BattleSpirits NEWERA -Black Nest-

BattleSpirits NEWERA -Black Nest-

BattleSpirits NEWERAのスピンオフ。
こちらではカードショップ『黒の巣』の話を中心に書いていくよ。

その顔/カードは裏か、表か。
※AI画像を使用しているので苦手な人は閲覧を控えて下さい

本編『BattleSpirits NEWERA』
こちらは天魔王:タケ@ミカヅチ【TAKETO--KU】さんと共同で創作。



我々の住む世界より少しだけ科学が発展した架空世界2091年、突如出現した電脳仮想世界――Ground of RoRo.
様々なコンテンツがデジタル化しオールドコンテンツとなったカードゲーム。


しかしながら、今尚リアルカードも一部のファンに愛されている。

アイドルユニット『コアシュート』の白担当である六月トウシロウは、煌びやかな場所に身を置いているが彼にはもう1つの姿があった――。

 

表と裏が交差するバトルスピリッツ非公式二次創作、開幕。

こちらは『BattleSpirits NEWERA』のスピンオフバトルスピリッツ特化のショップ『黒の巣』の物語となります。

▶︎小説『Black Nest』の目次はこちら

 開店を迎えた前日。

 GROUND of RoRoの黒の巣専用サーバーでアバターお披露目がてらミーティング。

 

「戸川さん随分と変わるんですね」

「……入野さんは凄く変わり過ぎ」

 普段はパーカーのナナミは白スーツに身を包み、ミカは魔法少女のようなコスプレ。


「お前の身体小さくね?」

「僕の事小さいって言うなー!!」

 アオトがグレンに対してちょっかいを掛ける。まぁ何処から見ても全員より一回り小さいのだが。


「うっせぇから、さっさと会議始めろ」

 達観しながらヤマトは眺めつつ、ウタは心配そうに見つめている。


「セフィアさんはGROUND of RoRoのアバターを持ってないからパソコンから参加しているよ」

「やっほー、よろしくね」

「何であいつGROUND of RoRoのアバター持ってねぇの。今の時代なら常識だろ」

「成宮さん、僕もそうだけれど紙のカードの方が好きな人も少なからずいるんだよ」

 物はかさばるけれど紙で刷られたカードが好きな人も居れば、デジタル媒体に保存してGROUND of RoRoで戦う人も居る千差万別。

 

「まず、開店にあたってだけれど……コアシュートもお忍びで来るんだよね」

「ワタシ聴いた事あるよー。ネットで超有名の男性6人組ユニットでバトルスピリッツもプレイしている人達だって」

 モニター越しにセフィアが喋る。


「ちなみにコアシュートの中でバトルスピリッツをやって居るのは六月トウシロウさん、園田ハナヲさんの2人。GROUND of RoRoのアバターもあるし両者公式ランクAの実力者だよ」

 上級者——つまりはヒノモトの公式大会にも参加し優勝出来るほどの実力で、園田ハナヲと呼ばれる人物は、自らの戦いを配信で行っている上に人気なのか夜にも関わらずファンが殺到するんだとか。


「黒の巣の開店が面白くなって来た。大物がお忍びで来るのは約束されて居る、さらにコアシュートのリーダーである紫野アキヒロさんには既に許可を取って、公式ライブやソロ配信等を黒の巣で放送させて貰う契約も結んでいるからね」

「戸川さんが用意周到過ぎる……」

 呆然とするグレン。


「ただコアシュート側からも条件があるんだよね。お忍びで来るから公にしないで欲しいんだって」

「有名人だから当然だろ」

 芸能人とかがカードショップに訪問したらファンが殺到するのは目に見えて居るだろう。


「もう1つはね」

 ナナミの言葉に対して一同に戦慄が走った。


「シャドウランカーを倒すだって!?」

「昔襲われた事があるのですが……フフフフフ、嬲りがいが有るわねぇ」

「獅童さんが怖い」

 グレンが震えるのも無理は無い。

 紫色のドレスに身を包んだ姿の彼女はどこか優艶でしたたかな毒を持っている。


「ようやく、仇を討てる」

「戸川さん……確かに一般ランカーとシャドウランカーには確執が有りますが、倒すとは一体?」

「フハハハハハハハ! 合法的にカードを奪えるって事じゃねぇか!!」

「成宮さんは物騒な発言をしない。事実、一般ランカーとシャドウランカーは犬猿の仲で対立も根深いんだよ。僕はね——憂いて居るんだ。そんな世の中をね」

 役者は揃った。

 7つとは行かなくても、既に6個の弾丸がリボルバーに込められている。

 交わる事の無き物語だった物が偶然か必然か重なり合い、新しき小夜曲(セレナーデ)を響かせ始めた。

 

 バトルスピリッツカードのボックスやカートン、それに関連の荷物が搬入されて行く店内は忙しくスタッフが持ち場に着き準備を進めている。

 来たるべき開店は1週間後と迫る中、とある人物が訪ねて来たのである。

 

「ワタシ、カードデザイナー兼イラストレーターのセフィアと言います。ナナミさんは何処に居ますか?」

「誰こいつ」

 アオトがジッと睨み付けるように茶色のベレー帽の女性を見ると同時に、ナナミが駆け付けて説明を入れる。

 

「ゴメンね、成宮さんは女性嫌いなんだ」

「ほえーそうなんですね」

 ジッとアオトの方を見て近付き顔をマジマジと見つめると、少しずつ後退りして表情が青冷めて行く。

 

「……辞めろ、近付くな」

「人間は辞めろって言われると近付きたくなるんですよね」

「あぁああああああああマジで俺無理なタイプ!!」

「成宮黙れ、赤間と獅童がドン引きしてる」

 ヤマトがアオトにツッコミがてら注意。

 一方、ミカは感心してセフィアの方を見ていた。

 

「まさかセフィアさんと再会出来るなんて幸せです」

「入野さん知り合いだったの?」

「はい。昔オンラインゲームやっていた時のフレンドでした」

「奇遇だねぇ。まさかセフィアさんと入野さんが知り合いだったとは」

 関心するナナミの裏側でグレンやウタが淡々と段ボールを運んで中身を取り出し長方形のカードケース置き場に陳列。

 色毎に纏めるのは勿論、系統や環境でよく使用されるカードは目立つ所に置いて、かつ傷つけてはならない。

 傷有り判定されると安く販売しなければならない反面、買取値段も下がってしまう。

 双方にデメリットしかない為可能であれば避けたいのだが、出荷された場合から裁断が良く無かったり、顔にほうれい線のような金色の傷が付いていたりするのは……仕様とされると苛立つだろう。

 

「セフィアさんが黒の巣のエプロンもデザイナーしてくれたんだよね」

 青ベースの布を使用したエプロン。

 中央には鴉と複数の丸が描かれたロゴマークの側には6色の軽減シンボルワッペン。

 なおナナミやセフィアは多色使いの為、六芒星にそれぞれの色があしらわれている。

 

「てか、戸川なんでポンポン有名人連れて来れるんだ」

「シュライン・マイキーさんの会社で働いた時に知り合ったんだよね」

「ナナミさんの人脈スッゲー!」

 グレンが輝いた目で見るのが眩し過ぎて。

 

「……あの、セフィアさんの好きなカードって何ですか?」

 気になることをウタが質問。確かに好きなカードは知りたい。

 

「ワタシかい? 文車神姫(ふぐるましんき)クロエ。和風なイラストって自分には描けないから参考になるし強いからね」

 ちなみにセフィアはGROUND of RoRoのアカウントを持っておらず、あくまで紙特化で戦いたいと予めナナミに面談で伝えている。

 

「……まぁ、良い出会いだけでは無かったけれど」

 何処か暗い表情を浮かべるナナミ。その理由とは——。

 突き止めてやる。

 

 何もかも全て奪われた。

 両親も、親友も、大切だった場所も。何故自分だけが生き残ってしまったのか。

 天災と言えば仕方が無いのだが、地学が得意であるヤマトはまさかと考えていた。

 

 世界すら震撼させた大ヒノモト地震。

 震源地はトウキョウからカナガワにかけて、震源の深さは10km、マグニチュード8.9、最大震度7の大地震は津波を起こし、あらゆる物を押し流して生活環境を破壊された。

 

 突然過ぎる死別で天涯孤独となったヤマト。それ故に闇に堕ちるのは早かった。

 彼から全てを奪った大ヒノモト地震を起こした元凶を突き止める為に、自らアンダーグラウンドの場所に飛び込んだのである。

 バトルスピリッツの深淵——シャドウバトルへと。

 

 アバターの名前はアレス。

 言わずもがな、ギリシャ神話に登場する戦の神から来ている。

 軍神ではあるが戦いっぷりはひたすら暴力的に力押しに終始するものの、ヤマトは冷静で知力に長けている事から相反する存在。

 

 しかしバトルスピリッツに置いては緑属性を主体としており、自分と同じ名前を持つアレスのデッキをメインに使用、確実に勝利を収めている故に公式ランクはAと高い。

 一方でシャドウランクは3と平均並みで、彼の賭け事は全て大ヒノモト地震の情報を差し出せと言う物で他の事には一切使用しない。

 

「攻撃は最大の防御。我が戦術の妙、再び味わえ。殻騎士帝ウェストウッド!」

 

 アレスの戦いを見届け、審判席に居た男は呟く。

「……ならば僕の復讐の手駒に利用させて貰おう。こっちにも事情があるもんでね、有無を言わせず引き込ませて貰うよ」

 

 数日後、ヤマトの家にある封筒が届き開けた瞬間手紙の下にあるダイヤのマークがキラリと光ったのを最後に意識を失ってしまった。

 

「あれ、俺一体何やってたんだっけ……?」

 いつの間にか来ていた場所。いつの間にか刷り込まれていた情報。喜劇の始まりか、悲劇の始まりか。

 黒の巣スタッフになるのも仕組まれた定めであり、伸ばされ絡まれた糸からは逃れる事は決してならない。

 

「ひとまず従業員は確保完了。さて、始めようかな。僕の運命の戯曲を紡ぐ為のピースになって貰おうか」

 かくして、Black Nestの幕は開ける――。

 ……私なんかで、いいんですか?

 

 獅童家は代々伝わる老舗の和菓子本舗。

 家系に産まれたからには、幼少時から和菓子細工の基礎を叩き込まれる定めかつ、製菓学校にも入って基礎も学ばなければならない故に根を上げる者も少なくは無い。

 

 しかし獅童家の娘の1人であるウタは和菓子を作成するのは嫌いでは無く、逆に稀に見る才能の持ち主として周囲から賞賛され、全国和菓子製作大会では優勝するなど次期当主としての器は持っているのだが……本人は兄のカナデに譲ると言って居る。

 

「あたしでは無く、兄さんの方が何十倍も才能が上です。なのにお母様はどうしてあたしを推薦して居るのですか」

「兄はウタより劣っている、それだけの事です」

「しかし兄さんは日本だけでは無く、世界大会まで出て居るのです。なのに何故あたしが次期当主なのですか?」

「獅童家は昔から実力主義なのです。例え世界に出たとしても、結果を出せなければ凡人と一緒」

 

 考えたら兄は世界大会まで行ったけれど、結果は思わしく無かった。

 だから母はあたしに求めて居るんだ。出来損ないの兄より実績のあるあたしを推薦して居るのを。

 

 ある日の出来事。

 家の近くに高層ビルが建設されるのを知って土地を使用したいと立ち退き要求を出したのである。父は代々続く土地である場所だから無理と告げたが相手も引かなかった。

 

「何度言ったら分かる。断固お断りさせて貰う」

「困るんですよねぇ、高層ビルの契約をして居る方も多い。近くに住んでいる人は既に了承済みで残るは貴方達だけなのですよ」

 陰から覗いていたウタは契約会社の人間が知って居るカードを持ち、不気味な笑みを浮かべて居たのを目撃。

 

「あれはバトルスピリッツ……でもどうして契約会社の人が!?」

 実は仕事の合間を縫ってウタもバトルスピリッツをやっており、GROUND of RoRoでもアバターを製作している。

 

「では、バトルスピリッツでのシャドウバトルで貴方が勝利したら手を引きます。ですが敗北したら大人しく土地を渡して頂きましょう」

「そんな物は知らぬ! 要求は飲めん!!」

「おやおや……シャドウバトルでの戦いに拒否権はございませんよ?」

 その瞬間、ウタが父と契約会社の人間の合間に割り込んで両手を塞ぐように広げて叫んだ。

 

「ウタ!?」

「突然失礼致します、父はバトルスピリッツを知らない為私が代わりに戦うのは駄目でしょうか」

 ため息を吐き、黒スーツの男が呆れつつ呟く。

 

「本来ならばそうとも行かないでしょうが……良いでしょう、どうせ結果は揺るがないのですから。シャドウゲートオープン、界放。さぁ始めましょう」

 空間に亀裂が走りウタと契約会社の人間が吸い込まれた。

 

「……ウタよ、そこまで思ってくれて居たのか」

 意図しない形でシャドウバトルで戦う事になったウタであるが彼女は一般ランカーで、ランクはSと非常に高い故に結果は分かりきって居た。

 

「威勢を切った割には大した事無いわねぇ」

「馬鹿な、こんな小娘に負けては成らぬと言うのに……!」

 スティクス。ウタのアバターでありGROUND of RoRoで戦う姿。

 普段と全く違い、紫色のパーティードレスに身を包んで紫色のデッキに汎用パーツを入れて戦う。

 美しい美貌から見えるは咲き誇る薔薇。

 しかし茎に生えた棘に刺されたら最後、麻痺の毒で身動きが取れずに散る。

 

「アーッハハハハハハハ! 争いの女神エリスよ、相手を嬲りなさい!!」

 スティクスが勝利し契約は破棄され自分の力で居場所を守った。

 両親は帰って来たウタを抱き締めて、涙を流したと言う。

 

 一方、ジャッジで同席していた黒髪でローブを着た男が呟く。

「……まさか、彼女は一般ランカーなのにシャドウランカーに戦いを挑まれると思わなかったよ。ルール破りはシャドウにおいては一切許されない。相応の処罰は取らせて頂くよ」

 その後契約会社がどうなったのかは誰にも分からないまま、闇に葬り去られたと言う。

 

 さらにとある日の事。

 ウタは用事で出掛けた際にポスターを見かける。

 

「カードショップ黒の巣スタッフ募集中?」 

 ウタが事情を両親に話すと、居場所を守ってくれた事がきっかけでバトルスピリッツを知り、副業として働く事を許してくれた。

 

「君が獅童ウタさんだね? 初めまして、店主を務める戸川ナナミです」

 実家の和菓子店とカードショップのスタッフは相反する存在なのだが、果たして。

 僕はシャドウランク嫌い。


 赤間グレンを一言で語るなら『バトルスピリッツが純粋に大好きな人間』である。

 最初期からカードを集め。好きな赤属性のカードでデッキを組んで。

 勝っても負けても相手へのリスペクトを忘れない、純真無垢な人物。


 大ヒノモト地震の後も変わらなかった。

 紙のカードでも大事に保管しデジタルになっても相変わらずなのに、GROUND of RoRoでアバターを幼い少年の姿であるアクトにしたら何故か女性から人気が出てしまった。


「僕は純粋に戦いたいだけなのにー!!」

 グレンの思いは虚しく本人に内緒で密かにファンクラブが出ていたり、GROUND of RoRoに訪問しただけでキャーキャーと歓声が沸いたり。


「もう嫌ダァアアアアアアア!! どっか、隠れる場所欲しい!!」

「……へぇ、隠れる場所欲しいんだ」

 カフェの隅っこで座っていた、自分の隣に白いスーツで長い金髪をなびかせた男性がグレンに声をかける。


「貴方は?」

 グレンが質問すると少しだけ微笑んで名乗った。


「僕はゾディア。光導使い、公式ランクはAだね。君は?」

「ああっ名乗って無かった。アクトです、赤属性特化で公式ランクはBかな」

「君、隠れる場所欲しいんだよね? だったら僕のバトルスピリッツ特化のカードショップで働いて欲しいな」

「ええっバトルスピリッツ特化のショップ!?」

 アクトは驚いていた。GROUND of RoRoが実装されてからは他のカードショップも売り上げが低下し撤退している中で、まさか大好きなバトルスピリッツ特化のショップが開店するとは。


 純真無垢な瞳で見るアクトに、ゾディアが感動しながらも、若干利用せざるを得ない事に複雑な感情を抱いていた。

「……君、シャドウランクは知っているかい?」

「知ってるけれど僕は嫌い。カードとか金銭とか奪うのも困るけれど、賭け事にバトルスピリッツなんか信じられないよ」

 アクトの言葉に、ゾディアは考えながら頬杖をついていた——あぁ、なんて純粋な子なんだ。

 だからこそ巻き込みたく無かったのに。

 闇に塗れたアンダーグラウンドな場所なんか。

 だけれど僕にもやる事があるからアクトくん、君にも協力して貰うよ。

「成程。僕はあくまでもシャドウバトルに関しては中立だから気が向いたらおいで」


 後日、グレンが黒の巣のスタッフになる事が決まったのだが——彼の純粋さ故なのか、ナナミが唆したのかは霧の中に閉ざされている。


「行くよ、超契約降臨……灼熱神龍ゴット・グロウ!」

 数日後、ミカとアオトはナナミが住むアパートに来ていた。

 

「あ、あの……成宮さんはどうして戸川さんと知り合いになったんですか?」

 リアルで会う分では初対面の2人。なお、ナナミはカレーライスを調理しているのかキッチンに立っている。

 

「カードショップの話したいって話が来たからだ」

「随分素っ気無いと言うか戸川さんらしい。あたしは元々大学時代からの知り合いで、最近カードショップを始めたいって久しぶりに連絡来たからかな。シュライン・マイキーさんの会社に2年程務めていたんだけれど、会社の人と折り合いが付かなくなって退職したんだって」

「そんな奴知るか。俺は単純に強い相手と戦えれば問題ない」

「ず、随分とバトルジャンキー過ぎる……」

 本当に、アオトと一緒に働くのかと考えてしまうと全身に鳥肌が立ってしまったミカ。

 話をしているとナナミがおぼんの上にカレーライスの皿を持って来てリビングにやって来た。

 

「とりあえず2人が食べてからカードショップの話するね」

 一応ナナミは自炊出来るのか味はマズくない。

 変にジャガイモや人参は固く無いし、玉葱や鶏肉には火が通っている。

 

「食べ終わったかい? それじゃあ説明を始めるよ」

 カードショップの建築設計図をテーブルに広げる。


「戸川さんも住むんですね」

「住居兼カードショップにするんだ。紙のカードはオールドコンテンツとして扱われているけれど、コレクターに取っては希少価値がある物として取り扱われているんだ」

 時代が進みデジタル化が推奨されても、昔ながらの物に愛着を持つ人も多いだろう。

 設計図には紙のカードストレージボックスの場所や、Ground of RoRoが展開されるスペース、更にはサプライグッズやカフェなども準備予定。


「スタッフ絶対足りないだろ」

 アオトが釘を刺すが、ナナミは動揺もせずに回答を返す。

「問題無いよ。僕の方である程度目星と募集の紙を貼ってあるからね」

「目星?」

「もう既に……手は打っているって訳さ」

 ナナミの言葉に2人は背筋が凍った。

 俺が闇に染まった理由? 教えてやるよ。

 

 親の顔なんかとっくの昔に忘れた。

 微かに覚えていたのは怒号や酒の瓶で殴られた跡。今も深い傷が、右足の太ももに残っている。

 

 そんな中、心まで闇に染まらなかったのは祖父や祖母が優しかった。

 匿ってくれたし少しずつ受けた傷は癒されて行ったはずなのに事件が起こった。

 

 両親が借金を背負い、ヤクザをけし掛けて祖父や祖母の家まで押し寄せた。

 危ないから隠れていろと祖父は言った。

 聴こえる銃声、押し入れ越しからも咽せ込む硝煙の臭い、何かを殴った音……幼い俺には嫌なもの過ぎて。

 静かになった時には、血がそこら中に飛び散り壁には銃痕も残っていて祖父も祖母も——息を引き取っていた。

 ヤクザは現行犯逮捕されたけれど、両親は……。

 

 祖父と祖母の葬式の時。

 何食わぬ顔で両親は姿を見せた。自分達は何もしてない癖に殺しやがってと憎んでも仕方が無かった。

 ギャンブルで借金を背負った挙句大事な家族を奪いやがって、どうにかしてる。

 

 こんな狂った親なんか死んでしまえと感じ始めた矢先。

 他の親族も集まり遺産相続が始まった。しかし、祖父や祖母の遺言書には

 

『遺産は他の親族や息子である——に存続させる。両親は子供を放棄した為1円たりともやらぬ』

 

 と読まれた瞬間、両親は怒り狂い俺の首に手を掛けた。

 当たり前だろう子供を捨てやがった親子の罪は大きいんだよ。

 

 それなのに!

 殺そうとした!!

 遺産が手に入らないからって俺にまで手を出すか!!

 

 結局この1件がトドメとなったのか他の親族が警察に通報し逮捕。

 ようやく地獄が終結しやっと安心した生活を送れる様になった。

 

 ——でもな。

 喪った物は返って来ない、祖父や祖母ともっと生きていたかったのに。

 

 心が壊れた俺を救ってくれたのが、バトルスピリッツ。

 特に青のカードはデッキを破棄する能力に長けておりライブラリアウト(デッキを0枚にする)を狙って勝利するのが得意なだけ合って、ピッタリだった。

 

 それでも。過去に奪われた物は奪い返さないと気が済まない。

 ならば俺は闇に染まろう——アンティルールと言う、シャドウバトルでカードを奪えるならば。俺は絶対に奪い返してやる。

 

 時は反転し、無限なる檻で閉じ込めて終わらせよう『シン・クロノス・リターナル』

 

「……あの子は面白い、随分と野心がある。是非今後立ち上げるカードショップである黒の巣のスタッフに向かい入れたいね」

 遠くにいたジャッジの瞳が紫色に怪しく光ったと同時に、意識が朦朧としたと同時に気絶した。

 

 いつの間にか名前も成宮アオトとなっていた。

 一体どういう事なんだ……いや、これでいいのか。

 

 『――最初から俺の名前は成宮アオトだから』

 女性って、カードバトルやってはいけないの?

 

 幼い頃からずっとパソコンを触って来たからだけれど、プログラミングを自分で考えて組む様にはなっていた。

 誰かと関わるのは苦手、友達は量より質で同じ趣味が合う人同士で仲良くしていたのよね。


 オンラインゲームもリア友とやっていたぐらいで、別の誰かになりきって話す『ロールプレイ』が好きだったの。

 けれどね、野良の人にロールプレイを否定されたのがきっかけで辞めてしまったんだ。自分の好きな物を貶された感じがして。

 価値観って人それぞれだから、言う権利は無いのにね。


 大学もプログラミングが出来る場所を選んで入学。

 実はこの頃からバトルスピリッツを密かに始めていて、バトルするよりかは集めていたの。

 偏見って怖いよね。

 カードショップに行ったら男性ばっかりで女性は殆どいないし冷たい目で見られそうになって。

 

 とある日の出来事。

「あれ、入野さんもバトルスピリッツやってるんだ」

「ごめんなさい、貴方は……誰ですか?」

 眼鏡の男性に見られてしまった。

 どうしよう……また否定されたらと感じてしまった。


「僕は戸川ナナミ、バトルスピリッツが好きなんだ。女性でも集めているの珍しいね」

「えっ?」

「好きだからコレクションしているの僕分かるなぁ。カード好きに男性も女性も関係ないよ」

 戸川さんの言葉に思わず涙が出て来てしまった。好きな物は好きで良いと初めて言われたから。

 

「……ありがとうございます、あたしは入野ミカと言います」

「入野さんよろしくね」

 以降打ち解け合ったのかバトルスピリッツの話で盛り上がった。

 彼は星座が好きで始めて、あたしは『相棒鳥フェニル』が可愛かったからコレクションを始めた話とかもしていたのに。


 大学を卒業して以降、戸川さんとは会えなくなってしまった。

 彼は有名なシュライン・マイキーさんの会社に才能を買われて入社。

 本当、戸川さん凄いなぁと思った矢先であった。


「入野さん、お願いがあるんだ」

 卒業後もちょくちょく連絡していたけれど、あまりにも急過ぎて驚いた。


「——僕と一緒に、カードショップをやって欲しい」