ドイツの新年は、お休みの1月1日が過ぎたら2日からは何事も無かったかのように平常運転に戻ります。
今年の仕事始めは1月3日。
来週ヴィオラクラスのコンサートがあり、新曲のBowen作Fantasyも含め8曲弾くことになっていて、にわかにバタバタと忙しくなってきました。
1月は毎年なんとなく身体のエンジンがかかりにくいのですが、今年は少し精神面でも揺れが大きく、不安、億劫さ、真面目、無関心、このサイクルがわかりやすく速いスピードで襲ってきて、少しだけ「バーンアウト気味」なのを年末から感じていました。
でも仕事を休むという選択はせず、とりあえず音大に向かいます。
最近は20歳から22歳の若い学生さん達をあの手この手で鼓舞しながら「やる気を引き出す」「眠っている力を目覚めさせる」ことに躍起になることの多いレッスンスタイルでした。
でも今日は私自身がメンタルダウン.....
今日の最初の学生さんはまだ20歳で、1年だけ交換留学生としてロンドンから来ているイギリス人の女の子。
とても美しい音色と自然な音楽性でこちらもとても気持ちよく弾けていきます...
生まれ持った音楽的センスの良さを今後も活かして欲しいですし、ドイツではもう少し音量をあげることや、音出しをオンタイムでやれるように耳と心をもっと早めに準備させたら今よりもずっと良くなるわね、とお話しました。
ダウンしていた私も少し明るい気持ちに。
2人目の学生さんは既にオーケストラの期限付き契約団員、学業も両立させている逞しい女性です。
最近は、学業とオーケストラアカデミー生や契約・正式団員を両立させている学生は珍しくなく、少ない時間の合間に私とリハーサルするのでどちらかといえば....準備や練習に時間をかけていない子が増えています。
時々教授達もボヤいており
「レッスンで練習してるよね?」
「レッスンを『教授と一緒に練習すること』と勘違いしてるんだよね....」
な〜んて声も聞こえたりします。
私も正直なところ、「準備せずに来てリハーサルで何回も繰り返し弾きながら実は練習の代わりにしている」←このスタイルは好きではありません。
こちらも適度に助言を与えて演奏を形づくりたいのに、それが出来ないジレンマ....。
でも今日はこちらも気だるいので、敢えてその女子学生の思うがままに何回も通して弾いてみました。
そこで突然、何年か前の「公開採用試験」での1場面をふっと思い出したんです...。
伴奏講師の採用試験の時に来ていたある女性Sさん。
採用試験では、公開レッスンとして学生と一緒に弾きながら普段のレッスンを審査員の前で行うのが通常スタイルです。
そこでは応募者はできるだけ自分の経験にものを言わせ、学生の演奏を良くしたり、室内楽的なアドバイスをしたり、と「なるべく審査員の印象に残るように」演奏のレベル以外にも「学生とどんなコミュニケーションを取れるのか?」言葉で表現することが求められているんです。
ところが一人だけSさんはほとんど話すことなく学生とずっと弾き続けました....
私は不安になり「Sさん、公開レッスンの意味をわかってるのかしら?」とヒヤヒヤしながら他の審査員の顔色を伺っていました。
ところが蓋を開けてみたら、ほとんど話さなかったSさんに意外にも票が沢山集まっていたのです。
審査員の何人かが、
「彼女は敢えて何も話さず、ひたすら弾き続けたね。あれは彼女なりの伴奏職デモンストレーションだったんではないの?」と高評価したのです。
今日ダウン気味だった私が、敢えて考えずに何回も繰り返して弾いていたら、いつの間にか相手のアラを探そうとせず、「曲と音」に集中していました.....
所々、自身の演奏の不味さもくっきりと浮かび上がる....
こうして「まずは繰り返し通し弾きする」時に、改めて曲を聴き直したり、気づきもあって、「なにか学生に言ってあげなくてはいけない」と、知らず知らず勝手に自分に枷をつけていたこともわかりました。
歳も重ね、同じ仕事を何十年も続けているとどうしても避けられない偏りが出たり、視野を勝手に狭くしがちですが、時に言葉を交わさずに弾き続けてみるのも大事ですね。
気持ちも安定し、楽になれました!
