幼い頃、穏やかな海が見える家に引っ越して来た。 
あれから30年余り波の音と海沿いを走るパイパスの継ぎ足しをカタンカタンという音とトラックの排気音やモンスターバイクの地を揺るがす様な太いエクゾノーストを響かせ長い直線を隣町あたりまで響かせる音を子守唄に寝たのを思い出す。 
バラックを積み立てて作った様な二階のベランダでウイスキーを回し飲みしながらタクティクスとオイルを染み込ませたジッポーライターでセブンスターに火を点けては仲間と過ごした。 
ベランダからはいつものパイパスの排気音とカタンカタンという音が定期的なリズムを繰り出しは消えてまた向こうからくる車やバイク、トラックが同じリズムを繰り広げる。 

空気がピンと張り詰める真冬の空にコロンの匂いとポマードの匂いが入り混じった淡い気持ちと行き果てのない情熱が入り混じったため息と一緒にタバコの煙を外に放った。 

下から見れば月明かりに照らされた黒い影と小さなオレンジの玉が光っては薄れそしてまた動いては薄れる怪しいベランダだろうが、この土地には深夜に起きている人間は殆ど居ない、朝方に来るのは新聞配達員位だ。