DTMってなんのこと?

 

この記事では、(DTM)という言葉の歴史について触れていきます。

 

音楽的な内容は皆無なので悪しからず。

 

 

 

DTMがデスクトップミュージックの略であるという事はみなさん、ご存知だと思います。

また、DTMとはパソコンを使って音楽を作る事だという事もご存知のはずです。

では、想像してみて欲しいのですが、パソコンを一切使わずに作られた音楽と言うのは、どんなでしょう

打ち込みが一切なく、生演奏をPCへのレコーディングもされていない、MTRだけでミックス、マスタリングがされた音楽の事です。

もはや2020年現在、絶滅危惧種じゃないでしょうか。

という事は、DTM=ほぼすべての音楽と考えることも出来ますね。

ここで、2つの疑問がわきます。

国内・海外のヒットチャートに載っているようなメジャーの楽曲。

そのほとんど全てがPCを使って製作されています。

ではそのようなメジャー楽曲は(DTM作品)とか、(DTMで作られた)と呼ばれるでしょうか?

また、レコーディングやマスタリングでprotoolsなどのDAWソフトを使うプロのエンジニアたちはDTMerと呼ばれているでしょうか?

中田ヤスタカさんはcubaseを、米津玄師さんはSONARを使っていると言ってましたが、彼らが何をしている人達かを説明する時、

(中田さんや米津さんはDTMerです)と言うでしょうか?

いいえ、言いませんよね。



何が言いたいかと言うと、現代の言葉のニュアンスにおいての(DTM)は、パソコンを使って音楽を作るという意味で使われるよりも、

(趣味の音楽、個人の音楽、アマチュアの音楽)というニュアンスのほうが強いです。


ではなぜ、(デスクトップ)という言葉が(アマチュアの、趣味の)というニュアンスになってしまったのでしょう。

その理由は、1980年代にさかのぼります。


当時、ごく一部のマニア達によって、パソコンを使ってシンセサイザーを自動演奏させるという趣味が起こりました。

その時代はパソコンとは親が子供に買い与えるというケースが多く、親世代がパソコンに触れる事は極めてまれでした。

なので、このような趣味は資金的に親の理解がある子供か、もしくは音楽とパソコンの両方に探求心のある大人だけに限られており、あまり普及はしていませんでした。


1987年、TM NETWORKがテレビ番組内のライブで、パソコンでシンセサイザーを自動演奏させながら(GET WILD)を演奏しました。

また翌1988年、ローランドが(ミュージくん)という、DTMをスタートするためのパッケージ商品を発売します。

じつはこの時のプロモーションでローランドが使った(デスクトップ・ミュージック)という言葉が、DTMという言葉の語源なのです。

愛好家達の多くはパソコンの自動演奏でドラムやシンセ、ベースなどのすべてのパートを製作していました。

作品を発表する手段は、シンセサイザーからカセットテープに録音して配布するとか、自動演奏させるためのMIDI情報をフロッピーディスクに書き込んで配布したり、

または専門誌に応募してMIDIのソースが掲載されるという方法がありました。

この時点では、まだデジタルレコーディングは普及していませんでした。

80年代~90年代の初頭に、DTMで作られた音楽と、ヒットチャートに乗るようなメジャーの楽曲との間には、クオリティーの面で大きな開きがありました。

そのため、DTMは商業ベースのメジャー音楽を目指すものではなく、あくまでもアンダーグラウンド的な音楽の嗜好に過ぎなかったのです。

これが現代の(DTM)=(趣味、アマチュア)というニュアンスの根底になっています。

むしろギターやボーカルなどの生演奏をパソコンに録音するという作り方は90年代の後半になって、それも一部の高級レコーディングスタジオだけに許された方法だけだったので、

プロ中のプロだけに許された制作方法でした。アマチュアやインディーズのバンドはアナログテープのMTRしか選択肢がありませんでした。

この、PCで自動演奏させるアマチュアのDTMと、PCに演奏を録音する一部のプロのデジタルレコーディングはむしろユーザー層が対極の位置でした。

使用するソフト自体が別々の物でしたが、やがて自動演奏ソフトにはレコーディング機能が追加され、レコーディングソフトには自動演奏が追加されて、それらはDAWと呼ばれ、両者の境目は無くなっていきました。

2010年頃までは、まだ若干、元はレコーディングソフトだったDAWと、元が自動演奏ソフトだったDAWとの間には使用感や設計思想の違いを感じましたが、現在はほぼ感じません。


今回は単に言葉の歴史について考察してみただけで、音楽的な本質に触れたわけではありませんでしたが、今後、徐々に記事にしていきたいと思います。


ゴリラ対タイヤキ