機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案について、自民、公明の与党は日本維新の会、みんなの党と最終的な修正案をまとめた。だが、維新、みんなが大幅に譲歩したため、政府が都合よく秘密を指定し、市民や記者も厳罰の対象となるといった政府案の問題点は消えず、新たな懸念も浮上した。(生島章弘、清水俊介) 

 特定秘密の指定期間について、政府案は五年ごとに更新可能で、三十年を超える場合は内閣の承認が必要としている。協議では、三十年を上限とするか、例外を設けるかが当初議論されていた。しかし、結論は「六十年で原則指定解除」に後退し例外が七項目も設けられた。例外は行政の裁量で拡大が可能。政府案より長期間非公開にされたあげく、永久に非公開とすることに根拠を与える恐れが生じた。

 秘密を指定する行政機関の長も限定しようとしたが、変更なし。代わりに「五年間、指定がない府省庁の権限をなくす」との規定を入れる。だが、権限の切れる前に指定しようとする行政機関があれば、逆に不必要な秘密を増やしかねない。

 特定秘密が広すぎるとの問題では、政府案の四分野を「防衛」などに限るように維新が求めた。だが、与党は応じず、「安全保障」の定義の明確化にとどまった。拡大解釈を招くと批判されている三十六カ所の「その他」の文言は三カ所が削除されるだけ。削除される部分には、幅広く解釈できる別の文言を挿入する。

 情報漏えいを禁じる国家公務員法に比べ、罰則を十倍の最高懲役十年に厳罰化することや、漏えいなどをそそのかした市民や記者も罰則の対象となることも政府案と変わっていない。

 特定秘密の指定が妥当かどうかチェックする第三者機関の設置については付則で検討するとされただけで、姿すら見えない。

東京新聞

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