Special thanks:タケ@ミカヅチさん
アニメ第2話『深淵にて』の裏側——ピオーズ視点。
なお本編とは多少描写が違う所があります、ご了承ください。
「僕も行こうか」
夜遅く、店と併設している家の奥に存在する黒い扉。
黒の巣スタッフですら立ち入り禁止の場所には、シャドウランク専用ロビーへの入口と繋がってる。
ナナミ自身、シャドウ関連は中立を貫いている理由――それは如何なる形であれ、シャドウの方にも携わる立場であるから。
黒いローブに身を包み、髪を長くして黒染めにし、ヘアゴムでポニーテールにした後ロビーへと向かう。
その頃、とある人物がシャドウランクのロビーへと訪問していた。
「それにしてもここは、噂通りきな臭い場所だな。こんな所でまともにバトスピが出来るのか?」
銀色の長髪で黒いローブを着た青年がシャドウランクのロビーを歩いていた。周囲は暗く、まるで地底世界のような場所で至る場所にネオンサインが灯っている。
賭博場、むせ返るようなタバコの煙。
表舞台が明るいコロシアムであれば、裏舞台は命を取られてもおかしくない賭け事。
そこにコツ、コツ、コツと靴音が聴こえてその人物に接触して来た。
「そうか、君がブリッツだね」
「ナナミさん!?」
「おっと……ここで僕の名前を出すのはご法度だよ。悪いけれど君の記憶から忘却させて貰う」
瞬時に彼の瞳の色が紫色に輝いたと思えば、ブリッツが膝から崩れ落ちてその場に倒れ込み、次に意識が戻った時には目の前の人物の名前すら憶えていなかった。
「申し訳無いが、リアルに関わる情報や公言は辞めて欲しい。誰が聴いているか分からないからね……改めて紹介しよう、私はピアーズと言う」
ブリッツの方は随分と印象を変えて来た様子で、公式ランク戦の方でもかなり驚かされたとピアーズは語る。
褐色肌に長髪、本人曰くバレなくて済むらしいとか。
「あれれー? ピアーズさんじゃないですか」
悪魔のようなデザイン、紫色の短髪で黒い2本の角が生えた金色の眼をしている人物が話しかけてきた。
「キミは確かザックだね」
「お! 覚えててくれたんスかー! シャドウランクでもトップクラスのジャッジに覚えて貰えてるとは感激ッスね。で、コイツは?」
シャドウランクでも公平を保つ理由で審判は存在する。
中でもピアーズは上位クラスで、審判を行ったバトルでは不正は一切許されず、例え1度でも違反したら、とてつもないペナルティが襲い掛かる事がシャドウランカー内で語られている。
「私がシャドウにお招きした、ブリッツだ」
「ははーん……弾ね。誰もが一度は憧れる名前だなぁ。よろしくな、ルーキー」
ザックが不敵な笑みを浮かべ挑発しているようにも伺える。
「よろしく」
「しかしピアーズさんも悪い人だねぇ。こんな所に連れて来るなんて」
「……彼の希望でね。ひとまずお招きしただけさ」
知ってて来ているなら良いのだが、ピアーズはこれから説明するとザックに話す。
「成程な。だったら俺と1戦、どうだよルーキー?」
明らかに挑発しに来ているザック。
しかしピアーズがブリッツに伝えたのは何も知らない故に挑発には乗らなくても良いという事であったが。
「良いぜ。やろうかザック」
「ブリッツ! 貴様、シャドウの事を何も知らない癖に勝負を挑むな!!」
珍しくピアーズの表情が怒りに満ち言葉を荒げる。
裏側に招いたのは事実だが、流石に無知の状態で戦うのはリスクが高すぎると判断したのだろう。
「あぁ? 威勢が良い奴、嫌いじゃ無いぜ」
「お前のそのルーキーって呼び方好きじゃないな……」
ブリッツの理由がまさか過ぎる。なおバトルフィールドへの転送は公式ランク戦と一緒であるが、入ったら最後終わる迄出る事は不可能。
「ピアーズさん、ジャッジよろしく。じゃあ、イクぜ! シャドウゲートオープン、界放!」
「……シャドウゲートオープン、界放」
2人の身体が言葉と同時に転送され、シャドウランクのバトルフィールドに移動。
「さぁ、君の強さを見せてもらおうか」
ピアーズも同様に転送し、フィールドの上部側にある審判席から戦いを覗く。
「そういや、シャドウのルール知らないんだったな、ルーキー」
「何の話だ?」
考えればピアーズが説明に入る前にバトルを受けると言ってしまったので分からないのも納得が行く。
シャドウバトルはアンティ——即ち賭け札を要求出来る闇のゲーム。
賭け札と言ってもカードばかりでは無く、金銭や名誉、命令、更には資産など様々な物が賭け札になる。
フェアもアンフェアも存在しない、勝者のみが絶対の法律。
「本当にいけ好かねぇ奴だぜ……俺はお前のデジタルカード資産全てを要求する!」
ザックが叫ぶと、ブリッツはこう切り返す。
「いいとも、なら俺は……ルーキーと呼ぶのを辞めて貰おうか」
「はぁ!? そんな事で良いのかよ!?」
余りにも不釣り合いな要求、しかしそれでも構わない。
「本当にこれで良いのだろうか」
「勿論」
流石にピアーズが不安になる中、微かな笑みを浮かべるブリッツ。
「では——お互いの賭け札は揃った。契約は成され、敗者は勝者の理に服従する。審判はこの私、ピアーズが務めよう。シャドウバトル開始」
そして勝利したのはブリッツであった。
「ザック、対価を払って貰う」
「ブリッツにいつかリベンジするからな……」
シャドウバトルで初勝利を納めても、なお渇いたままの心をピアーズは感じていた。
——やはりブリッツを『こちら側』に引き込んで正解だったよ。君の実力は未知数だからこそ、戦いは面白くなる。
同時刻、別のシャドウバトルフィールドではティルが戦闘に挑まれ返り討ちにした。
「貴様はその程度か。約束通りこのカードを頂こう」
「プレイングミスはなかった筈なのに何故だ!?」
「覚悟が足りない。どんな物でも奪い取るのが俺の信念……では、さらばだ」
ティルはバトルフィールドから去り、相手から奪ったカードは時冠戦士リバース・シン・クロノスのシークレット。
後に、彼のエースカードとなる事は知る由も無かった。