風刺週刊紙シャルリエブドが襲撃されたテロ事件から7日で1カ月。スーパー立てこもりも含めた一連の事件では計17人が死亡したが、移民系住民が集住する「郊外地域」が抱える問題がクローズアップされている。社会と「分断」される一部の郊外は貧困が深刻になり、犯罪やテロ予備軍を生む土壌になっているとの指摘もあり、あらためて重い課題を仏社会に突きつけている。

 パリ北部に位置するモスク(イスラム教礼拝所)近く。周囲には低所得者向けの住宅が目立ち、移民系住民が多く暮らす地区だ。エンジニアのモハメッドさん(25)は「私は特技を生かした職に就いているが、仲間の多くは仕事を探すのも難しい。名前だけで就職がはじかれてしまう。明らかな差別を感じる」とイスラム教徒を取り巻く厳しい現状を訴えた。民間研究機関によると、低所得者層が多く居住する全国七百カ所以上の郊外地域の失業率は24%に達する。この地域を除いた分の失業率(9・9%)の二倍以上だ。

 「フランスには地域的、社会的、民族的なアパルトヘイト(人種隔離)がある」。先月末、バルス首相は会見で、郊外の現状を刺激的な言葉で表現した。二〇〇五年には、パリ郊外で警官に追われた移民系の少年二人が変電所で感電死したことをきっかけに、若者の大暴動に発展したこともある。

 仏国内のイスラム教徒の現状に詳しい、エクサンプロバンス政治学院のフランク・フレゴジ研究員は「過激思想に傾倒する若者は、社会から外れ、家族に亀裂がある若者らだ。貧困状態で、移民が集住する郊外の出身者が多い」と指摘。「これまで問題を解決してこなかった政治や教育の責任が大きい。移民が抱える社会的、経済的な不満の『根』を理解することが大切。社会との断絶を決定的にしてはならない」と訴える。

<フランス連続テロ> パリの風刺週刊紙シャルリエブド本社に1月7日、サイド・クアシ、シェリフ・クアシの容疑者兄弟が押し入って銃撃。風刺画家ら10人と警官2人の計12人が死亡した。8日にアメディ・クリバリ容疑者がパリ南郊で女性警官を射殺。9日にはクアシ容疑者兄弟がパリ北東の印刷会社に、クリバリ容疑者がパリ東部の食料品店に立てこもった。特殊部隊が両現場に突入し、容疑者3人を射殺。食料品店の人質4人が死亡し、一連の事件の犠牲者は17人に上った。 (共同)