政権を担う政党が、報道ををピンポイントで批判?!

 自民党は特定秘密保護法に批判的な記事に反論する文書をつくり所属の国会議員に配布した。東京新聞を含め「一部の新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れている」と指摘しているが、根拠に疑問点が多く、一方的な批判になっている。 

 文書は「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」との題名で、A4判五枚の本文と八枚の別紙からなる。本文は、法律の問題点を指摘する報道を批判し「急きょ、こうした新聞の誤った報道に惑わされないために反論を作成した」と説明している。

 別紙は本紙と朝日新聞、毎日新聞の記事の二十七カ所を抜粋し、二十三本にまとめて反論を掲載。すべて記事の法解釈について「事実に反する」などと否定しているが、根拠は政府側の国会答弁など従来の主張を繰り返すにとどまっている。

 法成立後、内閣支持率が急落し、政府・自民党は説明資料の作成や説明会の開催などを検討している。今回の文書は党政務調査会の事務局が作成。議員が地元で有権者に説明する際の参考資料とみられる。

 自民党の反論文書が取り上げた東京新聞の記事八本、延べ十カ所のうち六カ所は特定秘密保護法で「テロ」の定義が拡大解釈される恐れがあると指摘した内容だ。

 反論文書は、いずれの記事も「事実に反する」と主張。根拠として「テロ」の定義を定めた一二条を引用し「拡大解釈の余地はない」としている。

 しかし、条文は「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要する」だけでテロと解釈されかねない書き方になっていると日弁連が指摘し、本紙も繰り返し報道してきた。実際、国会周辺のデモをテロと結び付けた自民党の石破茂幹事長のブログでの発言もあり、自民党の反論で懸念は払拭(ふっしょく)されない。

 文書は「法案は憲法が保障する国民の権利を制限しかねず、民主主義を揺るがす重大な問題点をはらんでいる」との記事にも反論。「本法は、国民の知る権利に資する報道または取材の自由に十分配慮しなければならない旨を定めている」と主張している。だが、本紙が「配慮」は努力規定にすぎず、知る権利が担保されたわけではないと指摘してきた点には答えていない。

 毎日新聞の「国会や司法のチェックも及ばない」という記事には「国会の求めに応じ、特定秘密を提供しなければならず、国会で必要な議論ができる」と反論。確かに、法律上は国会に特定秘密を提供できることになっているが、政府が「安全保障に著しい支障がある」と判断すれば出さなくてもよいとする規定もあり、すべての秘密が提供されるわけではない。