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オバマ米大統領には、ブッシュ前政権の始めたイラク戦争の後始末がこれほど厄介になるとは予想外でもあっただろう。限定的空爆はやむをえないにせよ、今後の道のりは険しく知恵も力もいる。

 オバマ大統領はもともと戦争をやめるために選ばれたのも同然だった。二〇〇三年、ブッシュ政権が始めたイラク戦争では約四千五百人の米軍兵士が死に、戦費は二百兆円との膨大な推計もある。

 昨年、シリア内戦への武力不介入を決めた時、大統領が「米国は世界の警察ではない」と述べたことに米国内でも賛否はあるが、過去の米国との決別でもあったはずだ。

 今度の空爆の許可については、二つの理由をあげている。

 一つは、イラク北部クルド人自治区の首都である古都アルビルへのイスラム過激派組織「イスラム国」の急迫である。車でわずか三十分の距離。アルビルは欧米の投資を集め、発展ぶりは第二のドバイといわれる。油田地帯が近く石油メジャーも進出している。

 二つ目は、アルビルとは逆のシリア国境に近い方で、宗教少数派ヤジド派信徒に対する迫害阻止と救援である。人道目的がある。

 イスラム国は、六月末、シリアからイラクにまたがる支配地域を領域にイスラム国家樹立を独自に宣言した。改宗を強制したり、人頭税を課したり、従わない者を大量処刑するなどの暴力が伝えられている。

 シリアで実戦経験を積み、逃亡イラク軍が放置した武器で日々強化されている。インターネットを使って戦場での“活躍”ぶりを見せて、外国 から若者を募り、寄付 も集めている。支配地の石油類を売っているともいう。

 そうならば渡ってしまった武器 は仕方ないにせよ、国際的な協調で資金を断つことはできる。

 肝心なのは、むろんイラクの立て直しである。

 空爆は対症療法にすぎず、イラクの国全体 が立ち直らねば住民は安心できない。周辺地域も世界も安心できない。

 まずは政情、経済 ともに安定を続けてきたクルド人自治区を守り切ること。次にイスラム国を封じ込めつつ、今のシーア派に偏った政権をシーア派、スンニ派、クルド人の三者 で支えるものに移行させることである。

 失礼ながら、オバマ大統領は“弱虫”と呼ばれたりもする。しかし、ここは弱虫の知恵と力の出しどころにちがいない。