経済産業省は六日、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で、エネルギー基本計画の素案を示した。原発を「重要なベース電源」と明記。民主党政権が打ち出した「二〇三〇年代に原発をゼロとする」目標は撤回し、活用していく方針を鮮明にした。東京電力福島第一原発の汚染水漏れなどで原発に対する不信感が増す中、原発を維持する方針に国民の批判が高まりそうだ。計画は今月中旬に取りまとめ、来年一月の閣議決定を目指す。

 素案では、原発を重要電源とする理由を「安定供給、コスト低減、温暖化対策の観点から」とした。しかし、原発事故が起きた場合の費用や放射性廃棄物の最終処分の費用など原発のコストは提示しておらず、説得力に欠ける面がある。

 「安全性が確認できた原発は再稼働を進める」と明記した。民主党は「原発の新設・増設は行わない」としていたが、素案では新設・増設については言及せず、建設を容認する姿勢ものぞかせた。自民党は昨年の衆院選の公約で、原発に依存しない社会を目指すとしており、新増設を認めれば公約と矛盾することになる。

 原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定について、これまでの自治体による応募方式から、政府が候補地を示す方式に転換することを盛り込んだ。しかし、核のごみの危険性に対する国民の不安は根強く、国が前面に出たとしても、処分場決定は難航が必至だ。

 総発電量に占める原発の割合など、将来の望ましい電源構成比率は明示しなかった。どれだけの原発が再稼働するのか、原子力規制委員会の安全審査の結果次第で、現状では見通せないため。茂木敏充(もてぎとしみつ)経産相は「三年以内に比率の目標を設定する」と説明している。

東京新聞