帰宅途中の電車の中で爆睡してしまい、気が付いたら「大船」にいたことがありました(津田沼と真逆)。
「えっ、ここどこ?」
その後、詳細は覚えていませんが、とりあえず酔いながらも、電車に乗り、「津田沼」の駅で降りてベンチでひと眠りし目が覚めたら、漢字三文字は同じだけど、実際は「津田沼」ではなく「木更津」でした(惜しい)。
これから飲み会が増える時期ですね。
始点と終点を折り返す酔っ払いさんも増えると思います。ご注意くださいね。
------
そういえば、以前書いた記事をM&A Online様が取り上げてくれました。
ご興味のある方はお読みくださいませ。
【法人税】 ご質問 欠損金が引き継げる適格合併に該当するか?(1)
https://maonline.jp/articles/tekikakugappei-1
【法人税】 ご質問 欠損金が引き継げる適格合併に該当するか?(2)
https://maonline.jp/articles/tekikakugappei-2
【法人税】 ご質問 欠損金が引き継げる適格合併に該当するか?(3)
https://maonline.jp/articles/tekikakugappei-3
-----
さて、消費税の話です。
消費税が平成元年に導入され28年経っています。
3%→5%→8%と税率も上がってきました。
国から見た税収も、消費税約17兆円、地方消費税約5兆円と、所得税や法人税などと肩を並べる主要税目の一つとなりました。
(財務省「国税・地方税の税目・内訳」
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/001.htm
しかし、消費税の世界では、簡単なようで複雑な制度があったり、難しくはないんだけどちょっとした届出書1枚で何百万円も「損」してしまうようなケースがあるのも事実です。
しかも、過去の3%時代よりも、今は8%(今後10%になる予定)ですので、その影響額は本当に大きいものです。
会社自体が届出書を出し忘れた場合は現実に「損」をしてしまうのは事実ですし、顧問税理士・顧問会計事務所が届出書を提出し忘れた場合は納税者から訴えられてしまうケースもあります。
-----
今回は
「やっべー!届出書、忘れちった!テヘペロ ( ゝω・´☆)」
という場合に、
「もしかしたら、そういう検討もありかもね」
ということを書いてみたいと思います。
-----
実務上、よくある届出書のうち代表的なものの提出期限を見てみます。
この提出期限というのは実務上は「とってもとっても」大事です。
消費税導入当初は多少の提出遅れも目をつぶってくれましたが、今ではそんなことはありません。1日でも提出が遅れれば、その日付通りの取り扱いとなります。
たった、1日遅れで数百万円、数千万円の損失ということだってあり得ます。
例えば、ですよ。
消費税の免税事業者である法人さんがあるとします。
その会社が本社ビルを税込1億800万円で建設するとしましょう。
この場合、(色々複雑な規定はありますが省略します)
「課税事業者」であれば消費税800万円は戻りますが、
「免税事業者」のままであれば消費税800万円は戻りません。
なぜなら、「免税事業者」は消費税法第46条「(還付を受けるための申告)」に規定する還付申告書を提出する権利すら認められていないためです。
消費税法第46条1項には「事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)」と明確に免税事業者が除かれているためです。
ということは、「免税事業者」は消費税法第52条の「(仕入れに係る消費税額の控除不足額の還付)」を受けられないのです。
しかし、消費税法第9条第4項に規定する「消費税課税事業者選択届出書」を「提出期限」までに提出していれば、本社ビルの建設にかかった消費税800万円は戻ってくるのです。
上記は単純にした事例ですが、このように消費税の届出は、特に中小零細企業にとっては大きな意味を占めることがあるのです。
-------
消費税の届出書の提出期限については、どんな時でも、念のため確認することをお奨めします。
正確で、かつ、信用性が高いのは「消費税法」の原文です。カッコ書きの中に大事なことが書かれていますからね。
もちろん、誰でも無料で読めます。
消費税法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63HO108.html
消費税法施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63SE360.html
消費税法施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63F03401000053.html
なお、この「法」「施行令」「規則」の関係については
に書きましたが・・・
簡単におさらいしますと、、、
消費税法は、大枠の法律を、国民の代表たる国会議員が集う国会で決めたものです。
そして、細かい部分を消費税法施行令(内閣府令)や消費税施行規則(省令)で定め委任しています。
消費税法を木の幹に例えると、消費税法施行令は枝、消費税法施行規則は葉と言えるかも知れません。
しかし、どれも実態は「消費税法」そのものですか施行令も施行規則も大事なものですし、消費税法・施行令・施行規則はあくまでも法律ですから、国民も税務署も司法(裁判官など)も拘束します。
(対して、”通達”は、国会は通過しておらず、国税庁長官が国税庁の部下に発遣しているものなので、税務署・税務職員は拘束されますが、必ずしも国民や司法(裁判官など)を拘束するとは限りません。
ただし、余りに不合理でなければ、課税の公平等の視点から通達を準用する判決はあります。)
-------
しかし、消費税法を読みなれていない人からするとちょっと法律を読むのはキツイかも知れません。書籍として見やすく、かつ、信頼性が高いのは、個人的には、財務省の外郭団体である大蔵財務協会さんの「図解消費税」だと思っていますが、普通の会社さんではあまり買わないですよね。
そうすると、無料で見れて、かつ、正確で、比較的分かりやすく書かれているのは国税庁のHPだと思います。
国税庁HP「税務手続の案内>消費税」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/mokuji.htm
こちらで各種届出書の提出期限も書かれています。
中小零細企業の実務上、よく出てくる代表的な4つの届け出について見てみます。
① 消費税課税事業者選択届出手続
免税事業者が課税事業者になることを選択する場合の手続です。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_01.htm
[提出時期]
適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)
※ 要するに、適用を受けたい課税期間の前日までに税務署に提出すれば課税事業者を選択適用できる、ということです。
なお、「カッコ書き」も実務上は大事です。「(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)」とありますから、例えば、会社を新しく立ち上げた場合や、休眠していた会社が事業を再開した場合、個人事業者の場合も同様に、事業を開始した場合や、いったん休眠していた個人事業を再開した場合なども該当するのです。
② 消費税課税事業者選択不適用届出手続
課税事業者を選択していた事業者が選択をやめよう(免税事業者に戻ろう)とする場合の手続です。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_02.htm
[提出時期]
免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日まで。
ただし、消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。また、調整対象固定資産を購入した場合にも、この届出書を提出できない場合があります。詳しくは、記載要領をご覧ください。
③ 消費税簡易課税制度選択届出手続
簡易課税制度を選択しようとする場合の手続です。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_13.htm
[提出時期]
適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)
ただし、調整対象固定資産や高額特定資産の仕入れ等をした場合には、この届出書を提出できない場合があります。詳しくは、記載要領をご覧ください。
(注) 簡易課税制度を選択した場合でも、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間については、簡易課税制度を適用することはできません。
④ 消費税簡易課税制度選択不適用届出手続
簡易課税制度の選択をやめようとする場合の手続です。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_14.htm
[提出時期]
適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで。
ただし、消費税簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。
-------
とりあえず、代表的な4つの届出書を挙げてみました。
どれも、適用を受けるときは
「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」
適用を受けるのをやめるときは
「適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで」
ですよね。
「課税期間の初日の前日まで」とは、例えば、3月決算の会社であれば、3月31日まで、ということです。
(3月決算の会社が5月申告の手続きのときに気付くことがありますが、時既に遅し、ということです。)
要は、「後出しジャンケンは認めない」という考えが基本にあり(それだと有利不利で選択することがあからさまなので)、
さらに、「適用・不適用は課税期間が始まる前に決めてね(提出してね)」という考えがあらわれているのです。
-------
実務上ありがちなのが、決算日より後の決算手続きの時に「提出忘れ」に気付くことです。
「あっ!これ届出を出さないといけなかったじゃん!」と気付いても、その時には「既に次の課税期間」が始まっているからです。
-------
例えば、冒頭に書いたような
「本社ビルを建てる当期が開始する前に課税事業者選択届出書を出さないといけなかっんだ!」(課税事業者でないと還付申告ができないため)
とか
「本社ビルを建てる当期が開始する前に簡易課税制度選択不適用届出書を出さないといけなかっんだ!」(簡易課税では実額による消費税の還付が受けられないため)
などのケースにぶち当たってしまうことも考えられます。
【関連記事】
そんな時、実際にやるかやらないかは別として、次のような選択肢があり得ると思うのです。
(1) あきらめる
(2) 本社ビルの建設完了時期を遅らせる
(3) あきらめない
あきらめない その① 決算月の変更(事業年度の変更)
例えば、3月決算の会社で本来は3月末までに届出書の提出が必要だった。
しかし、今は5月で、本社ビルは6月に完成してしまう。
というような場合、決算期を5月に変更して、届出書を5月末までに提出する、という方法もあり得ます。
これは、消費税法第19条で法人の課税期間を「その法人の事業年度」と定義しているためです。ですから、法人の事業年度を変更すると、消費税法上の「課税期間」も同時に変わるため、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」「適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで」に適合できるようになるのです。
事業年度の変更は一般的な株式会社の場合、株主総会決議による定款変更で可能です(登記は不要です)。もちろん、みだりに何度も事業年度を変更するのはあまり好ましいことではありませんけどね、一応、こういう考え方もあるのです。
(注) 個人事業者の場合、消費税法の世界では「事業年度」という概念はありません。消費税法第19条第1項1号で原則の「課税期間」は「一月一日から十二月三十一日までの期間」と定められているので、この「事業年度変更」の方法は採用できません。(後述する「課税期間の短縮」は個人事業主でも可能です。)
あきらめない その② 課税期間の短縮
届出書の提出期限は「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」「適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで」とされていますから、
消費税法第19条第1項3号~4号の2に定める「課税期間の短縮」で対応することもあり得ます。これであれば事業年度を変更せずに対応できる、あるいは、個人事業者にも適用できる、ということはあります。
「課税期間の短縮制度」について詳しくは国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6137.htm
をご覧ください。
例えば、個人事業主で本来は昨年の年末までに届出書の提出が必要だった。
しかし、提出していないことに気が付いたのは5月で、本社ビルは6月に完成してしまう、、、、というような場合、6月から課税期間を短縮し、出書を5月末までに提出する、という方法もあり得ます。
なお、課税期間の短縮は期首から3ヶ月ごとの期間に短縮する方法と1ヶ月ごとの期間に短縮する方法があります。
上記の事例ですと、3ヶ月短縮を”個人事業者”で選ぶ場合、1/1~3/31、4/1~6/30、7/1~9/30、10/1~12/31しか選べません。(つまり、個人事業主の場合は必ず1月1日からカウント)
そうすると、”個人事業者”の場合、「提出していないことに気が付いたのは5月で、本社ビルは6月に完成してしまう。」という事態であれば、3ヶ月短縮では間に合わないので、1ヶ月短縮(つまり毎月型)となります。それであれば、5月末に届出書の提出が間に合います。
ただし、課税期間の短縮は、文字通り、「課税期間そのものが短縮」されますので、毎月、決算をしてきちんとした確定申告書を提出する必要がありますし、当然、課税売上割合の計算などもその課税期間ごとの計算になったりします。そして、いったん課税期間の短縮を選択した場合、最低2年間は継続適用する必要があるのでご注意ください。
(注) 課税期間短縮の特例は、本来は輸出事業者等の課税仕入高が課税売上高よりも多額 になる事業者(例えば、輸出業者など)について、消費税の還付を1年に1度ではなく3ヶ月に1度又は毎月受けることができるよう配慮して規定された制度ですが、このような使い方も可能なのです。
-----
上記に書いた「届出書提出を失念した」ケースのほか、
① 多額の非課税売上が発生するケース
(例えば、土地の譲渡が発生するような場合など。
なお、たまたまイレギュラーな土地の譲渡が発生して課税売上割合が著しく変化するような場合には「課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」という方法も検討の余地がありますのでご注意くださいね。)
② 多額の課税仕入れが発生するケース
(例えば、巨額の設備投資をする場合など。)
などでもこれらを応用して検討する場合もあるかも知れませんね。
「事業年度」の変更や、「課税期間」の短縮は、「課税期間そのもの」を変更することになりますから、課税売上・非課税売上高や課税仕入れが帰属する「課税期間」に影響がありますし、また、「課税売上高」は「課税期間」ごとに計算する(※)ためです。
(※) 消費税法第三十条(仕入れに係る消費税額の控除)第6項
「課税売上割合とは、当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。)の対価の額の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政令で定めるところにより計算した割合をいう。 」
→ 課税売上割合の計算となる期間は「事業年度」(法人)や「その年」(個人事業者)とは書いてありません。あくまでも「課税期間」と規定されています。
-----
上記はあくまでも「こんな方法(事業年度変更や課税期間の短縮)、考え方もあるよ」という事例をご紹介しただけですので、頭の片隅に入れて置いてもらうだけで結構です。
ただ、多少手続きが面倒でも、数百万円、数千万円が助かるという場合もあり得ますからね。
実際に適用するかどうかは、色々検討する事項があると思うので、顧問税理士さんと打ち合わせをした方が良いと思います。
あ、ついでに言っておきますと、個人事業者の上記のような届出(課税事業者選択届出、課税事業者選択不適用届出、簡易課税制度選択届出、簡易課税制度選択不適用届出など)の提出期限は12月末ですからね、ご注意くださいね。