このあたりにキジが住んでいます。




6年前、この畦道を走っていたら前方に変な生物が見えました。

鳥のような姿をし、鈍い光を放ち、真っ赤な顔をしてこちらに突進してくるではありませんか!




「ぎゃあああ!

妖怪!

インベーダー!」




堪らずブレーキを踏みました。

謎の生物はギリッとこちらを見ています。




「あ……そういえば……

見たことある」



びっくりこいて吹っ飛んだ記憶の整理がつきました。




それは昔話の挿絵でしか見たことが無かったキジでした。


こんなところにキジがいるのでしょうか。

見間違いではないかと思いました。




仲良しの諸先輩方に聞いてみると、

「ああ、たまに見かけるぞ」

「ずいぶん昔から居たわよね」

とおっしゃるのです。



それならまた出くわすことがあるかもしれません。

恐怖は楽しみに変わりました。

わざわざこのあたりを通るようになりました。


ところが、あれ以来まったく……です。


「そんな前からいたのなら、年取ってあの世にいるかもしれない。ある寒い日の夜に、どこかの家で鍋の具になったのかもしれん」

私より長くここに住む宿六は、そんなことを言いやがりました。

まったく……ロマンよりマロンな輩です。


昨年、もうすっかりキジのことなど忘れ去った頭で運転していると、秋には少しキツすぎる陽射しを鈍く反射させながら、畑の隅っこでぴょんぴょんしている大きな鳥がいました。



アイツです。




キジは生きていたのです。




思いがけないロマンティックな再会に、どれだけ私の血圧が跳ね上がったことでしょう。


その翌朝、マロンティックな宿六を駅まで送ったついでに、畦道を無駄にぐるぐる見回りましたが、キジには出くわしませんでした。




この景色のどこかに、あのキジがいると信じ、また一年過ぎました。



諦めるという言葉を知らないワタクシは、この辺りを通過する折、時にはわざわざ回り道して農道に突入し、キジの姿を探し求めてウロウロしています。

正直な話、エリアの不審者情報メールに「紅白の怪しい車両に注意」と出てきてもおかしくないじゃないかと思うくらいです。

私が見かける立場だったら通報しますから(笑)


今月上旬、昨年この写真を撮ったあたりの畦で、身を隠したつもりらしいメスのキジがむぐらむぐらしていました。

(余談ですが、『頭隠して尻隠さず』とは、キジのこんな様子のこと)



「いる!やはりこのあたりが彼らの生活圏だ!」



私は確信しました。


謎の生命体と見間違えたのもココ。

畑の杭に堂々と止まっていたのは隣の畑。

隅っこで踊っていた畑は少し北側。


今年こそねぐらを突き止めてやろうと思い、徘徊に熱が入りました。


雑草が道に迫り出して車が通りづらい箇所。

あの辺で去年出くわしたなぁと思いながら、そして雑草を避けながらゆっくり走っていくと、前方の茂みからハトでもカラスでもない鳥類の尻が見えました。


「いた!」


そっと近づくと、草むらの中にメスがいました。

しかも2羽。


こんな近くに胡散臭い人間がいるのに、体色によほど自信があるらしく自分は見えてないと思っているのか、あるいは間合いをとっているのか、キジは全く動きません。


しかし、それに慢心してスマホを向けると、どこにいるやら見失ってしまいます。


保護色ブラボー!

ビバ自然!


感服しながらとにかく撮りました。


目玉しかわかりません!www


さぁ、どんどん行きましょう!

この勢いなら、私を脅かしたオスにも、また出くわすことでしょう。


去年「この景色のどこかにキジはいる」と撮った中に、たしかにキジは住んでいました。

私の野生の勘も、捨てたもんじゃありません(笑)