33歳の不治の病を患った窓の掃除を仕事とする主人公のジョンは、ひとりっきりで4歳の息子マイケルを育てている。自分の代わりになる家族をマイケルに残すため、養父母探しが始まるというストーリー。
原題は「Nowhere Special」、「特別な場所などどこにもない」という意味合いで良いのでしょうか。
ジョンは、トラック運転手のお父さんに4歳頃まで育てられたのち、施設や養父母を転々とした。生い立ちと境遇は恵まれず、労働者階級で、友達も多くなく、お金にも余裕はない。ないものの方が多い人生にも関わらず、さらに病で行き場を失っても、自立し誠実に静かに人生を歩んでいる。腐らずに人生を受け入れている。マイケルに向けられる温かな視線、時折見せる切ない表情が堪らない。
ジョンのように真っ直ぐに生きている人が、報われてほしい。これ以上不幸が訪れないでほしい、と思わずにはいられない。
根強いイギリスの階級社会、インドのカースト。前者ほどあからさまでなくても、生まれつく社会経済状況(SES:Socialeconomic status)の差は、どこの世界にもありふれている。そして、それが、その後の人生に多かれ少なかれ差を生じさせることは、誰もが気づいている。努力をして、同じところにたどり着いたとて、それまでの障壁の多さは異なる。ただ、持つものほど、そのことに鈍感だと思う。
だから、上野千鶴子さんが、国立にも関わらず親の平均年収が最も高い東京大学の入学式で祝辞として送った言葉には、意義があった。
頑張ることが許される環境があり、頑張ることが当然と思え、頑張ることを妨げるのではなく背中を押してくれる環境。
それは、とても恵まれていると自覚すること。そして、自分が持ち得たものを、自分のためだけにではなく、誰かのために使うこと。
人々が、もっと優しく、フェアで、合理的で、寛容で。そうありたいと強く願う。
