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 たしか一年前の

 今頃だったように思う。





 春うららかな日和…





 その日、

 私はとある病院に行くために

 そこへと続く

 100メートル位の
 
 桜咲く並木道を
 
 ゆっくりと歩いていた。




 春の日差しは

 冬に慣れた眼には

 ただ眩しくて、

 やがてうっすらと

 額に汗をかいてきた。





 まだ冬の気配が残る

 朝に合わせて

 厚着をしてきたのを

 少し後悔した。




 ただ足どりは重く、

 春の景色を楽しむ余裕さえ

 全くなかった。





 重篤な病気になった彼氏を

 初めて見舞うという

 緊張感が

 そうさせていたように思う。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆





 そこは

 病棟がいくつもある

 大きな病院なので

 エレベーターを探すのに

 少し迷ってしまった。




 ゆっくりと上がっていく

 エレベーターの

 階数表示のランプを

 虚ろな目で眺めながら、

 彼が目も当てられない

 状況だったらどうしようかと

 そんな情景が頭を巡ってしまう。




 彼の病室を確認すると

 そのドアの前でゆっくりと

 深呼吸して息を整える。





 ドアをそっと開ける……





 窓際のベットに

 横たわっている彼を

 見つけた。





 寝ているようだ……





 日の光を浴びた

 その寝顔が

 あまりに美し過ぎて

 彼の頬にそっと

 触れてみたくなる。





 彼の体温を

 感じてみたくなる。





 その頬に

 やさしいキスを

 してみたくなる……







 でもそうしなかった……





 しばらく

 彼の寝顔を眺めて

 何も声もかけずに

 その場を後にした。














 それが私が彼に会った

 最後だった。





 ◆◆◆◆◆◆◆





 少しだけ肩幅の広い

 彼に優しく

 抱きしめられるのが

 好きだった。





 彼がはにかみながら笑う

 笑顔が好きだった。





 彼が時折見せる

 真剣な顔が好きだった。





 そんなことを

 思い出して

 涙します。





 そんな彼が

 人を嫌いになることも

 人を好きになることも

 人がいる居心地の悪さも

 人がいることの安心感も

 世間知らずの私に

 教えてくれたように

 思うのです。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆





 今、私は

 あの日のような春うららの

 桜咲く並木道を

 少しだけ軽やかに

 歩いています。





 あなたのいない毎日を

 一生懸命生きていく……






 そうつぶやきながら……





 ◆◆◆◆◆◆◆





 【 親友 陽子へ 】




 もうブログは

 書かないつもりだったけど、

 君がぜひこの事を

 文章に起こして

 欲しいとのこと…





 一応、書いてみたよ。





 下手くそでごめん。





 本当はもっと深くて

 もっと美しい話なのにね。





 でも

 あなたが

 彼を想う気持ちは

 僕には伝わったよ。





 僕もいまだ

 独り身の自由人だけど、

 日々を真っすぐ

 生きていくよ。






 たまには自分が

 歩いてきた道を

 振り返りながら……

















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 平日の昼下がり……

 天気の良い

 一年を通じても数少ない

 暑くも寒くもない

 快適な一日。




 そんな日は

 ちょっと遠くへ足をのばし

 一人でドライブしたく

 なります。





 すれ違う対向車も少ない

 木々の生い茂る森の中の

 少し細い道へ

 車を走らせる。





 ※※※※※※※※※





 ドライブ途中に

 ふと立ち寄る

 山の中腹の

 小さな公園の駐車場にて



 車のシートを倒し

 窓を全開にして

 空を見上げる……



 初夏の新緑の木々の匂いを嗅ぎ

 やさしいそよ風を肌に

 感じながら

 ゆっくりと流れゆく雲を

 しばらくぼっーと眺めていると


 遠い記憶にしまってあった

 思い出が

 まるで白昼夢を

 見ているかのように

 よみがえってくる。





 それは

 僕の頭のどこかに

 少し色褪せた

 一枚の絵のような記憶。




 その中に

 描かれている「 あの人 」は

 カチカチに

 乾燥した絵の具のように

 固まってしまっていて

 全く動くことがない。





 その絵の中の

 「 あの人 」は

 微かに笑っている……





( 忘れようとしていたのに

 …… )





 ※※※※※※※※※





 そんな思い出は

 愛おしい貴重な体験として

 大切に取っておこう。




 だから

 思い出を

 封印するかのように

 その絵を

 黒で塗り潰してみたり、

 逆に

 きれいな虚飾の色を

 慌てて上塗りして

 ごまかしたりしないで、



 今あなたが

 その人を想う

 精一杯の温かい気持ちで

 あせらずゆっくりと

 時間をかけて

 その絵を溶かしていって

 今の自分の絵と

 一緒に混ぜ合わせてみよう。





 あの人との

 甘酸っぱい思い出の

 延長線上に

 今の私があるのだから……






 《 せつない思い出の中で

 押し潰されそうな

 あなたへ 》 





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