自分がまだ三十歳代だったころ、縁あってカリフォルニア州バークレーにある老夫婦のお宅に２週間ほどお世話になったことがあります。所謂ベッド＆ブレックファーストの形式を取っていたために朝食はご主人のジョージが毎朝作ってくれました。おしゃれで生活スタイルや食べ物にこだわりを持つジョージの朝食、うまかったなあ。３０年近く前の話です。
一番おいしかったのは、イングリッシュマフィンのサンドイッチでしょうか。厚切りのベーコンをカリカリに炒め、半熟玉子とレタス、トマト。マフィンも焦げ目がつくくらいにしっかり焼いて。もっとおいしかったかもしれません。ある日食卓に乗ったドーナツ。アメリカサイズの大きなドーナツで揚げたてでした。しみじみした甘さ、ミルクの香り、さくっとした食感。アメリカのドーナツって、やたら甘いばかりで、その割には大学でよくコーヒーブレークがあるとコーヒーウォーマーの隣には必ずドーナツがお盆に乗せられて置いてありました。ジョージの朝ドーナツは、今でもその味を超えるものに出会っていない我がベストワンです。
この日、Ａさんが有名なドーナツだって買ってきてくれたのが、フロレスタのネーチャードーナツです。自然、天然をキーワードにしてめきめき売り上げを伸ばし、ＨＰによれば創業８年で既にショップも全国展開してます。旨い、安全、安い、という特に小さな子供さんをもつ親達や女性に広く受け入れられ、今勢いのあるドーナツショップのようです。
最近都会では本当に小さな間口１間でショーケースがひとつ、なんてドーナツやさんに出くわすことがあり、楽しい時代になったものです。その小さなショップがそのままで繁盛するのか、全国展開するまでのビジネス拡大をはかるのか、それは味とはまた別の次元の才能に関わることですが、フロレスタは小さなショップではおさまらない何か特別のものがあるようです。
Ａさんが買ってきたのは、デフォルトのネイチャーとチョコレート。さっそく、いただきます。見た目はちょっと小ぶりで、食べて最後までおいしいと感じる大きさ、とか、売る値段とかでこの大きさを選んだのでしょう。まずネーチャーをいただきました。これは、最近食べたアメリカフランチャイズのお店（ＤではなくＣ）のドーナツと比べると、その甘さや風味がまさにわれわれの懐かしいドーナツにいかに近いか、ってよく分かります。これはヒットする味ですね。素材を感じながらもほんのり甘い味に、しゃれた新鮮さを感じるくらいです。チョコはさすがにもうちょっと刺激的で、その分ちょっと素朴さが消え去りますが。
このドーナツのような味は、ある意味盲点だったような気がします。ホットケーキの生地と同類のドーナツに囲まれている現況では、この素朴な味が貴重に思えるのですから不思議です。今、味のバリエーションもどんどん増やしているようで、今月は北海道のあんこが限定で売ってます。最後に帰る味ネイチャーがある限り、いろんな味を安心して楽しめる、そんな感じがしました。
フロレスタ祖師谷大蔵店
東京都世田谷区祖師谷３－１－２４
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