ふと、ネットのトップページを開いて彼女の写真に目が留まった。
彼女がまたがん闘病ブログの更新を行ったのだと思ったが、そうではなかった。


「小林麻央さん死去」
 

一瞬、息が止まった。
私と彼女に接点なんてものは何もない。
一般人と芸能人。
正直、私は小林麻央さんのブログすらまともに読んでいやしない。
時々メディアで彼女の闘病の様子、
つらい中でも家族団結して看病に向き合う姿などを見かけているくらいだった。

ああ、ガンだなんて大変だな
元気になればいいな
まだお子さんも小さいし、きっと奇跡が起こって元気な姿を見せてくれるんじゃないか

他人事と思いながらもそう刹那に思ってすぐに自らの日常を優先するに留まっていた。
だから私が彼女について何かを語ろうだなんておこがましいにもほどがある。
これから書こうと思っているのは、自分勝手な呟きでしかなくて彼女をあまり知りもしない人間が彼女に対してふと何かつながりを持っていると思ってしまったいい加減な感想文でしかない。

作画資料として、私はいくつか画集や雑誌を手元に置いている。
国語辞典からはじまって、アニメーションの背景資料や、原画集。公式設定資料にいくつものマンガ。
そしてファッション誌。
現代のキャラを描くにあたって、特にビジネススーツの類の資料は毎日のようにページをめくっている。スーツはそこまで流行があるわけではないので、一度買えば数年間はそのまま愛用できるのだ。
手元にあるbizマガジンなんて8年前、2009年発行のもの。
そろそろ買い替えてもいい頃なのかもしれない。
そんな古い雑誌の中に、白いワンピース姿で満面の笑みを浮かべる彼女がいた。
ほんの3ページの、グラビアがメインのインタビュー記事。
彼女の言葉はたった1ページしか綴られていない。
当時は結婚前というのもあり、気になる男性像や10年後にはどんな女性になっているかなどの様々な内容が語られている。

仕事柄好印象を抱かれるキャラクターであることは大事だろう。
特にニュースキャスターをしていた当時なら尚更だ。
内容は可もなく不可もなく、清潔感のある素敵な女性が答えるような内容だった。
今回のことがなければ、キレイなお姉さんが上品なインタビューを受けているんだなくらいにしか感じられない。
そう、今までだったら・・・

最初に記事に目を通してもう8年が過ぎた。
今読み返すと、このインタビューは飾り気のない思ったままを彼女は答えてくれていたんじゃないだろうかと思えてしまう。
座右の銘は自らの名前の由来、「まっすぐ堂々」
結婚したら子供は二人以上が欲しい。
子供たちから仲がいいねって言われるような夫婦でありたい。
「不」がつく打ち消す言葉が嫌いであったこと。

改めて報道される前向きなブログの内容、病魔と闘い続けている様子が語られる今、このインタビュー記事のままであり続けた彼女の姿に胸が苦しくなる。
なぜ彼女の記事が自分の手元にあるのだろうか。
にわかでも、彼女の人生を垣間見てしまったような気分になってしまう。
こんなことになってほしくなかった。
回復してほしかった。
奇跡が起きてほしかった。

自分は彼女のファンであるわけでも、ブログの読者であるわけでもない。
たった1ページ、よく見かけていた雑誌の中で綴られたインタビューを読んでいただけだ。
それでも人の死は悲しい。

きっと自分はもう、この雑誌を安易に捨てることはできないだろう。

インタビュー記事の最後に、一番大切なことは何か尋ねられている。

彼女はきっぱりと
「家族です」

と答えていた。