◇和牛偽装の加工肉、メニューに表示せず

 近鉄系のホテルや旅館がメニュー表示と異なる食材を提供していた問題で、奈良市の旅館「奈良万葉若草の宿三笠」(ミシュランガイド関西掲載)が子供用献立で「和牛ステーキ」として出していた加工肉が、アレルギー物質の乳や大豆、小麦を含んでいたことが2日分かった。アレルギー物質が含まれていることは、メニューに表示していなかった。

 三笠を経営する近鉄子会社「近鉄旅館システムズ」によると、10月から「バンビ御膳」の名称で提供した献立で「和牛ステーキ」と表示した肉は、実際には20グラムの肉2枚を使用して1枚のように加工した「成型肉」だった。業者への発注とメニュー作成を一任されていた料理長は、社内調査に「和牛と思い込んで使っていた」と釈明したという。しかし、納入時の段ボール箱に貼られたラベルには「牛肉加工肉(成型肉)」と記され、「豪州産」「原材料の一部に乳、大豆、小麦を含む」と明示されていた。これらの物質が含まれない生肉のステーキと思ってアレルギー体質の人が食べた場合、発作などを起こした恐れもあった。同社は、アレルギー被害についての調査はしていない。

 また、会席料理の一品として出していた「和牛朴葉(ほおば)焼き」も、豪州産の成型肉で、アレルギー物質を含んでいた。

 成型肉は生肉に脂身などを加えてつなぎ合わせた加工肉。三笠の仕入れ値は1キロあたり約3200円で、使う予定だった和牛より約5000円安い。

 食品衛生法は容器包装された加工食品についてアレルギー物質の表示義務を課しているが、飲食店のメニューなどでの表示義務はない。ただ、アレルギー事故などを受け、外食産業でも自主的に表示する動きが出ている。

 三笠の修学旅行向けパンフレットの食事メニューには、今回の2品は含まれていない。