BattleSpirits NEWERA -Black Nest-

BattleSpirits NEWERA -Black Nest-

BattleSpirits NEWERAのスピンオフ。
こちらではカードショップ『黒の巣』の話を中心に書いていくよ。

その顔/カードは裏か、表か。
※AI画像を使用しているので苦手な人は閲覧を控えて下さい

本編『BattleSpirits NEWERA』
こちらは天魔王:タケ@ミカヅチ【TAKETO--KU】さんと共同で創作。

 

 

 

我々の住む世界より少しだけ科学が発展した架空世界2091年、突如出現した電脳仮想世界――Ground of RoRo.
様々なコンテンツがデジタル化しオールドコンテンツとなったカードゲーム。


しかしながら、今尚リアルカードも一部のファンに愛されている。

アイドルユニット『コアシュート』の白担当である六月トウシロウは、煌びやかな場所に身を置いているが彼にはもう1つの姿があった――。

 

表と裏が交差するバトルスピリッツ非公式二次創作、開幕。

こちらは『BattleSpirits NEWERA』のスピンオフバトルスピリッツ特化のショップ『黒の巣』の物語となります。

▶︎小説『Black Nest』の目次はこちら

禁止・制限カードについての裁定

STEP.0プロローグ:それぞれの始まり


  ▷光導く星の魂は呪魔に染まる

  ▷遊ぶ精霊は金の雲に数える

  ▷蒼き波は海首を狙う(若干閲覧注意)

  ▷カーティング・ミラージュ

  ▷烈火は連撃の刃、バッドラック付き

  ▷幽魔の女帝、魔の影はサディストのように

  ▷碧雷の憤怒、剣獣のアヴェンジャー

 

STEP.1​第1章:太陽と月光


  ▷彩羽の探索者

  ▷トゥルース・エデン 

  ▷禁じられた一雫の誘惑

  ▷Heartless Abissgate

  

STEP.2第2章:闇を狩る者たち

  

  ▷???

  ▷???

  To be continued……

Special thanks:タケ@ミカヅチさん

アニメ第2話『深淵にて』の裏側——ピオーズ視点。

なお本編とは多少描写が違う所があります、ご了承ください。


 

「僕も行こうか」

 夜遅く、店と併設している家の奥に存在する黒い扉。

 黒の巣スタッフですら立ち入り禁止の場所には、シャドウランク専用ロビーへの入口と繋がってる。

 ナナミ自身、シャドウ関連は中立を貫いている理由――それは如何なる形であれ、シャドウの方にも携わる立場であるから。

 黒いローブに身を包み、髪を長くして黒染めにし、ヘアゴムでポニーテールにした後ロビーへと向かう。

 

 その頃、とある人物がシャドウランクのロビーへと訪問していた。

 

「それにしてもここは、噂通りきな臭い場所だな。こんな所でまともにバトスピが出来るのか?」

 銀色の長髪で黒いローブを着た青年がシャドウランクのロビーを歩いていた。周囲は暗く、まるで地底世界のような場所で至る場所にネオンサインが灯っている。

 賭博場、むせ返るようなタバコの煙。

 表舞台が明るいコロシアムであれば、裏舞台は命を取られてもおかしくない賭け事。

 そこにコツ、コツ、コツと靴音が聴こえてその人物に接触して来た。

 

「そうか、君がブリッツだね」

「ナナミさん!?」

「おっと……ここで僕の名前を出すのはご法度だよ。悪いけれど君の記憶から忘却させて貰う」

 瞬時に彼の瞳の色が紫色に輝いたと思えば、ブリッツが膝から崩れ落ちてその場に倒れ込み、次に意識が戻った時には目の前の人物の名前すら憶えていなかった。

 

「申し訳無いが、リアルに関わる情報や公言は辞めて欲しい。誰が聴いているか分からないからね……改めて紹介しよう、私はピアーズと言う」

 ブリッツの方は随分と印象を変えて来た様子で、公式ランク戦の方でもかなり驚かされたとピアーズは語る。

 褐色肌に長髪、本人曰くバレなくて済むらしいとか。

 

「あれれー? ピアーズさんじゃないですか」

 悪魔のようなデザイン、紫色の短髪で黒い2本の角が生えた金色の眼をしている人物が話しかけてきた。

 

「キミは確かザックだね」

「お! 覚えててくれたんスかー! シャドウランクでもトップクラスのジャッジに覚えて貰えてるとは感激ッスね。で、コイツは?」

 シャドウランクでも公平を保つ理由で審判は存在する。

 中でもピアーズは上位クラスで、審判を行ったバトルでは不正は一切許されず、例え1度でも違反したら、とてつもないペナルティが襲い掛かる事がシャドウランカー内で語られている。

 

「私がシャドウにお招きした、ブリッツだ」

「ははーん……弾ね。誰もが一度は憧れる名前だなぁ。よろしくな、ルーキー」

 ザックが不敵な笑みを浮かべ挑発しているようにも伺える。

 

「よろしく」

「しかしピアーズさんも悪い人だねぇ。こんな所に連れて来るなんて」

「……彼の希望でね。ひとまずお招きしただけさ」

 知ってて来ているなら良いのだが、ピアーズはこれから説明するとザックに話す。

 

「成程な。だったら俺と1戦、どうだよルーキー?」

 明らかに挑発しに来ているザック。

 しかしピアーズがブリッツに伝えたのは何も知らない故に挑発には乗らなくても良いという事であったが。

 

「良いぜ。やろうかザック」

「ブリッツ! 貴様、シャドウの事を何も知らない癖に勝負を挑むな!!」

 珍しくピアーズの表情が怒りに満ち言葉を荒げる。

 裏側に招いたのは事実だが、流石に無知の状態で戦うのはリスクが高すぎると判断したのだろう。

 

「あぁ? 威勢が良い奴、嫌いじゃ無いぜ」

「お前のそのルーキーって呼び方好きじゃないな……」

 ブリッツの理由がまさか過ぎる。なおバトルフィールドへの転送は公式ランク戦と一緒であるが、入ったら最後終わる迄出る事は不可能。

 

「ピアーズさん、ジャッジよろしく。じゃあ、イクぜ! シャドウゲートオープン、界放!」

「……シャドウゲートオープン、界放」

 2人の身体が言葉と同時に転送され、シャドウランクのバトルフィールドに移動。

 

「さぁ、君の強さを見せてもらおうか」

 ピアーズも同様に転送し、フィールドの上部側にある審判席から戦いを覗く。

 

「そういや、シャドウのルール知らないんだったな、ルーキー」

「何の話だ?」

 考えればピアーズが説明に入る前にバトルを受けると言ってしまったので分からないのも納得が行く。

 シャドウバトルはアンティ——即ち賭け札を要求出来る闇のゲーム。

 賭け札と言ってもカードばかりでは無く、金銭や名誉、命令、更には資産など様々な物が賭け札になる。

 フェアもアンフェアも存在しない、勝者のみが絶対の法律。

 

「本当にいけ好かねぇ奴だぜ……俺はお前のデジタルカード資産全てを要求する!」

 ザックが叫ぶと、ブリッツはこう切り返す。

 

「いいとも、なら俺は……ルーキーと呼ぶのを辞めて貰おうか」

「はぁ!? そんな事で良いのかよ!?」

 余りにも不釣り合いな要求、しかしそれでも構わない。

 

「本当にこれで良いのだろうか」

「勿論」

 流石にピアーズが不安になる中、微かな笑みを浮かべるブリッツ。

 

「では——お互いの賭け札は揃った。契約は成され、敗者は勝者の理に服従する。審判はこの私、ピアーズが務めよう。シャドウバトル開始」

 

 そして勝利したのはブリッツであった。

「ザック、対価を払って貰う」

「ブリッツにいつかリベンジするからな……」

 

 シャドウバトルで初勝利を納めても、なお渇いたままの心をピアーズは感じていた。

 ——やはりブリッツを『こちら側』に引き込んで正解だったよ。君の実力は未知数だからこそ、戦いは面白くなる。

 

 同時刻、別のシャドウバトルフィールドではティルが戦闘に挑まれ返り討ちにした。

 

「貴様はその程度か。約束通りこのカードを頂こう」

「プレイングミスはなかった筈なのに何故だ!?」

「覚悟が足りない。どんな物でも奪い取るのが俺の信念……では、さらばだ」

 

 ティルはバトルフィールドから去り、相手から奪ったカードは時冠戦士リバース・シン・クロノスのシークレット。

 後に、彼のエースカードとなる事は知る由も無かった。

Special thanks:タケ@ミカヅチさん

アニメ第1話『それは、最後に残ったモノ』の裏側——戸川ナナミ視点。

なお本編とは多少描写が違う所があります、ご了承ください。



「興味が有ったら、今日の夜11時に黒の巣サーバーにログインしてよ」

 一瞬、ナナミの瞳が紫色に怪しく輝いた。

 自ら暗闇に飛び込む感覚、心の奥の隙間にどす黒い液体が垂らされ満たされていく。

 

「僕が、水先案内人になって上げよう……」

 気付いた時にはもう遅い。

 とぷんと黒い泥に沈み、もがき苦しむ事なくあえて受け入れる。

 闇に堕ちるのは簡単だが——逆は、よっぽど。

 

 夜の街に黒い雲から雨が降り注ぎ、地面が水で反射し傘をしている人物が居て車のワイパーは左右に動く。

 マンションの部屋の一室、鳳セイの部屋に転がり込んでから1年が経過。

 身寄りの無いトウシロウを引き取ったのは彼でコアシュートの兄貴分。

 オムライスを鮮やかに調理して2人で食べていると、セイから同じコアシュートである宮本アオイの新曲があるから聴いとけよと言われる。

 シャワーを浴び自分の部屋に戻る事を伝え、まずはパソコンを開いてアオイの新曲を聴くことと、同時に行われるのは深淵へのアビスゲートの開門。

 

『ナナミさん今大丈夫ですか?』

『来たね、トウシロウくん。アビスゲートを潜る覚悟が出来たのかな?』

『はい、俺は——心の奥が満たされない。もっと刺激のあるバトルがしたい』

 アオイの曲が流れ続けているが、そんな事はどうだって良かった。

 もうすぐ、もうすぐだ。乾いた心に満たされる刺激が手に入る。


『分かったよ。手続きをしよう、君のGROUND of RoRoのアカウント情報をくれるかな?』

 カードショップ黒の巣の2階は自分の部屋。

 パソコンを操作しているナナミの表情は何処か険しく、青ざめ、悪意に満ちる。

 

『……はい。アカウントを渡します』

 トウシロウの部屋は暗くパソコンだけが明かりを灯しているが声に抑揚が無く、ただロボットのように返事を打ち込む。


『情報を暗号化して擬似アバターを作成。ログインIDを送るよ』

 送られたIDにインするトウシロウ。

 そこは普段入っている場所とは決して違う地底世界(アンダーグラウンド)。


「ようこそ、トウシロウくん——バトルスピリッツの深淵へ」

 何もかも零れ落ちていった手の平の上に唯一残った物は、どす黒い一雫の宝石であった。

Special thanks:タケ@ミカヅチさん

アニメ第1話『それは、最後に残ったモノ』の裏側——戸川ナナミ視点。

なお本編とは多少描写が違う所があります、ご了承ください。


 
「コアシュートのサインまで貼ってあるなんて素敵!」
「カフェのドリンクも美味しいし、何より可愛い女子が作るラテアートも綺麗でインスタ映えするよね」
 黒の巣が開店し、大勢の客が押し寄せた。
 純粋にカードを求める人物やカフェで話したりする女性達も多く好評。
 
「戸川、何でカフェもやってるんだ」
「僕のお店のコンセプトは男女問わず通える場所だからね。後カフェで働くカペル・ニクスさんは昔からの知り合い」
 シュライン・マイキーの会社にいた時から、ずっと通ってた馴染みのカフェ。
 しかし経営難で潰れ、美味しいカフェオレが飲めなくなって居たとナナミが嘆いていたらしく調べたら今はフリーという事なので、直々にオファーしたのである。
 
「ナナミサン。俺のカフェオレが飲みたいってわざわざ検索掛けて、再雇用させてくれるとは感謝です」
「カペルさんが入れるカフェオレは本当に美味しかったからね。その時のお礼だよ。ところで……他にも従業員も居たんですね」
「そうそう。僕の所で雇用して居た木苺サンとアルバサンも働きたいって言ってね。どうせなら誘って見たらオッケーだったよ」
 黒い髪の女性が木苺シフォンで、金髪オッドアイの女性がアルバ・エクレール。
 前者がコーヒーバリスタであり後者がパティシエール。
 カペル・ニクスも戸川ナナミに劣らず、とんでもない人脈を持ち合わせていた。
 
 一方コアシュートのメンバーの一部も、オフの日には黒の巣を訪れ新しいカードやサプライ、を覗いて居るんだとか。

「すいません。カードのショーケースを開けてくれませんか?」
「おや、トウシロウくんだね。いらっしゃい」
 コアシュートの白担当で良く黒の巣を訪問する六月トウシロウ。
 
「今日もGROUND of RoRo使っていいですか?」
「良いけれど、ちゃんと料金は払ってね。コアシュートだからって優待はしないよ」
 お金を支払い会員カードを提示した後、彼はフィールドの中に入っていった。
 
 数時間後、トウシロウからこんな相談をされる。
「ランク戦に刺激が足りない……か」
「楽しくない訳じゃないんです。ただ、少し物足りない感じがして」
「トウシロウくんの期待に応えられる訳じゃないけれど、結構危ない場所でも——やる気はあるかい?」
 禁じられた誘惑、危ない世界への入り口を潜ろうとして居たのはどちらだっただろうか。

「……AROcastleに逆らえば僕は表も裏にも居場所は無くなる。だからトウシロウくん君を利用させて貰うよ」
 誰にもバレずに、微かに邪悪な笑みを浮かべたナナミであった。

これはタケ@ミカヅチさんと話し合って決めているのですが

現在のBattle Spiritsの禁止・制限カードかつ『詩姫を含めた』コラボカード系統はアニメや小説では禁止・制限にしています。

※著作権的にグレーゾーンなのでね(;´∀`)

※詩姫は互いに相談した結果コラボ扱いとなりました

 

なおGXナンバーのカード・日本語以外で書かれているカード・チェンジングカードなどの紙製以外の物、BattleSpiritsクロスオーバー限定カードも使用出来ません。

故に登場するのは通常弾やショート・メガデッキ系統と限られていますがご了承下さい。

 

 開店を迎えた前日。

 GROUND of RoRoの黒の巣専用サーバーでアバターお披露目がてらミーティング。

 

「戸川さん随分と変わるんですね」

「……入野さんは凄く変わり過ぎ」

 普段はパーカーのナナミは白スーツに身を包み、ミカは魔法少女のようなコスプレ。


「お前の身体小さくね?」

「僕の事小さいって言うなー!!」

 アオトがグレンに対してちょっかいを掛ける。まぁ何処から見ても全員より一回り小さいのだが。


「うっせぇから、さっさと会議始めろ」

 達観しながらヤマトは眺めつつ、ウタは心配そうに見つめている。


「セフィアさんはGROUND of RoRoのアバターを持ってないからパソコンから参加しているよ」

「やっほー、よろしくね」

「何であいつGROUND of RoRoのアバター持ってねぇの。今の時代なら常識だろ」

「成宮さん、僕もそうだけれど紙のカードの方が好きな人も少なからずいるんだよ」

 物はかさばるけれど紙で刷られたカードが好きな人も居れば、デジタル媒体に保存してGROUND of RoRoで戦う人も居る千差万別。

 

「まず、開店にあたってだけれど……コアシュートもお忍びで来るんだよね」

「ワタシ聴いた事あるよー。ネットで超有名の男性6人組ユニットでバトルスピリッツもプレイしている人達だって」

 モニター越しにセフィアが喋る。


「ちなみにコアシュートの中でバトルスピリッツをやって居るのは六月トウシロウさん、園田ハナヲさんの2人。GROUND of RoRoのアバターもあるし両者公式ランクAの実力者だよ」

 上級者——つまりはヒノモトの公式大会にも参加し優勝出来るほどの実力で、園田ハナヲと呼ばれる人物は、自らの戦いを配信で行っている上に人気なのか夜にも関わらずファンが殺到するんだとか。


「黒の巣の開店が面白くなって来た。大物がお忍びで来るのは約束されて居る、さらにコアシュートのリーダーである紫野アキヒロさんには既に許可を取って、公式ライブやソロ配信等を黒の巣で放送させて貰う契約も結んでいるからね」

「戸川さんが用意周到過ぎる……」

 呆然とするグレン。


「ただコアシュート側からも条件があるんだよね。お忍びで来るから公にしないで欲しいんだって」

「有名人だから当然だろ」

 芸能人とかがカードショップに訪問したらファンが殺到するのは目に見えて居るだろう。


「もう1つはね」

 ナナミの言葉に対して一同に戦慄が走った。


「シャドウランカーを倒すだって!?」

「昔襲われた事があるのですが……フフフフフ、嬲りがいが有るわねぇ」

「獅童さんが怖い」

 グレンが震えるのも無理は無い。

 紫色のドレスに身を包んだ姿の彼女はどこか優艶でしたたかな毒を持っている。


「ようやく、仇を討てる」

「戸川さん……確かに一般ランカーとシャドウランカーには確執が有りますが、倒すとは一体?」

「フハハハハハハハ! 合法的にカードを奪えるって事じゃねぇか!!」

「成宮さんは物騒な発言をしない。事実、一般ランカーとシャドウランカーは犬猿の仲で対立も根深いんだよ。僕はね——憂いて居るんだ。そんな世の中をね」

 役者は揃った。

 7つとは行かなくても、既に6個の弾丸がリボルバーに込められている。

 交わる事の無き物語だった物が偶然か必然か重なり合い、新しき小夜曲(セレナーデ)を響かせ始めた。

 

 バトルスピリッツカードのボックスやカートン、それに関連の荷物が搬入されて行く店内は忙しくスタッフが持ち場に着き準備を進めている。

 来たるべき開店は1週間後と迫る中、とある人物が訪ねて来たのである。

 

「ワタシ、カードデザイナー兼イラストレーターのセフィアと言います。ナナミさんは何処に居ますか?」

「誰こいつ」

 アオトがジッと睨み付けるように茶色のベレー帽の女性を見ると同時に、ナナミが駆け付けて説明を入れる。

 

「ゴメンね、成宮さんは女性嫌いなんだ」

「ほえーそうなんですね」

 ジッとアオトの方を見て近付き顔をマジマジと見つめると、少しずつ後退りして表情が青冷めて行く。

 

「……辞めろ、近付くな」

「人間は辞めろって言われると近付きたくなるんですよね」

「あぁああああああああマジで俺無理なタイプ!!」

「成宮黙れ、赤間と獅童がドン引きしてる」

 ヤマトがアオトにツッコミがてら注意。

 一方、ミカは感心してセフィアの方を見ていた。

 

「まさかセフィアさんと再会出来るなんて幸せです」

「入野さん知り合いだったの?」

「はい。昔オンラインゲームやっていた時のフレンドでした」

「奇遇だねぇ。まさかセフィアさんと入野さんが知り合いだったとは」

 関心するナナミの裏側でグレンやウタが淡々と段ボールを運んで中身を取り出し長方形のカードケース置き場に陳列。

 色毎に纏めるのは勿論、系統や環境でよく使用されるカードは目立つ所に置いて、かつ傷つけてはならない。

 傷有り判定されると安く販売しなければならない反面、買取値段も下がってしまう。

 双方にデメリットしかない為可能であれば避けたいのだが、出荷された場合から裁断が良く無かったり、顔にほうれい線のような金色の傷が付いていたりするのは……仕様とされると苛立つだろう。

 

「セフィアさんが黒の巣のエプロンもデザイナーしてくれたんだよね」

 青ベースの布を使用したエプロン。

 中央には鴉と複数の丸が描かれたロゴマークの側には6色の軽減シンボルワッペン。

 なおナナミやセフィアは多色使いの為、六芒星にそれぞれの色があしらわれている。

 

「てか、戸川なんでポンポン有名人連れて来れるんだ」

「シュライン・マイキーさんの会社で働いた時に知り合ったんだよね」

「ナナミさんの人脈スッゲー!」

 グレンが輝いた目で見るのが眩し過ぎて。

 

「……あの、セフィアさんの好きなカードって何ですか?」

 気になることをウタが質問。確かに好きなカードは知りたい。

 

「ワタシかい? 文車神姫(ふぐるましんき)クロエ。和風なイラストって自分には描けないから参考になるし強いからね」

 ちなみにセフィアはGROUND of RoRoのアカウントを持っておらず、あくまで紙特化で戦いたいと予めナナミに面談で伝えている。

 

「……まぁ、良い出会いだけでは無かったけれど」

 何処か暗い表情を浮かべるナナミ。その理由とは——。

 突き止めてやる。

 

 何もかも全て奪われた。

 両親も、親友も、大切だった場所も。何故自分だけが生き残ってしまったのか。

 天災と言えば仕方が無いのだが、地学が得意であるヤマトはまさかと考えていた。

 

 世界すら震撼させた大ヒノモト地震。

 震源地はトウキョウからカナガワにかけて、震源の深さは10km、マグニチュード8.9、最大震度7の大地震は津波を起こし、あらゆる物を押し流して生活環境を破壊された。

 

 突然過ぎる死別で天涯孤独となったヤマト。それ故に闇に堕ちるのは早かった。

 彼から全てを奪った大ヒノモト地震を起こした元凶を突き止める為に、自らアンダーグラウンドの場所に飛び込んだのである。

 バトルスピリッツの深淵——シャドウバトルへと。

 

 アバターの名前はアレス。

 言わずもがな、ギリシャ神話に登場する戦の神から来ている。

 軍神ではあるが戦いっぷりはひたすら暴力的に力押しに終始するものの、ヤマトは冷静で知力に長けている事から相反する存在。

 

 しかしバトルスピリッツに置いては緑属性を主体としており、自分と同じ名前を持つアレスのデッキをメインに使用、確実に勝利を収めている故に公式ランクはAと高い。

 一方でシャドウランクは3と平均並みで、彼の賭け事は全て大ヒノモト地震の情報を差し出せと言う物で他の事には一切使用しない。

 

「攻撃は最大の防御。我が戦術の妙、再び味わえ。殻騎士帝ウェストウッド!」

 

 アレスの戦いを見届け、審判席に居た男は呟く。

「……ならば僕の復讐の手駒に利用させて貰おう。こっちにも事情があるもんでね、有無を言わせず引き込ませて貰うよ」

 

 数日後、ヤマトの家にある封筒が届き開けた瞬間手紙の下にあるダイヤのマークがキラリと光ったのを最後に意識を失ってしまった。

 

「あれ、俺一体何やってたんだっけ……?」

 いつの間にか来ていた場所。いつの間にか刷り込まれていた情報。喜劇の始まりか、悲劇の始まりか。

 黒の巣スタッフになるのも仕組まれた定めであり、伸ばされ絡まれた糸からは逃れる事は決してならない。

 

「ひとまず従業員は確保完了。さて、始めようかな。僕の運命の戯曲を紡ぐ為のピースになって貰おうか」

 かくして、Black Nestの幕は開ける――。

 ……私なんかで、いいんですか?

 

 獅童家は代々伝わる老舗の和菓子本舗。

 家系に産まれたからには、幼少時から和菓子細工の基礎を叩き込まれる定めかつ、製菓学校にも入って基礎も学ばなければならない故に根を上げる者も少なくは無い。

 

 しかし獅童家の娘の1人であるウタは和菓子を作成するのは嫌いでは無く、逆に稀に見る才能の持ち主として周囲から賞賛され、全国和菓子製作大会では優勝するなど次期当主としての器は持っているのだが……本人は兄のカナデに譲ると言って居る。

 

「あたしでは無く、兄さんの方が何十倍も才能が上です。なのにお母様はどうしてあたしを推薦して居るのですか」

「兄はウタより劣っている、それだけの事です」

「しかし兄さんは日本だけでは無く、世界大会まで出て居るのです。なのに何故あたしが次期当主なのですか?」

「獅童家は昔から実力主義なのです。例え世界に出たとしても、結果を出せなければ凡人と一緒」

 

 考えたら兄は世界大会まで行ったけれど、結果は思わしく無かった。

 だから母はあたしに求めて居るんだ。出来損ないの兄より実績のあるあたしを推薦して居るのを。

 

 ある日の出来事。

 家の近くに高層ビルが建設されるのを知って土地を使用したいと立ち退き要求を出したのである。父は代々続く土地である場所だから無理と告げたが相手も引かなかった。

 

「何度言ったら分かる。断固お断りさせて貰う」

「困るんですよねぇ、高層ビルの契約をして居る方も多い。近くに住んでいる人は既に了承済みで残るは貴方達だけなのですよ」

 陰から覗いていたウタは契約会社の人間が知って居るカードを持ち、不気味な笑みを浮かべて居たのを目撃。

 

「あれはバトルスピリッツ……でもどうして契約会社の人が!?」

 実は仕事の合間を縫ってウタもバトルスピリッツをやっており、GROUND of RoRoでもアバターを製作している。

 

「では、バトルスピリッツでのシャドウバトルで貴方が勝利したら手を引きます。ですが敗北したら大人しく土地を渡して頂きましょう」

「そんな物は知らぬ! 要求は飲めん!!」

「おやおや……シャドウバトルでの戦いに拒否権はございませんよ?」

 その瞬間、ウタが父と契約会社の人間の合間に割り込んで両手を塞ぐように広げて叫んだ。

 

「ウタ!?」

「突然失礼致します、父はバトルスピリッツを知らない為私が代わりに戦うのは駄目でしょうか」

 ため息を吐き、黒スーツの男が呆れつつ呟く。

 

「本来ならばそうとも行かないでしょうが……良いでしょう、どうせ結果は揺るがないのですから。シャドウゲートオープン、界放。さぁ始めましょう」

 空間に亀裂が走りウタと契約会社の人間が吸い込まれた。

 

「……ウタよ、そこまで思ってくれて居たのか」

 意図しない形でシャドウバトルで戦う事になったウタであるが彼女は一般ランカーで、ランクはSと非常に高い故に結果は分かりきって居た。

 

「威勢を切った割には大した事無いわねぇ」

「馬鹿な、こんな小娘に負けては成らぬと言うのに……!」

 スティクス。ウタのアバターでありGROUND of RoRoで戦う姿。

 普段と全く違い、紫色のパーティードレスに身を包んで紫色のデッキに汎用パーツを入れて戦う。

 美しい美貌から見えるは咲き誇る薔薇。

 しかし茎に生えた棘に刺されたら最後、麻痺の毒で身動きが取れずに散る。

 

「アーッハハハハハハハ! 争いの女神エリスよ、相手を嬲りなさい!!」

 スティクスが勝利し契約は破棄され自分の力で居場所を守った。

 両親は帰って来たウタを抱き締めて、涙を流したと言う。

 

 一方、ジャッジで同席していた黒髪でローブを着た男が呟く。

「……まさか、彼女は一般ランカーなのにシャドウランカーに戦いを挑まれると思わなかったよ。ルール破りはシャドウにおいては一切許されない。相応の処罰は取らせて頂くよ」

 その後契約会社がどうなったのかは誰にも分からないまま、闇に葬り去られたと言う。

 

 さらにとある日の事。

 ウタは用事で出掛けた際にポスターを見かける。

 

「カードショップ黒の巣スタッフ募集中?」 

 ウタが事情を両親に話すと、居場所を守ってくれた事がきっかけでバトルスピリッツを知り、副業として働く事を許してくれた。

 

「君が獅童ウタさんだね? 初めまして、店主を務める戸川ナナミです」

 実家の和菓子店とカードショップのスタッフは相反する存在なのだが、果たして。